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4話

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「クレス第二王子殿下……信じられない」

「なんだか、クレス様に敬称を付けているアルエ様が可愛らしいです」

「どういう意味よ? ディア」

「いえ、そのままの意味ですが。なんというか……昔はクレスと普通にお呼びしていましたよね?」

「ま、まあ、そうだけれど……」


 たかが、伯爵令嬢である私が王子様……しかも、ディミラント王国の第2王位継承権を持っている人を呼び捨てにしていたなんて。今にして考えるとすごい不敬罪ね。確かにクレスとは付き合いが長いし、ルイズよりも懐いていたかもしれない。私にとっては幼馴染であり、お兄ちゃんみたいな存在だったかな。


「クレス……王子殿下……」

「似合わないですよ、アルエ様。ここはいつものように呼び捨てで行きましょう!」

「ディア……なんでそんなに元気なのよ……」


「私はアルエ様のことを考えていますから! 少しでもお元気になっていただける、きっかけが欲しいのです」

「ディア……ありがとう」


 ディアはなんだかんだ言って、本当に私のことを心配してくれている。この2週間、私は屋敷街に出掛けることをしなかった。お父様たちも何も言わなかったけれど、ディアも含めて心配だったでしょうね。そのまま引き籠ったりしないかどうか。


「ええと、ディアが言いたいのは、クレスに会えということ?」

「はい、それは当然でしょう。なにせ王子殿下から申し出が来ているのですから! 断ったりすれば、フォーミラ家にとっても失礼に当たります」

「う~ん、そうよね……」


 クレスが幼馴染かどうかを抜きにしても、王子殿下からの申し出を断るのは失礼になってしまう。他の方々はともかくとして、クレスには会っておいた方が良さそうね。


「アルエ様……お会いになられますよね? ね?」

「ええ、そうね。相手はクレスだし……他の方々に会うよりはやりやすいかもしれないわ」

「さすがアルエ様。そう言っていただけると思っていました! それでは早速、旦那様に報告してきますね!」

「ええ、お願いね。ディア」

「はい!」


 ディアはとても嬉しそうにそう言うと、私の部屋から出て行った。お父様に報告に行ったのだ。

「クレス第二王子殿下、か……」


 ルイズとは別の幼馴染の一人であるクレス。私よりも3歳上のお兄ちゃん的存在だったわけで。本当に優しかったことを覚えている。ルイズに裏切られてから2週間……私は違う幼馴染と会おうとしているのね。ルイズと同じように考えるのはクレスに失礼だと思うけれど、私はどこか不安感もあった。

 幼馴染……これも運命かもしれないわね。なんだか不思議な人生だわ。でも、クレスへの呼び方はどうしようかしら? やっぱり、王子殿下と敬称を付けないといけないわよね。それとも、彼はあまり気にしないのかしら?
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