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4話 スタインとマーシオの婚約話 その2
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「セシル様……ジルカド・クリンジ国王陛下への拝謁は、とても緊張するのですが……」
私は現在、クリンジ王国のトップであるジルカド様に拝謁する直前であった。理由はもちろん、スタイン様とマーシオ様の婚約に関してのことだ。それに加えて、スタイン様に婚約破棄されたことも含まれるけれど。
通常は貴族同士の婚約は国王陛下の承認が必要になる。特に大規模な地域を管理している二つの家系の婚約となれば、王家の介入もあるだろうし。
直接的な介入がなかったとしても、スタイン様やマーシオ様は必ず、国王陛下や議会に婚約の話をしているだろうし。二人の婚約についてどのように考えているのか、国王陛下自身に聞くのが一番早いというのがセシル様の意見でもあった。
セシル様の意見が通り、私達の拝謁が決定したのであった。
非公式の謁見にはなるので、玉座の間ではなく、国王陛下の私室に入るということになっているけれど。本当に緊張感が拭えない……ああ、失礼なことを言わないか不安だわ。
「そんなに緊張しても仕方がないだろう?」
「それはそうなのですが……王国の最高権力者である、ジルカド様に拝謁となるとどうしても……」
「その気持ちは分かるが、今回は非公式の謁見だ。そこまで緊張する必要はないぞ」
「は、はい……」
セシル様は私の緊張を解く意味合いで言ってくれているのだろうけれど、やはりなかなか緊張は解れない……。
その間にも国王陛下への拝謁の時間は迫っていた。
「セシル様はどのように思われますか?」
「ん? どういうことだ?」
「スタイン様とマーシオ様の婚約についてです。お父様である、ジルカド様が承諾しているとお思いでしょうか?」
仮にスタイン様とマーシオ様の婚約が決まった場合、クリンジ王国の南北の境界線が1つの家系に支配されることになる。実際は2つの家系ではあるけれど、その2つの家系の結びつきが強くなれば、似たようなものだろう。
「そうだな……両家系の繋がりが強くなるのは、王家としても好ましいとは言えない。管理している地方の関係性からもな。父上は承諾していないと思いたいよ」
「なるほど、セシル様もそのように考えているのですね」
「ああ、やはり王家としては配下である貴族の均衡を保つのは相当に重要だからな」
セシル様の意見はもっともだと思えた。あまりにも1つの貴族が力をつけた場合、独立や反逆をされる可能性があるだろうから。全ての貴族はあくまでも王家の配下……この基本を忘れてはならないというわけだ。
「セシル王太子殿下、ネフィラ様。大変お待たせいたしました。ジルカド・クリンジ国王陛下がお会いになられます。国王陛下の私室までお越しいただけますでしょうか?」
「ああ、わかった」
「畏まりました」
執事の一人から謁見の時間になったことを知らされる。いよいよ、ジルカド国王陛下への拝謁だ。
緊張感もそうだけれど、私とセシル様の周囲に国王陛下直属の親衛隊が現れたことが驚きだった。王太子であるセシル様が居たとしてもここまでの警備になるわけだ。
これはきっと、私だけでは国王陛下に会うことは出来なかったわね。お父様の提案通り、幼馴染のセシル様に相談をして正解だったわ……。
私は現在、クリンジ王国のトップであるジルカド様に拝謁する直前であった。理由はもちろん、スタイン様とマーシオ様の婚約に関してのことだ。それに加えて、スタイン様に婚約破棄されたことも含まれるけれど。
通常は貴族同士の婚約は国王陛下の承認が必要になる。特に大規模な地域を管理している二つの家系の婚約となれば、王家の介入もあるだろうし。
直接的な介入がなかったとしても、スタイン様やマーシオ様は必ず、国王陛下や議会に婚約の話をしているだろうし。二人の婚約についてどのように考えているのか、国王陛下自身に聞くのが一番早いというのがセシル様の意見でもあった。
セシル様の意見が通り、私達の拝謁が決定したのであった。
非公式の謁見にはなるので、玉座の間ではなく、国王陛下の私室に入るということになっているけれど。本当に緊張感が拭えない……ああ、失礼なことを言わないか不安だわ。
「そんなに緊張しても仕方がないだろう?」
「それはそうなのですが……王国の最高権力者である、ジルカド様に拝謁となるとどうしても……」
「その気持ちは分かるが、今回は非公式の謁見だ。そこまで緊張する必要はないぞ」
「は、はい……」
セシル様は私の緊張を解く意味合いで言ってくれているのだろうけれど、やはりなかなか緊張は解れない……。
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「セシル様はどのように思われますか?」
「ん? どういうことだ?」
「スタイン様とマーシオ様の婚約についてです。お父様である、ジルカド様が承諾しているとお思いでしょうか?」
仮にスタイン様とマーシオ様の婚約が決まった場合、クリンジ王国の南北の境界線が1つの家系に支配されることになる。実際は2つの家系ではあるけれど、その2つの家系の結びつきが強くなれば、似たようなものだろう。
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「なるほど、セシル様もそのように考えているのですね」
「ああ、やはり王家としては配下である貴族の均衡を保つのは相当に重要だからな」
セシル様の意見はもっともだと思えた。あまりにも1つの貴族が力をつけた場合、独立や反逆をされる可能性があるだろうから。全ての貴族はあくまでも王家の配下……この基本を忘れてはならないというわけだ。
「セシル王太子殿下、ネフィラ様。大変お待たせいたしました。ジルカド・クリンジ国王陛下がお会いになられます。国王陛下の私室までお越しいただけますでしょうか?」
「ああ、わかった」
「畏まりました」
執事の一人から謁見の時間になったことを知らされる。いよいよ、ジルカド国王陛下への拝謁だ。
緊張感もそうだけれど、私とセシル様の周囲に国王陛下直属の親衛隊が現れたことが驚きだった。王太子であるセシル様が居たとしてもここまでの警備になるわけだ。
これはきっと、私だけでは国王陛下に会うことは出来なかったわね。お父様の提案通り、幼馴染のセシル様に相談をして正解だったわ……。
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