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1話 トーマス様との仲を解消したい
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「トーマス様……私はもう限界でございます……」
「なんだ? どうしたんだ、リリム。せっかくの美人が台無しな表情をして……」
私の名前はリリム・テンパート。16歳の伯爵令嬢だ。私は婚約者であるトーマス・ベイル公爵令息の部屋に来ていた。
「私と別れてください……! もう、限界なのです……!」
「お、おい、リリム……! 急に何を言い出すんだ。怒っている君も可愛いが、やはりリリムは笑っているに限ると思うぞ?」
「トーマス様!」
このやり取りは既に何度目か分からない……トーマス様は18歳の次期公爵筆頭のお方だ。そんなお方と婚約出来たことは、テンパート伯爵家にとって非常に喜ばしいことだろう。私も彼と最初に婚約できた時は嬉しかったのだし……。
しかし……後悔はその後から訪れた。表面的には決して分からないトーマス様の浮気癖だ。彼は日常的に娼婦を屋敷に呼び寄せている。それだけでなく、屋敷で働くメイド達にも手を出しているようだ。さらには、他の貴族令嬢との関係も噂されているくらいで……。
要約すると、トーマス様の浮気が酷過ぎるのだ。
私も心を広く持ち、その度に時間を置いて注意してきた。頭ごなしに叱っては逆上されかねないので、ある程度優しさを込めながら。その時はトーマス様も納得してくれ、もう浮気はしないと言ってくれていたけれど……。
少し時間が経過するとまた浮気を繰り返す始末だった。だからこそ、私は限界を迎えてしまったのだ。本当にこんなやり取りは何度目かしら? 両手の指ではとても足りない程の回数であることは間違いない。
「わかってるよ、本当に済まなかった。浮気をしていたのは謝るよ。俺も日々のストレスで疲れていただけなんだ」
日々のストレス……トーマス様は公爵令息という立場のせいか、豪遊している印象の方が強い。少なくとも、そこまでストレスが溜まっているようには見えないけれど……。
またいつもの流れになってきた……でも、今回の私はこんなことで引き下がるわけにはいかない。今日こそは婚約解消をしてもらう。貴族の間でも浮気をされている女、と揶揄されているし……そういった噂もうんざりだったのだ。
「もう無理です、トーマス様。お願いですから婚約解消をしてください。出来ないなら、婚約破棄という形で強引にでもさせて頂きます!!」
「お、おいおい……そんなにマジになるなよ、リリム。俺とリリムの関係じゃないか……な?」
「私とトーマス様の関係……?」
「そうだよ、永遠に離れない関係だろう。何せ君は俺の妻になるんだから。他の女性と遊んでいたとしても、心は君の物だよ、約束しよう」
「……」
この言葉も何度聞いたか分からない……例えトーマス様の心が私の物だとして、今の彼の心を得たところで私にメリットがあるのだろうか? もう駄目だ、この人にはまともな話しが通じない……それ以前に同じ目線で話している気がしない。
私は気付いた気時にはトーマス様の部屋から走り去っていた。トーマス様の制止する声が聞こえたけれど、構うものか。私はそのまま自分の屋敷に帰ることにした。絶対、この屋敷には戻らないと誓いながら……。
「なんだ? どうしたんだ、リリム。せっかくの美人が台無しな表情をして……」
私の名前はリリム・テンパート。16歳の伯爵令嬢だ。私は婚約者であるトーマス・ベイル公爵令息の部屋に来ていた。
「私と別れてください……! もう、限界なのです……!」
「お、おい、リリム……! 急に何を言い出すんだ。怒っている君も可愛いが、やはりリリムは笑っているに限ると思うぞ?」
「トーマス様!」
このやり取りは既に何度目か分からない……トーマス様は18歳の次期公爵筆頭のお方だ。そんなお方と婚約出来たことは、テンパート伯爵家にとって非常に喜ばしいことだろう。私も彼と最初に婚約できた時は嬉しかったのだし……。
しかし……後悔はその後から訪れた。表面的には決して分からないトーマス様の浮気癖だ。彼は日常的に娼婦を屋敷に呼び寄せている。それだけでなく、屋敷で働くメイド達にも手を出しているようだ。さらには、他の貴族令嬢との関係も噂されているくらいで……。
要約すると、トーマス様の浮気が酷過ぎるのだ。
私も心を広く持ち、その度に時間を置いて注意してきた。頭ごなしに叱っては逆上されかねないので、ある程度優しさを込めながら。その時はトーマス様も納得してくれ、もう浮気はしないと言ってくれていたけれど……。
少し時間が経過するとまた浮気を繰り返す始末だった。だからこそ、私は限界を迎えてしまったのだ。本当にこんなやり取りは何度目かしら? 両手の指ではとても足りない程の回数であることは間違いない。
「わかってるよ、本当に済まなかった。浮気をしていたのは謝るよ。俺も日々のストレスで疲れていただけなんだ」
日々のストレス……トーマス様は公爵令息という立場のせいか、豪遊している印象の方が強い。少なくとも、そこまでストレスが溜まっているようには見えないけれど……。
またいつもの流れになってきた……でも、今回の私はこんなことで引き下がるわけにはいかない。今日こそは婚約解消をしてもらう。貴族の間でも浮気をされている女、と揶揄されているし……そういった噂もうんざりだったのだ。
「もう無理です、トーマス様。お願いですから婚約解消をしてください。出来ないなら、婚約破棄という形で強引にでもさせて頂きます!!」
「お、おいおい……そんなにマジになるなよ、リリム。俺とリリムの関係じゃないか……な?」
「私とトーマス様の関係……?」
「そうだよ、永遠に離れない関係だろう。何せ君は俺の妻になるんだから。他の女性と遊んでいたとしても、心は君の物だよ、約束しよう」
「……」
この言葉も何度聞いたか分からない……例えトーマス様の心が私の物だとして、今の彼の心を得たところで私にメリットがあるのだろうか? もう駄目だ、この人にはまともな話しが通じない……それ以前に同じ目線で話している気がしない。
私は気付いた気時にはトーマス様の部屋から走り去っていた。トーマス様の制止する声が聞こえたけれど、構うものか。私はそのまま自分の屋敷に帰ることにした。絶対、この屋敷には戻らないと誓いながら……。
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