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3話 現れた人々 その1
しおりを挟む「お父様とお母様がどこに向かったのか分かる?」
「お嬢様……ええと、申し訳ございません」
「?」
使用人の一人にお父様達の居場所を聞いてみたけれど、いきなり謝罪されてしまった。謝罪の仕方から見て居場所を知らないわけではないようね。どういうことかしら?
「お父様達の居場所は知っているの?」
「どちらに向かったのかは存じております。ですが、旦那様と奥様には口止めをされていまして……」
「えっ?」
どういうことだろう……お父様とお母様がわざわざ使用人に向かった先を口止めするなんて。ただごとではない雰囲気を醸し出していた。普通ではあり得ないことだ。
「どうしても教えられないの?」
「う、そ、それは……」
「まあ、無理には聞かないわ。あなたの立場もあるだろうし」
「も、申し訳ございません! お嬢様……!」
使用人のメイドは涙目になりながら頭を下げていた。まあ、お父様達がメイド達が仕方なく話してしまっただけで、罰を与えるとは思えないけどね。ただ、今回ばかりは無理に聞くのはマズい気がしていた。
「お仕事頑張ってね」
「はい、ありがとうございます! お嬢様!」
私は部屋の掃除をしてくれているメイドに労いの言葉を掛けて、その部屋を後にした。本当にお父様やお母様は何処へ行ったのかしら……もしかして、この前の婚約破棄の件でダルク様の屋敷に行っているとか?
可能性として一番考えられるのはそれかしら……う~ん。タイミング的にはハウーム侯爵家に向かって直談判しているのが想像できるけれど。でもそれって予想できることよね? 婚約破棄で慰謝料などの話し合いで相手方のところへ向かうというのはめずらしくないだろうし。
「考えても分からないわね……お父様とお母様が戻るのを待つしかないか」
私は自室に戻るために玄関ホールを横切っていた。ちょうどその時、馬車がリンシャンテ家の前に停まった音がした。あれ? お父様達が帰って来たのかしら?
私はなんとなく窓から玄関先を見てみた。馬車の形が違う……見たことがないデザインだけれど、あの紋様は確かグラボイド王国の……えっ? どういうこと?
「グラボイド王国の方がリンシャンテ家に来たというの……?」
見知らぬ人々が出て来た。少人数ではあるけれど……お父様とお母様の姿はないようだ。
「あ、あの方は……」
見知らぬ人々の間にいるお方で一人、知っている人物がいた。あの人は確か……グラボイド王国の王子様だったような……?
私の目に間違いがなければそうなるけれど、なんでこの屋敷に来ているのだろう。私は軽く恐怖を覚えていた。
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*作者ご都合主義の世界観のフィクションです
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