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3話

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 アロン・マクレガー第三王子殿下……私と同じ歳の幼馴染だった人だ。知り合ったのはヴァード様よりも前になる。同じ歳だったこともあり、かなり親しくなったのだけれど、王子教育が忙しくなったのか途中から全く会えなくなってしまった。私が11歳くらいの時だったと思う。つまりは7年くらい前から会っていないわけで……。

「ラクーダ殿、突然の訪問申し訳ない。貴殿の用事も鑑みずに来てしまった」

「いえ、とんでもありません。アロン様に来ていただいたことは至上の喜びであります」

「そう言っていただき感謝の言葉もない」

「いえいえ」


 アロンの丁寧な挨拶が終わった。彼は王子殿下という立場にありながら、かなり異質な人物だった。あまり周りとの地位の差を考えていないというか。そのために国王陛下に怒られたことがあるらしいけどね。

「セシル、久しぶりだね。俺のことは覚えているかな?」

「ええ、もちろんよ、アロン。ええと……こういう話し方で問題ないのかしら?」

「ああ、こういう所では問題ないさ。むしろ、そっちの方が助かるね」

「そう……良かったわ」


 アロンは私が普通に話すことを許してくれた。私としても緊張する必要がないので、普通に話す方が嬉しい。ちなみにアロンは……私の初恋の人物になる。ただ、王子殿下との恋は無理だろうということで、ヴァード様と婚約してしまったけれど。

 それが間違いになるとは思ってもみなかったわ……。


「それで、アロン様。本日の用事としてはどのようなものがありますか?」

「ああ、既に予想は出来ているかもしれないが……ヴァードとセシルの婚約破棄についてだ」

「婚約破棄……」


 ヴァード様との婚約破棄はまだ数日しか経っていない。この短時間でアロンの元に情報が流れたということになる。そうなると、他の貴族達へも情報は拡散しているだろうか。非常に不安だ。今度、誰かのパーティーに出席した時に何を言われるか……それがとにかく不安だった。


「ヴァードのやっていることはなんとなくは聞いている。セシルが婚約破棄をされるなんて信じられない。あの男に非があるんじゃないか?」

「ええと、それは……なんというか」

「大丈夫だよ、セシル。第三王子の面子に掛けて、ヴァードからの復讐なんてさせないから」

「アロン……」


 彼の言葉は嬉しいかった。私の味方をしてくれる相手……しかも、ヴァード様よりも位が高い相手なのだ。これはひょっとすると慰謝料の請求ができるかもしれないわね。


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「なるほど、話は大体わかった。つまりはヴァードの自分勝手な婚約破棄というわけだな?」

「そういうことになるわね。ヴァード様が私を相応しくないと言ったのは事実なのだし」

「……許せないな。一方的な婚約破棄をしていながら、慰謝料すら払わないとは。貴族の風上にも置けない奴だ」

「アロン……」


 アロンは怒りの形相をしていた。素直に嬉しいけれど、逆に怖さも出て来る。そんな彼を見たことはなかったから。その後、私とアロンはヴァード様の屋敷に向かうことになった。
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