16 / 19
16話 トーマスの回答
しおりを挟む
「トーマス様、あなた様がハッキリと言ってください。私との婚約を解消していただけますね?」
「り、リリム……! 本当に駄目なのか……? 俺に対する愛情はもうないのか?」
「ないです。以前にも申し上げた通りでございますが……トーマス様は自分の心は私だけの物とおっしゃっていましたが、そんなセリフなどもう聞きたくありません。あなた様はまた、浮気をするでしょう。トーマス様の言葉はそれだけ信用出来ない、ということになります。いい加減に分かってください」
「そ、そんな……リリム……!」
トーマス様はソファの上でガックリと肩を落としていた。これでハッキリと伝わったはずだ。後は……トーマス様の言葉を待つだけ。その時間はそれ程長くはなかった。
「……分かりました。婚約解消を了承致します……」
「と、トーマス……!」
トーマス様の言葉にカエサル様は驚いていた。彼の肩を掴み、強く揺すっている。トーマス様は疲れ切った表情になっていた。
「もう良いです……父上。リリム嬢に婚約関係を続ける意志は皆無のようでございますので……私は彼女の意志を尊重したいと考えています」
「そ、そうか……」
カエサル様は残念そうにしていたけれど、トーマス様の表情と言葉を聞いて、それ以上は何も言わなかった。ファング王子殿下とお父様も聞いている……もう、後から覆すことは出来ないだろう。私はようやく、トーマス様から解放されることになるのだ。
「リリム……1ついいかな?」
「なんでしょうか、トーマス様?」
「舞踏会などで会った際には……挨拶くらいはしても、構わないかな?」
「はい、そうですね。ベイル公爵家とは無関係の立場になりますが、公爵令息であるあなた様を無視することは、失礼に当たると存じますので。それは構いません」
「わかった。それを聞けて安心したよ」
「……」
トーマス様は何か、憑き物が取れたような顔つきに変わっていた。その変化には私だけでなく、お父様やファング王子殿下も無言ながら驚いているようだった。彼の中で何らかの心境の変な化があったのかもしれないわね。盛大な婚約解消話が成立したわけだから、仕方ないのかもしれないけれど……。
その変化で少しでもトーマス様がまともになってくれるように、私は願っている。
「り、リリム……! 本当に駄目なのか……? 俺に対する愛情はもうないのか?」
「ないです。以前にも申し上げた通りでございますが……トーマス様は自分の心は私だけの物とおっしゃっていましたが、そんなセリフなどもう聞きたくありません。あなた様はまた、浮気をするでしょう。トーマス様の言葉はそれだけ信用出来ない、ということになります。いい加減に分かってください」
「そ、そんな……リリム……!」
トーマス様はソファの上でガックリと肩を落としていた。これでハッキリと伝わったはずだ。後は……トーマス様の言葉を待つだけ。その時間はそれ程長くはなかった。
「……分かりました。婚約解消を了承致します……」
「と、トーマス……!」
トーマス様の言葉にカエサル様は驚いていた。彼の肩を掴み、強く揺すっている。トーマス様は疲れ切った表情になっていた。
「もう良いです……父上。リリム嬢に婚約関係を続ける意志は皆無のようでございますので……私は彼女の意志を尊重したいと考えています」
「そ、そうか……」
カエサル様は残念そうにしていたけれど、トーマス様の表情と言葉を聞いて、それ以上は何も言わなかった。ファング王子殿下とお父様も聞いている……もう、後から覆すことは出来ないだろう。私はようやく、トーマス様から解放されることになるのだ。
「リリム……1ついいかな?」
「なんでしょうか、トーマス様?」
「舞踏会などで会った際には……挨拶くらいはしても、構わないかな?」
「はい、そうですね。ベイル公爵家とは無関係の立場になりますが、公爵令息であるあなた様を無視することは、失礼に当たると存じますので。それは構いません」
「わかった。それを聞けて安心したよ」
「……」
トーマス様は何か、憑き物が取れたような顔つきに変わっていた。その変化には私だけでなく、お父様やファング王子殿下も無言ながら驚いているようだった。彼の中で何らかの心境の変な化があったのかもしれないわね。盛大な婚約解消話が成立したわけだから、仕方ないのかもしれないけれど……。
その変化で少しでもトーマス様がまともになってくれるように、私は願っている。
1
お気に入りに追加
1,357
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は愛に生きたい
拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。
一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
入り婿予定の婚約者はハーレムを作りたいらしい
音爽(ネソウ)
恋愛
「お前の家は公爵だ、金なんて腐るほどあるだろ使ってやるよ。将来は家を継いでやるんだ文句は言わせない!」
「何を言ってるの……呆れたわ」
夢を見るのは勝手だがそんなこと許されるわけがないと席をたった。
背を向けて去る私に向かって「絶対叶えてやる!愛人100人作ってやるからな!」そう宣った。
愚かなルーファの行為はエスカレートしていき、ある事件を起こす。
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
愛しておりますわ、“婚約者”様[完]
ラララキヲ
恋愛
「リゼオン様、愛しておりますわ」
それはマリーナの口癖だった。
伯爵令嬢マリーナは婚約者である侯爵令息のリゼオンにいつも愛の言葉を伝える。
しかしリゼオンは伯爵家へと婿入りする事に最初から不満だった。だからマリーナなんかを愛していない。
リゼオンは学園で出会ったカレナ男爵令嬢と恋仲になり、自分に心酔しているマリーナを婚約破棄で脅してカレナを第2夫人として認めさせようと考えつく。
しかしその企みは婚約破棄をあっさりと受け入れたマリーナによって失敗に終わった。
焦ったリゼオンはマリーナに「俺を愛していると言っていただろう!?」と詰め寄るが……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる