9 / 28
9話 会合 その3
しおりを挟む「ネフィラ様、本当に申し訳ありませんでした……!」
「マーシオ様……」
私はマーシオ様の突然の謝罪に驚きを隠せなかった。セシル様も驚いているだろうけれど、返答に困ってしまうわね。簡単に「許します」と言うべき状況でないのは明らかだし……かといって、マーシオ様が嘘で謝っているとも考えにくいし。
「マーシオ、少し落ち着いたらどうだ? ネフィラ嬢やセシル王太子殿下も困っていらっしゃるようだしな」
「あ、も、申し訳ございません……! 私だけの感情を爆発させてしまって……!」
「い、いえ、お気になさらずに……」
私はどうしようかと考えていたけれど、カルカロフ様がマーシオ様を宥める形で、場は収束することになった。改めて仕切り直しということになる。
「……」
無言を貫いていたけれど、マーシオ様の急な謝罪には、スタイン様も驚いているようだった。すぐに場が収束して嬉しかったのか、今は安堵しているようだけれど。
「さて、話を戻すとしようか」
「はい、セシル王太子殿下」
「今回の騒動の発端は、そちらに居るスタイン・ハルベルト殿が、こちらに居るネフィラ嬢との婚約を破棄したところから始まっている。それはもちろん、分かっているな?」
セシル様からの静かな圧力とでも言えば良いのかしら。私にもそれは伝わって来た。叱責の対象になっている彼らには、より伝わっていることだろう。
「もちろんでございます、王太子殿下」
「はい、私にも伝わっております。誠に申し訳ありませんでした。娘に代わりまして、再度、謝罪させていただきます」
リードフ様、カルカロフ様は二人とも頷き、カルカロフ様に至っては頭まで下げて来ていた。公爵がこのように頭を下げる光景なんてほとんど見ることが出来ないだろう。
「カルカロフ殿が謝罪をされるということであれば、話は早そうだ。婚約破棄の一件と、スタイン殿とマーシオ嬢の婚約……どのように考えているのだ?」
「セシル王太子殿下、質問の意図が分かりませんね」
「ん? リードフ殿……?」
先程から、カルカロフ様とは違ってリードフ様は強気な発言が多い気がする。ここにきてさらに強気になっているようだった。
「ハルベルト家とフォルブース家の婚約については王家からの回答を、まだ頂いておりませんが、セシル王太子殿下が関与するところなのでしょうか? ネフィラ嬢への一件についての慰謝料問題などでしたらともかく、その後の婚約については、ここで問われる内容なのでしょうか?」
本当に強気だ……相手は王太子殿下だということを忘れているのではないだろうか? とさえ思える程に。
「細かい是非は置いておいても、私が関与するべき内容であることに間違いはないさ。なにせ、次期国王は私になるのだからな。配下である貴族同士の勢力図に注視するのは当たり前だろう? さらに、今回の一件はスタイン殿の婚約破棄から始まっているのだからな。リードフ殿、先ほどから随分と強気なようだが、自分の息子が起こしている一件だということを忘れない方が良いぞ?」
「……」
強気な態度のリードフ様だったけれど、セシル様はその上を行っていた。全く怯むことなく自らの意見を述べているのだ。次期国王陛下という立場なのだから、このくらいのことは出来るのが当たり前なのかもしれないけれど。
私はそんなセシル様に頼もしさやトキメキを感じていた……こんな時に不謹慎かもしれないけれど。
21
お気に入りに追加
3,377
あなたにおすすめの小説
そうですか、私より妹の方を選ぶのですか。別に構いませんがその子、どうしようもない程の害悪ですよ?
亜綺羅もも
恋愛
マリア・アンフォールにはソフィア・アンフォールという妹がいた。
ソフィアは身勝手やりたい放題。
周囲の人たちは困り果てていた。
そんなある日、マリアは婚約者であるルーファウス・エルレガーダに呼び出され彼の元に向かうと、なんとソフィアがいた。
そして突然の婚約破棄を言い渡されるマリア。
ルーファウスはソフィアを選びマリアを捨てると言うのだ。
マリアがルーファウスと婚約破棄したと言う噂を聞きつけ、彼女の幼馴染であるロック・ヴァフリンがマリアの元に訪れる。
どうやら昔からずっとマリアのことが好きだったらしく、彼女に全力で求愛するロック。
一方その頃、ソフィアの本性を知ったルーファウス……
後悔し始めるが、時すでに遅し。
二人の転落人生が待っていたのであった。
陰謀は、婚約破棄のその後で
秋津冴
恋愛
王国における辺境の盾として国境を守る、グレイスター辺境伯アレクセイ。
いつも眠たそうにしている彼のことを、人は昼行灯とか怠け者とか田舎者と呼ぶ。
しかし、この王国は彼のおかげで平穏を保てるのだと中央の貴族たちは知らなかった。
いつものように、王都への定例報告に赴いたアレクセイ。
彼は、王宮の端でとんでもないことを耳にしてしまう。
それは、王太子ラスティオルによる、婚約破棄宣言。
相手は、この国が崇めている女神の聖女マルゴットだった。
一連の騒動を見届けたアレクセイは、このままでは聖女が謀殺されてしまうと予測する。
いつもの彼ならば関わりたくないとさっさと辺境に戻るのだが、今回は話しが違った。
聖女マルゴットは彼にとって一目惚れした相手だったのだ。
無能と蔑まれていた辺境伯が、聖女を助けるために陰謀を企てる――。
他の投稿サイトにも別名義で掲載しております。
この話は「本日は、絶好の婚約破棄日和です。」と「王太子妃教育を受けた私が、婚約破棄相手に復讐を果たすまで。」の二話の合間を描いた作品になります。
宜しくお願い致します。
妹は私の婚約者と駆け落ちしました
今川幸乃
恋愛
貧乏貴族ブレンダ男爵家の姉妹、カトリナとジェニーにはラインハルトとレオルという婚約者がいた。
姉カトリナの婚約者ラインハルトはイケメンで女性に優しく、レオルは醜く陰気な性格と評判だった。
そんな姉の婚約者をうらやんだジェニーはラインハルトと駆け落ちすることを選んでしまう。
が、レオルは陰気で不器用ではあるが真面目で有能な人物であった。
彼との協力によりブレンダ男爵家は次第に繁栄していく。
一方ラインハルトと結ばれたことを喜ぶジェニーだったが、彼は好みの女性には節操なく手を出す軽薄な男であることが分かっていくのだった。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
貧乏令嬢はお断りらしいので、豪商の愛人とよろしくやってください
今川幸乃
恋愛
貧乏令嬢のリッタ・アストリーにはバート・オレットという婚約者がいた。
しかしある日突然、バートは「こんな貧乏な家は我慢できない!」と一方的に婚約破棄を宣言する。
その裏には彼の領内の豪商シーモア商会と、そこの娘レベッカの姿があった。
どうやら彼はすでにレベッカと出来ていたと悟ったリッタは婚約破棄を受け入れる。
そしてバートはレベッカの言うがままに、彼女が「絶対儲かる」という先物投資に家財をつぎ込むが……
一方のリッタはひょんなことから幼いころの知り合いであったクリフトンと再会する。
当時はただの子供だと思っていたクリフトンは実は大貴族の跡取りだった。
婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします
結城芙由奈
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】
「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」
私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか?
※ 他サイトでも掲載しています
婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。
聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。
平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる