婚約破棄されたけど、どうやら私は隣国の最強国家の王家の血筋だったようです

マルローネ

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1話 無慈悲な婚約破棄をされた

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「セルフィ、お前との婚約を破棄させて貰おう」

「どういうことでしょうか、ダルク様……婚約破棄なんて」


 私の婚約者であるダルク・ハウーム侯爵令息は突然、私に婚約破棄を言い渡したのだ。いきなりのことに私は理解が追い付かなかった。

「私は宗主国であるグラボイド王国の貴族令嬢の方と婚約することにしたのだ。そうした方が我が国にとっても恩恵が大きいだろうからな」

「そ、そんな……」

 グラボイド王国は、我が国であるハインツ王国を従属国にしている国だ。他にも幾つかの国を従属させており、大陸最強の国家とも言われている。従属国としての立場を少しでも良くしたいと考えているのか……確かにそうだとしたら、ダルク様の言っていることは正しいと思うけれど、それにしてもいきなり過ぎる。

「ダルク様のお気持ちは分かりますが、いきなり過ぎます。私は今までダルク様に仕えて来たのですが……」

「セルフィ、お前は所詮は伯爵令嬢でしかない。侯爵の長男である私に逆らえるとでも思っているのか? 婚約破棄と言ったら婚約破棄なのだ。これは決定だ」

「だ、ダルク様……!」

「うるさい! 決定だと言ったら決定だ! その口を閉じなければ、強制的に閉じて貰うぞ!!」

 信じられないような怒号が飛び込んで来た。この人は本当にハインツ王国の未来を考えて婚約するのだろうか? 今の彼の態度からはとても信じられないけれど……。





「正式な婚約破棄の手続きは今度ということになるが、今日からお前はこの屋敷から出て行って貰う」

「……」

 悔しくて涙が出て来た……これは決してダルク様と別れるのを悲しんだものではない。今までこんな人のことを信じていた自分に対する怒りの涙だ。いくら国家の未来のためとはいえ、こんなことが許されるわけがないのに……。

「ああ、ちなみに私はアリーザという侯爵令嬢と婚約することになるが……その動機は単なる浮気だからな。ふははははは」

「なっ……!? 浮気……?」

 私はまさかのカミングアウトに言葉が出て来なかった。信じられない……。

「まあ、それが分かったとしても何も変わりあるまい! 伯爵令嬢であるお前には何も出来ないんだからな、ふははははは!」

 ダルク様には最初からハインツ王国を良くしようなんて気はこれっぽっちもなかったわけだ。もしもそういう想いをもっているならば、強引な婚約破棄なんてするわけないもの。婚約破棄をしなければならない状況になったとしても、もっと言い方を考えてくれるだろう。

「失礼致します、ダルク様。新しい恋の成就を祈っておりますわ」

「ああ……ありがとう、セルフィ。わざわざ済まないな。ふははははっ!」

「……!」

 私はすぐにダルク様の部屋から出た。一刻も早く彼の元から去りたかったから……。この場所には二度と戻って来たいとは思わない。
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