3 / 5
3話
しおりを挟む
アロン・マクレガー第三王子殿下……私と同じ歳の幼馴染だった人だ。知り合ったのはヴァード様よりも前になる。同じ歳だったこともあり、かなり親しくなったのだけれど、王子教育が忙しくなったのか途中から全く会えなくなってしまった。私が11歳くらいの時だったと思う。つまりは7年くらい前から会っていないわけで……。
「ラクーダ殿、突然の訪問申し訳ない。貴殿の用事も鑑みずに来てしまった」
「いえ、とんでもありません。アロン様に来ていただいたことは至上の喜びであります」
「そう言っていただき感謝の言葉もない」
「いえいえ」
アロンの丁寧な挨拶が終わった。彼は王子殿下という立場にありながら、かなり異質な人物だった。あまり周りとの地位の差を考えていないというか。そのために国王陛下に怒られたことがあるらしいけどね。
「セシル、久しぶりだね。俺のことは覚えているかな?」
「ええ、もちろんよ、アロン。ええと……こういう話し方で問題ないのかしら?」
「ああ、こういう所では問題ないさ。むしろ、そっちの方が助かるね」
「そう……良かったわ」
アロンは私が普通に話すことを許してくれた。私としても緊張する必要がないので、普通に話す方が嬉しい。ちなみにアロンは……私の初恋の人物になる。ただ、王子殿下との恋は無理だろうということで、ヴァード様と婚約してしまったけれど。
それが間違いになるとは思ってもみなかったわ……。
「それで、アロン様。本日の用事としてはどのようなものがありますか?」
「ああ、既に予想は出来ているかもしれないが……ヴァードとセシルの婚約破棄についてだ」
「婚約破棄……」
ヴァード様との婚約破棄はまだ数日しか経っていない。この短時間でアロンの元に情報が流れたということになる。そうなると、他の貴族達へも情報は拡散しているだろうか。非常に不安だ。今度、誰かのパーティーに出席した時に何を言われるか……それがとにかく不安だった。
「ヴァードのやっていることはなんとなくは聞いている。セシルが婚約破棄をされるなんて信じられない。あの男に非があるんじゃないか?」
「ええと、それは……なんというか」
「大丈夫だよ、セシル。第三王子の面子に掛けて、ヴァードからの復讐なんてさせないから」
「アロン……」
彼の言葉は嬉しいかった。私の味方をしてくれる相手……しかも、ヴァード様よりも位が高い相手なのだ。これはひょっとすると慰謝料の請求ができるかもしれないわね。
---------------------------
「なるほど、話は大体わかった。つまりはヴァードの自分勝手な婚約破棄というわけだな?」
「そういうことになるわね。ヴァード様が私を相応しくないと言ったのは事実なのだし」
「……許せないな。一方的な婚約破棄をしていながら、慰謝料すら払わないとは。貴族の風上にも置けない奴だ」
「アロン……」
アロンは怒りの形相をしていた。素直に嬉しいけれど、逆に怖さも出て来る。そんな彼を見たことはなかったから。その後、私とアロンはヴァード様の屋敷に向かうことになった。
「ラクーダ殿、突然の訪問申し訳ない。貴殿の用事も鑑みずに来てしまった」
「いえ、とんでもありません。アロン様に来ていただいたことは至上の喜びであります」
「そう言っていただき感謝の言葉もない」
「いえいえ」
アロンの丁寧な挨拶が終わった。彼は王子殿下という立場にありながら、かなり異質な人物だった。あまり周りとの地位の差を考えていないというか。そのために国王陛下に怒られたことがあるらしいけどね。
「セシル、久しぶりだね。俺のことは覚えているかな?」
「ええ、もちろんよ、アロン。ええと……こういう話し方で問題ないのかしら?」
「ああ、こういう所では問題ないさ。むしろ、そっちの方が助かるね」
「そう……良かったわ」
アロンは私が普通に話すことを許してくれた。私としても緊張する必要がないので、普通に話す方が嬉しい。ちなみにアロンは……私の初恋の人物になる。ただ、王子殿下との恋は無理だろうということで、ヴァード様と婚約してしまったけれど。
それが間違いになるとは思ってもみなかったわ……。
「それで、アロン様。本日の用事としてはどのようなものがありますか?」
「ああ、既に予想は出来ているかもしれないが……ヴァードとセシルの婚約破棄についてだ」
「婚約破棄……」
ヴァード様との婚約破棄はまだ数日しか経っていない。この短時間でアロンの元に情報が流れたということになる。そうなると、他の貴族達へも情報は拡散しているだろうか。非常に不安だ。今度、誰かのパーティーに出席した時に何を言われるか……それがとにかく不安だった。
「ヴァードのやっていることはなんとなくは聞いている。セシルが婚約破棄をされるなんて信じられない。あの男に非があるんじゃないか?」
「ええと、それは……なんというか」
「大丈夫だよ、セシル。第三王子の面子に掛けて、ヴァードからの復讐なんてさせないから」
「アロン……」
彼の言葉は嬉しいかった。私の味方をしてくれる相手……しかも、ヴァード様よりも位が高い相手なのだ。これはひょっとすると慰謝料の請求ができるかもしれないわね。
---------------------------
「なるほど、話は大体わかった。つまりはヴァードの自分勝手な婚約破棄というわけだな?」
「そういうことになるわね。ヴァード様が私を相応しくないと言ったのは事実なのだし」
「……許せないな。一方的な婚約破棄をしていながら、慰謝料すら払わないとは。貴族の風上にも置けない奴だ」
「アロン……」
アロンは怒りの形相をしていた。素直に嬉しいけれど、逆に怖さも出て来る。そんな彼を見たことはなかったから。その後、私とアロンはヴァード様の屋敷に向かうことになった。
11
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?お黙りなさいと言ってるの。-悪役令嬢イレーナ・マルティネスのおとぎ話について-
田中冥土
恋愛
イレーナ・マルティネスは代々女性当主の家系に生まれ、婿を迎えることとなっていた。
そのような家柄の関係上、イレーナは女傑・怪女・烈婦などと好き放題言われている。
しかしそんな彼女にも、近頃婚約者が平民出身の女生徒と仲良くしているように見えるという、いじらしくそして重大な悩みを抱えていた。
小説家になろうにも掲載中。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【本編完結】婚約者には愛する人がいるのでツギハギ令嬢は身を引きます!
ユウ
恋愛
公爵令嬢のアドリアーナは血筋だけは国一番であるが平凡な令嬢だった。
魔力はなく、スキルは縫合という地味な物だった。
優しい父に優しい兄がいて幸せだった。
ただ一つの悩みごとは婚約者には愛する人がいることを知らされる。
世間では二人のロマンスが涙を誘い、アドリア―ナは悪役令嬢として噂を流されてしまう。
婚約者で幼馴染でもあるエイミールには友人以上の感情はないので潔く身を引く事を宣言するも激怒した第一皇女が王宮に召し上げ傍付きに命じるようになる。
公爵令嬢が侍女をするなど前代未聞と思いきや、アドリア―ナにとっては楽園だった。
幼い頃から皇女殿下の侍女になるのが夢だったからだ。
皇女殿下の紹介で素敵な友人を紹介され幸せな日々を送る最中、婚約者のエイミールが乗り込んで来るのだったが…。
[完結]あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
真那月 凜
恋愛
10代前の先祖の血と知識を継いで生まれたため、気味が悪いと恐れられているアリシャナ
左腕と顔の左半分に入れ墨のような模様を持って生まれたため、呪われていると恐れられているエイドリアン
常に孤独とともにあった2人はある日突然、政略結婚させられることになる
100件を超えるお気に入り登録ありがとうございます!
第15回恋愛小説大賞:334位
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です
カクヨム・なろうでも掲載しております
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
魔女を理由に妹に王子様を取られました~もっとかっこいい王子様に出会えたのでよしとしましょう~
春木ハル
恋愛
主人公ソフィアはもともと戦略結婚で隣の国のリチャード王子と婚約していた。だが、ほくろが見つかり魔女ではないかという疑いをかけられ、婚約破棄されて人生めちゃくちゃに…。そんな中、たった一人助けてくれる存在との恋愛ストーリー!!
※R-15はついでです。
真実の愛なら王命の婚約破棄も仕方ないのですね
morimiyaco
恋愛
私はミラ・カスター公爵令嬢。祖母をこの国の王女に持つ公爵家の長女になります。母は女公爵、入婿である父とは王命での政略結婚であるから愛はなく、私を妊娠してから、父は愛人とその子供達に愛情を注いでいる状態です。
まあ貴族ならよくある家庭環境だったのであまり気にしておりませんでしたのよ。婚約者である第一王子が義妹を横に連れて私に婚約破棄を叫ばなければ。
そしてそれを認めた国王様?真実の愛ならば王命を破棄しても宜しいのですね。
双子の妹に婚約者を奪われ婚約破棄となりました。
五月ふう
恋愛
ルカが聖女になったんなら、アテネとは婚約破棄して、ルカと結婚しようか。婚約者であるゼウはそう呟いた。なぜ?ルカは聖女になったんじゃなくて、悪魔に取り憑かれたのよ!そんなアテネの言葉はゼウに届かない、、、。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる