23 / 28
23話 舌戦 その3
しおりを挟む
「セシル王太子殿下……どういうつもりですかな?」
「どういうつもり、だと? どういう意味だ?」
「分かっているでしょう……」
リードフ様とセシル様は一触即発の様相を呈している……でも、なんだろうか? 舌戦みたいになるのかと思っていたけれど、リードフ様が明らかに押されてるような気がした。
まあ、北の最高権力者のマグレフ公爵の前で、羞恥を晒すわけにはいかないということなのかもしれないけれど。
でも、こういう風になることを想定していなかったのかしら?
「セシル王太子殿下……よろしいですかな?」
「なんですか、マグレフ公爵? 私で答えられることであればなんありとどうぞ」
「ありがとうございます。クリンジ王国はもしかして……一枚岩ではないのですかな?」
聞きにくいことを平気で質問してくるマグレフ公爵だった。この肝っ玉の強さは流石としか言いようがない。セシル様の返答次第では相手国への牽制と取られかねないけれど……。
「一枚岩ですか……乱れているように見えますか?」
「失礼ながら……まあ、リードフ殿の態度からもそう言った印象は受けておりましたが」
セシル様の護衛とマグレフ公爵の護衛は、互いに距離を詰めているようだった。マグレフ公爵は紛れもないトップだし、セシル様もほぼそれに近い存在だ。やろうと思えば、お互いの首を狙える距離ではある。少しだけ怖い空気が流れているように思えた。
「この距離……我が護衛に命令を出せば、セシル王太子殿下を狙える距離ですな」
「ご冗談を……それは私も同じことです。しかも、この場所はクリンジ王国内。そんな危険を犯すような貴方ではないでしょう?」
「もちろんでございますとも。クリンジ王国と戦争状態になれば、我が国の民は甚大な被害を被るでしょう。それはやがて暴動へと変わり、戦争どころではなくなる。マグレフ公国はそこまで裕福な国家ではありませんからな」
「その言葉を聞けて安心しました。私としては、リードフ殿の独立の手助けをするのではないか、と思っていましたから」
セシル様の本音の言葉だ……そんなことを言ってしまって大丈夫なのだろうか? 緊張の一瞬である。
「ハルベルト家とは今後も仲良くしたいとは思っておりますが、独立の手助けは難しいですな。特に……自らの婚約者を蔑ろにするような家では猶更と言いますか」
「なっ……!?」
「おや、気付いていたのですか? 流石はマグレフ公爵、とても素晴らしい洞察力をお持ちだ」
「いえいえ、勿体ないお言葉ですよセシル殿。貴方の言葉を聞いていれば、フォルブース公爵家がここに居ない理由は大方想像が出来ます。王家の味方をしているのではありませんか?」
「話が早くて助かります。私が説明する必要は最早ないようだ」
トントン拍子に話が進んでいく。リードフ様はマグレフ公爵を後ろ盾にしたかったのだろうけれど、完全に当てが外れたようね。それにしても……フォルブース家の状況を容易に推理するとは、流石は最高権力者だけあるわ。
私は尊敬の眼差しでマグレフ公爵を、そしてセシル様を見ていた。リードフ様はこの二人にまったく及んでいなかったわね……。
「どういうつもり、だと? どういう意味だ?」
「分かっているでしょう……」
リードフ様とセシル様は一触即発の様相を呈している……でも、なんだろうか? 舌戦みたいになるのかと思っていたけれど、リードフ様が明らかに押されてるような気がした。
まあ、北の最高権力者のマグレフ公爵の前で、羞恥を晒すわけにはいかないということなのかもしれないけれど。
でも、こういう風になることを想定していなかったのかしら?
「セシル王太子殿下……よろしいですかな?」
「なんですか、マグレフ公爵? 私で答えられることであればなんありとどうぞ」
「ありがとうございます。クリンジ王国はもしかして……一枚岩ではないのですかな?」
聞きにくいことを平気で質問してくるマグレフ公爵だった。この肝っ玉の強さは流石としか言いようがない。セシル様の返答次第では相手国への牽制と取られかねないけれど……。
「一枚岩ですか……乱れているように見えますか?」
「失礼ながら……まあ、リードフ殿の態度からもそう言った印象は受けておりましたが」
セシル様の護衛とマグレフ公爵の護衛は、互いに距離を詰めているようだった。マグレフ公爵は紛れもないトップだし、セシル様もほぼそれに近い存在だ。やろうと思えば、お互いの首を狙える距離ではある。少しだけ怖い空気が流れているように思えた。
「この距離……我が護衛に命令を出せば、セシル王太子殿下を狙える距離ですな」
「ご冗談を……それは私も同じことです。しかも、この場所はクリンジ王国内。そんな危険を犯すような貴方ではないでしょう?」
「もちろんでございますとも。クリンジ王国と戦争状態になれば、我が国の民は甚大な被害を被るでしょう。それはやがて暴動へと変わり、戦争どころではなくなる。マグレフ公国はそこまで裕福な国家ではありませんからな」
「その言葉を聞けて安心しました。私としては、リードフ殿の独立の手助けをするのではないか、と思っていましたから」
セシル様の本音の言葉だ……そんなことを言ってしまって大丈夫なのだろうか? 緊張の一瞬である。
「ハルベルト家とは今後も仲良くしたいとは思っておりますが、独立の手助けは難しいですな。特に……自らの婚約者を蔑ろにするような家では猶更と言いますか」
「なっ……!?」
「おや、気付いていたのですか? 流石はマグレフ公爵、とても素晴らしい洞察力をお持ちだ」
「いえいえ、勿体ないお言葉ですよセシル殿。貴方の言葉を聞いていれば、フォルブース公爵家がここに居ない理由は大方想像が出来ます。王家の味方をしているのではありませんか?」
「話が早くて助かります。私が説明する必要は最早ないようだ」
トントン拍子に話が進んでいく。リードフ様はマグレフ公爵を後ろ盾にしたかったのだろうけれど、完全に当てが外れたようね。それにしても……フォルブース家の状況を容易に推理するとは、流石は最高権力者だけあるわ。
私は尊敬の眼差しでマグレフ公爵を、そしてセシル様を見ていた。リードフ様はこの二人にまったく及んでいなかったわね……。
23
お気に入りに追加
3,375
あなたにおすすめの小説
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…
ゆずこしょう
恋愛
「メーティア!私にあなたの婚約者を譲ってちょうだい!!」
国王主催のパーティーの最中、すごい足音で近寄ってきたのはアーテリア・ジュアン侯爵令嬢(20)だ。
皆突然の声に唖然としている。勿論、私もだ。
「アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」
20歳を超えて婚約者が居ない方がおかしいものだ…
「ではこうしましょう?私と婚約者を交換してちょうだい!」
「交換ですか…?」
果たしてメーティアはどうするのか…。
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる