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9話 会合 その3

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「ネフィラ様、本当に申し訳ありませんでした……!」

「マーシオ様……」


 私はマーシオ様の突然の謝罪に驚きを隠せなかった。セシル様も驚いているだろうけれど、返答に困ってしまうわね。簡単に「許します」と言うべき状況でないのは明らかだし……かといって、マーシオ様が嘘で謝っているとも考えにくいし。

「マーシオ、少し落ち着いたらどうだ? ネフィラ嬢やセシル王太子殿下も困っていらっしゃるようだしな」

「あ、も、申し訳ございません……! 私だけの感情を爆発させてしまって……!」

「い、いえ、お気になさらずに……」


 私はどうしようかと考えていたけれど、カルカロフ様がマーシオ様を宥める形で、場は収束することになった。改めて仕切り直しということになる。

「……」


 無言を貫いていたけれど、マーシオ様の急な謝罪には、スタイン様も驚いているようだった。すぐに場が収束して嬉しかったのか、今は安堵しているようだけれど。



「さて、話を戻すとしようか」

「はい、セシル王太子殿下」

「今回の騒動の発端は、そちらに居るスタイン・ハルベルト殿が、こちらに居るネフィラ嬢との婚約を破棄したところから始まっている。それはもちろん、分かっているな?」


 セシル様からの静かな圧力とでも言えば良いのかしら。私にもそれは伝わって来た。叱責の対象になっている彼らには、より伝わっていることだろう。


「もちろんでございます、王太子殿下」

「はい、私にも伝わっております。誠に申し訳ありませんでした。娘に代わりまして、再度、謝罪させていただきます」

 リードフ様、カルカロフ様は二人とも頷き、カルカロフ様に至っては頭まで下げて来ていた。公爵がこのように頭を下げる光景なんてほとんど見ることが出来ないだろう。


「カルカロフ殿が謝罪をされるということであれば、話は早そうだ。婚約破棄の一件と、スタイン殿とマーシオ嬢の婚約……どのように考えているのだ?」

「セシル王太子殿下、質問の意図が分かりませんね」

「ん? リードフ殿……?」


 先程から、カルカロフ様とは違ってリードフ様は強気な発言が多い気がする。ここにきてさらに強気になっているようだった。


「ハルベルト家とフォルブース家の婚約については王家からの回答を、まだ頂いておりませんが、セシル王太子殿下が関与するところなのでしょうか? ネフィラ嬢への一件についての慰謝料問題などでしたらともかく、その後の婚約については、ここで問われる内容なのでしょうか?」

 本当に強気だ……相手は王太子殿下だということを忘れているのではないだろうか? とさえ思える程に。

「細かい是非は置いておいても、私が関与するべき内容であることに間違いはないさ。なにせ、次期国王は私になるのだからな。配下である貴族同士の勢力図に注視するのは当たり前だろう? さらに、今回の一件はスタイン殿の婚約破棄から始まっているのだからな。リードフ殿、先ほどから随分と強気なようだが、自分の息子が起こしている一件だということを忘れない方が良いぞ?」

「……」

 強気な態度のリードフ様だったけれど、セシル様はその上を行っていた。全く怯むことなく自らの意見を述べているのだ。次期国王陛下という立場なのだから、このくらいのことは出来るのが当たり前なのかもしれないけれど。

 私はそんなセシル様に頼もしさやトキメキを感じていた……こんな時に不謹慎かもしれないけれど。
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