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15話 話し合い その2
しおりを挟む「ジルト殿、ウルバス殿は今日はいないのかな? どうなんだ」
「父上でございますか。今は不在でございます」
「そうか、残念だ。ぜひともウルバス殿にも聞いてもらいたいことではあったが」
ジルト様は先ほどから冷や汗をかいているようだった。後ろめたいことがある証拠ね。キスク王子殿下はすぐさま問い詰めて行く。
「王家に対しての報告と現実は随分と違うようだ。この点について、何か釈明はあるか? ジルト殿」
「あ、いえ……それは、その……」
「ウルバス殿にも是非、考えて欲しいところではあったが。ジルト殿はどうやら、ウルバス殿にも虚偽の報告をしているな? 王家のみでは飽き足らず……」
「虚偽の報告だなんて……決してそのようなことは……」
目線が全然合っていないけれど、本当に酷い言い訳だった。ここまでキスク王子殿下が責めている時点で、私から婚約破棄の真相を聞いているのは当たり前なのに。それすら分からないほど焦っているのかしら?
私と婚約破棄をして完全に勝利したと思っていたのでしょうね。所詮は子爵令嬢でしかないから、大した横の繋がりもなく反撃に転じることなんて不可能だと。
でも、ジルト様は最大のミスがあった。それはエネラ姉さまの存在を忘れていたことだ。まあ、私もアンダルテも姉さまの権力の高さを知ったのは最近のことだけれどね。
「虚偽の報告をしていないと申しますの? 我が妹のアーニーからは全てを聞いていますのよ?」
「い、いえ……アーニー嬢は婚約破棄の悲しみで大袈裟に言っているのかもしれませんし……はは」
「ジルト様……」
そんな言葉で逃げ切れると思っているのだろうか? 本当に情けない人になってしまったのね。
「無駄だジルト殿。アーニー嬢からの証言だけでなく、使用人からも既に聴取は完了している」
「なっ……! 使用人からも……!?」
「その通りだ。それから……特別ゲストを呼ぶとしようか。入って来てください」
その時、キスク王子殿下は合図を出した。応接室に入って来た人物は……ウルバス様だった。
「ち、父上……! そんな……不在のはずでは!」
「王子殿下の要請で家を出ていただけだ。ジルト……とんでもないことをしてくれたな」
外で全てを聞いていたウルバス様という構図だった。これを計画したのもエネラ姉さまだ。本当に頭が上がらない……。
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