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25話 セシルとマグレフ公爵
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「ち、違う……! 何かの間違いでございます……!」
「お前の話に興味はない、リードフ。あとは裁判の席でしっかりと弁明するんだな。おそらくは無理だろうが……」
パーティーを開催した主催者であるにも関わらず、リードフ様はセシル様の配下の人達に連れて行かれてしまった。この光景を近くで見ていると、とてもシュールで笑えるものではない……特に、連れて行かれることはなかったけれど、スタイン様の表情が凄かった。絶望感に溢れる表情……最早、どうにでもなれという感じね。
「ネフィラ、大丈夫か?」
「あ……はい、セシル様。私は大丈夫です……」
少し状況について行けなかったのはあるけれど、私は冷静さを取り戻した。セシル様はそんな私を心配してくれている。申し訳がなかった。
「やれやれ……セシル王太子殿下。随分と強引な行動に出たものですな」
「マグレフ公爵……我が国は謀反を起こす可能性のある貴族には、容赦のない対応をしておりますので」
「ふふ、なるほど……なかなかに厳しいお方のようだ……」
セシル様はマグレフ公爵に挑発をしているようだった。自分達の弱さ……リードフ・ハルベルト公爵が裏切りの可能性があるという事実を知られてしまっている以上、仕方ないのかもしれないけれど。セシル様も表情的には冷静だけれど、マグレフ公爵の返答には相当に過敏になっている可能性がある。
なぜなら、セシル様は次期国王陛下になられるお方……隣国のトップであるマグレフ公爵とは今後も付き合いが出て来るだろうし……。マグレフ公爵に舐められないように、リードフ様を追い払うことで牽制しているというわけだ。
マグレフ公爵の反応はセシル様だけでなく、私も非常に興味があった。
「クリンジ王国……リードフ殿は確か、北の大地の全てを領地に治めていたのでしたかな?」
「ええ……それが何か?」
「ふふ……セシル王太子殿下が焦っている理由がよく分かりますよ」
「……」
それは……マグレフ公爵からの見事なカウンターのような言葉だった。
セシル様は無言だったけれど、マグレフ公爵に内情を見抜かれたように思ったのではないだろうか。
「まあ、心配することはないでしょう。あなたとは今後、長い付き合いになりそうだ。仲良くやって行きたいとは思っていますよ」
「そう言っていただけると、光栄でですね。私も同じ気持ちではあります」
「ふふ、よろしく」
二人は固い握手を交わしていた。傍から見れば仲良く見えるかもしれないけれど、本音の部分では様々な戦いが起きているんでしょうね。この日のパーティーについては、リードフ様が連れて行かれたこと以外で、大きな事件はなかった。
「お前の話に興味はない、リードフ。あとは裁判の席でしっかりと弁明するんだな。おそらくは無理だろうが……」
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「ネフィラ、大丈夫か?」
「あ……はい、セシル様。私は大丈夫です……」
少し状況について行けなかったのはあるけれど、私は冷静さを取り戻した。セシル様はそんな私を心配してくれている。申し訳がなかった。
「やれやれ……セシル王太子殿下。随分と強引な行動に出たものですな」
「マグレフ公爵……我が国は謀反を起こす可能性のある貴族には、容赦のない対応をしておりますので」
「ふふ、なるほど……なかなかに厳しいお方のようだ……」
セシル様はマグレフ公爵に挑発をしているようだった。自分達の弱さ……リードフ・ハルベルト公爵が裏切りの可能性があるという事実を知られてしまっている以上、仕方ないのかもしれないけれど。セシル様も表情的には冷静だけれど、マグレフ公爵の返答には相当に過敏になっている可能性がある。
なぜなら、セシル様は次期国王陛下になられるお方……隣国のトップであるマグレフ公爵とは今後も付き合いが出て来るだろうし……。マグレフ公爵に舐められないように、リードフ様を追い払うことで牽制しているというわけだ。
マグレフ公爵の反応はセシル様だけでなく、私も非常に興味があった。
「クリンジ王国……リードフ殿は確か、北の大地の全てを領地に治めていたのでしたかな?」
「ええ……それが何か?」
「ふふ……セシル王太子殿下が焦っている理由がよく分かりますよ」
「……」
それは……マグレフ公爵からの見事なカウンターのような言葉だった。
セシル様は無言だったけれど、マグレフ公爵に内情を見抜かれたように思ったのではないだろうか。
「まあ、心配することはないでしょう。あなたとは今後、長い付き合いになりそうだ。仲良くやって行きたいとは思っていますよ」
「そう言っていただけると、光栄でですね。私も同じ気持ちではあります」
「ふふ、よろしく」
二人は固い握手を交わしていた。傍から見れば仲良く見えるかもしれないけれど、本音の部分では様々な戦いが起きているんでしょうね。この日のパーティーについては、リードフ様が連れて行かれたこと以外で、大きな事件はなかった。
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