婚約破棄されたけど、どうやら私は隣国の最強国家の王家の血筋だったようです

マルローネ

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2話 リンシャンテ伯爵家

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 私はリンシャンテ伯爵家に戻っていた。そこでお父様と話をしている。


「お父様……私は悔しくて仕方がありません……そして、申し訳ございませんでした」

「自分を責めるでない、セルフィ。お前は本当によくやっていたと思うよ」

「……ありがとうございます……」


 お父様は私の失態を責めることはせずに、逆に慰めてくれていた。リンシャンテ伯爵家として相応しい働きをしないといけなかったのに……情けないものだわ。


「ダルク様はなんという無慈悲なことを……信じられないな」

「はい、私も未だに信じられません」


 ダルク様の行為は本当に驚くべきことだった。お父様も腕を組んで唸っているようだ。侯爵令息の行いとしてあり得ないと思っているのだと思う。

 本当はあの方に敬称なんて付けたくはないのだけれど、まあ、そこは仕方ない。


「セルフィよ、とりあえずは自分の部屋に戻っていると良い。出掛けたくなれば、付き人を用意させよう」

「ありがとうございます、お父様」

「うむ、しっかりと休むようにな。私は少し用事を済ませる必要があるから、お前に付きっ切りは難しくなってしまうが……」


 どこかへ出かけるのだろうか? まあ、お父様は伯爵家の当主だし忙しい身ではあるのだけれど。今はとても外には出たくないけれど、いつでも出られるように手配してくれるのは嬉しい。最近は貴族街も物騒になっていると言うし、貴族令嬢が単独で出掛けることはめずらしいしね。

「ふむ……それにしても、ダルク様は大変なことをしてしまったな。よりにもよって、セルフィに婚約破棄をするとは……いやはや、怖い怖い」

「お父様……?」


 お父様の言っている言葉の意味が少し分かりづらかった。どういうことだろう。


「セルフィはこの国と隣国との関係性を知っているだろう?」

「は、はい……それはもちろん知っています」


 いきなりの話題の転換、私は少し呆けてしまっていた。お父様に質問されたので答えるけれど。


「ええと、隣国のグラボイド王国はハインツ王国の宗主国になっていますよね? 外交面などではハインツ王国は不利な立場と伺っていますが……」

「うむ。まあ、そういうことだな。このハインツ王国は従属国の1つということになるからな」


 隣国のグラボイド王国は複数の従属国を保有している。まさに最強国家と呼ばれる所以だった。


「大陸最強の国家とも呼ばれていますよね?」

「そうだな、まさしくグラボイドは最強の国家だ。いやはや……本当にダルク様は大変なことをしてしまったな」

「……?」


 やっぱりお父様の言葉は理解できなかった。今、グラボイド王国は関係ないと思うけれど……。
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