上 下
15 / 28

15話 フォルブース家は味方

しおりを挟む

「セシル王太子殿下、ネフィラ嬢……ご無沙汰しております」

「ご無沙汰しております」


 現れた二人は私達に頭を下げた。合わせるように私とセシル様も挨拶をする。


「しかし驚いたな……まさか、カルカロフ殿とマーシオ嬢が現れるとは思わなかった」

「セシル、意外だと言うのも分からなくはないが、フォルブース家の二人は我々の味方だぞ」

「味方ですか……?」


 国王陛下の言葉に思わず私は反応してしまった。確かに前の会合の時でもマーシオ様は私に謝罪をしていたし、カルカロフ様もリードフ様と比べると消極的だったけれど……一体、どういう心境の変化があったのだろうか。


「その通りだ、ネフィラ嬢。二人はリードフを頂点とするハルベルト家とは違い、王家と敵対する気はないとのことだ。今回の強引な婚約にも、かなり疑問符が出ていたようだな」

「なるほど……そういうことですか」

「左様でございます、ネフィラ様。今回の婚約の件……私自身はあまり望んではいないのです」

「スタイン様を愛していなかった、ということですか?」

「いえ、決してそういうわけではないのですが……」


 あ、しまった……少し問い詰めているような展開になってしまったかしら? マーシオ様も脅えているようだし……。


「私はスタイン様やリードフ様の考え方には付いて行けない……ということでございます」

「ふむ、カルカロフ殿も同じ考え……ということで良いのだろうか?」

「勿論でございます、セシル王太子殿下。私もマーシオも、リードフ殿の考えには付いて行けません」

「なるほど、お二人の考えは良くわかりましたよ」


 セシル様はカルカロフ様の言葉を聞いて頷いていた。一定の信用を持っても良いと考えているのかな。私としても以前の会合でのマーシオ様の謝罪もあるし、二人を信用して良い気がしている。何よりも、ジルカド国王陛下が信用しているみたいだからね。

「何はともあれ、フォルブース家が味方になってくれるのであれば、ハルベルト家を追い込みやすくなったというわけだ」

「確かにそうですね」


 ジルカド国王陛下もセシル様も心強い味方の存在に安心しているようだった。まあ、普通に考えればフォルブース家も王家の味方をした方が絶対に得策だしね。ハルベルト家は国家反逆罪に問われる可能性だってあるのだから。

 今まではハルベルト家、フォルブース家という二つの公爵家がタッグを組んでいたから、王家も迂闊には手を出せなかったかもしれないけれど、現在はフォルブース家は離れて、ハルベルト家のみの状態。

 勝負あり、とはまさにこのことかしらね……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢は、それでも幸せな未来を描く

瑞紀
恋愛
伯爵の愛人の連れ子であるアイリスは、名ばかりの伯爵令嬢の地位を与えられていたが、長年冷遇され続けていた。ある日の夜会で身に覚えのない婚約破棄を受けた彼女。婚約者が横に連れているのは義妹のヒーリーヌだった。 しかし、物語はここから急速に動き始める……? ざまぁ有の婚約破棄もの。初挑戦ですが、お楽しみいただけると幸いです。 予定通り10/18に完結しました。 ※HOTランキング9位、恋愛15位、小説16位、24hポイント10万↑、お気に入り1000↑、感想などなどありがとうございます。初めて見る数字に戸惑いつつ喜んでおります。 ※続編?後日談?が完成しましたのでお知らせ致します。 婚約破棄された令嬢は、隣国の皇女になりました。(https://www.alphapolis.co.jp/novel/737101674/301558993)

馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます

白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。 そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。 最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。 『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。 そこに至るまでのカイン王子の話。 『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。 + + + + + + この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。 購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

殿下は、幼馴染で許嫁の没落令嬢と婚約破棄したいようです。

和泉鷹央
恋愛
 ナーブリー王国の第三王位継承者である王子ラスティンは、幼馴染で親同士が決めた許嫁である、男爵令嬢フェイとの婚約を破棄したくて仕方がなかった。  フェイは王国が建国するより前からの家柄、たいして王家はたかだか四百年程度の家柄。  国王と臣下という立場の違いはあるけど、フェイのグラブル男爵家は王国内では名家として知られていたのだ。   ……例え、先祖が事業に失敗してしまい、元部下の子爵家の農家を改築した一軒家に住んでいるとしてもだ。  こんな見栄えも体裁も悪いフェイを王子ラスティンはなんとかして縁を切ろうと画策する。  理由は「貧乏くさいからっ!」  そんなある日、フェイは国王陛下のお招きにより、別件で王宮へと上がることになる。  たまたま見かけたラスティンを追いかけて彼の後を探すと、王子は別の淑女と甘いキスを交わしていて……。  他の投稿サイトでも掲載しています。

悪役令嬢は、いつでも婚約破棄を受け付けている。

ao_narou
恋愛
 自身の愛する婚約者――ソレイル・ディ・ア・ユースリアと平民の美少女ナナリーの密会を知ってしまった悪役令嬢――エリザベス・ディ・カディアスは、自身の思いに蓋をしてソレイルのため「わたくしはいつでも、あなたからの婚約破棄をお受けいたしますわ」と言葉にする。  その度に困惑を隠せないソレイルはエリザベスの真意に気付くのか……また、ナナリーとの浮気の真相は……。  ちょっとだけ変わった悪役令嬢の恋物語です。

処理中です...