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5話
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貴賓室で私を待っていてくれたのは、ジェームズ・ルーグナー本人だった。もちろんジェームズが出迎えてくれるとは思っていたけど、やはり驚きは隠せない。
愛犬のジョセフも尻尾を振って、ジェームズに出会えたことを喜んでいるようだった。
「もしかして、そっちの犬は……ジョセフか?」
「え、ええ……そうですね」
「そうか! ジョセフ、久しぶりだな! 大きくなったみたいで安心したよ!」
「わんわんっ!」
ジョセフはジェームズの下まで走っていくと、お手をして思い切りじゃれついていた。なんだか、私以上に懐いているような……ちょっとだけ複雑かもしれない。
「よしよし、良い子だな。それから、アリス」
「は、はい……!」
ジェームズに話しかけられ、背筋をピンと伸ばしてしまった。最初は普通に話せていたのに……今になって、公爵令息と子爵令嬢の立場の違いを感じてしまっている。そんな私の態度を見て、ジェームズは笑っていた。
「ははははっ、さっきは普通に話していたのに急に敬語になるのは、なんだか変な感じがしてしまうな。幼馴染の間柄なんだし、もっと普通に話してくれないか?」
「よ、よろしいのですか……?」
「もちろんだ。私達の間に変な格式は不要だろう?」
「で、では失礼して……ジェームズ」
「ああ、アリス。そっちの方が君らしいよ」
「あ、ありがとう……」
やや堅い印象だけれど、慣れてくれば大丈夫よねきっと。
「わうっ!」
私とジェームズとの再会……愛犬のジョセフは雄叫びで祝福してくれていた。
-------------------------------------
その後、私とジェームズは貴賓室のソファに座って話をすることにした。ジョセフは私の近くでおすわりをしていおり、偶に撫でてあげる。ジェームズ屋敷に使える使用人に出された茶菓子と紅茶を、私は戴いていた。
「6年振りか……こうして言葉にしてみると、本当に長い年月だね」
「そうね。6年……当時は私達は子供だったから、余計に長い年月に感じるわ」
「まったくだ」
6年前、私とジェームズは13歳だった。現在は19歳になり、彼の風貌もかなり変わっている。好青年という言葉がピッタリの外見になっていた。ジェームズなら公爵という立場に就いてもやっていけそうね。そんな頼りがいのある人物に変わっていた。
「でも……ジェームズが次期公爵様だなんて驚いたわ。おめでとう、と言えばいいのかしら?」
「ありがとう、アリス。自分でも実感が湧かないよ……私より頼りがいのある人物はたくさんいるはずなのに」
「いえ、19歳という若さで当主様に選ばれるのだから。ジェームズの才能だと思うわ」
「そうか……それならば嬉しいんだけどね」
ジェームズは自分が当主になることへの不安や戸惑いを隠せていないようだった。気持ちは分かる気がするけれど、彼ならばそんな不安も一気に払拭していくんでしょうね。
と、私達が会話を弾ませていた時、執事の一人が現れた。
「お楽しみのところ申し訳ありません」
なんだか誤解を招く発言な気はするけれど、ジェームズは特に何も言わずに対応した。
「どうかしたのか?」
「はい、ジェームズ様にお会いしたいという客人が参っております。如何いたしましょうか?」
「今日はアリス以外の客人は来ないはずだが……相手は誰だ?」
「はい……シーザー・カンタゴル侯爵とレイナ・グレート子爵令嬢になります」
「れ、レイナが……!?」
まさかこのタイミングで訪れるなんて……神様のいたずらだろうか?
愛犬のジョセフも尻尾を振って、ジェームズに出会えたことを喜んでいるようだった。
「もしかして、そっちの犬は……ジョセフか?」
「え、ええ……そうですね」
「そうか! ジョセフ、久しぶりだな! 大きくなったみたいで安心したよ!」
「わんわんっ!」
ジョセフはジェームズの下まで走っていくと、お手をして思い切りじゃれついていた。なんだか、私以上に懐いているような……ちょっとだけ複雑かもしれない。
「よしよし、良い子だな。それから、アリス」
「は、はい……!」
ジェームズに話しかけられ、背筋をピンと伸ばしてしまった。最初は普通に話せていたのに……今になって、公爵令息と子爵令嬢の立場の違いを感じてしまっている。そんな私の態度を見て、ジェームズは笑っていた。
「ははははっ、さっきは普通に話していたのに急に敬語になるのは、なんだか変な感じがしてしまうな。幼馴染の間柄なんだし、もっと普通に話してくれないか?」
「よ、よろしいのですか……?」
「もちろんだ。私達の間に変な格式は不要だろう?」
「で、では失礼して……ジェームズ」
「ああ、アリス。そっちの方が君らしいよ」
「あ、ありがとう……」
やや堅い印象だけれど、慣れてくれば大丈夫よねきっと。
「わうっ!」
私とジェームズとの再会……愛犬のジョセフは雄叫びで祝福してくれていた。
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その後、私とジェームズは貴賓室のソファに座って話をすることにした。ジョセフは私の近くでおすわりをしていおり、偶に撫でてあげる。ジェームズ屋敷に使える使用人に出された茶菓子と紅茶を、私は戴いていた。
「6年振りか……こうして言葉にしてみると、本当に長い年月だね」
「そうね。6年……当時は私達は子供だったから、余計に長い年月に感じるわ」
「まったくだ」
6年前、私とジェームズは13歳だった。現在は19歳になり、彼の風貌もかなり変わっている。好青年という言葉がピッタリの外見になっていた。ジェームズなら公爵という立場に就いてもやっていけそうね。そんな頼りがいのある人物に変わっていた。
「でも……ジェームズが次期公爵様だなんて驚いたわ。おめでとう、と言えばいいのかしら?」
「ありがとう、アリス。自分でも実感が湧かないよ……私より頼りがいのある人物はたくさんいるはずなのに」
「いえ、19歳という若さで当主様に選ばれるのだから。ジェームズの才能だと思うわ」
「そうか……それならば嬉しいんだけどね」
ジェームズは自分が当主になることへの不安や戸惑いを隠せていないようだった。気持ちは分かる気がするけれど、彼ならばそんな不安も一気に払拭していくんでしょうね。
と、私達が会話を弾ませていた時、執事の一人が現れた。
「お楽しみのところ申し訳ありません」
なんだか誤解を招く発言な気はするけれど、ジェームズは特に何も言わずに対応した。
「どうかしたのか?」
「はい、ジェームズ様にお会いしたいという客人が参っております。如何いたしましょうか?」
「今日はアリス以外の客人は来ないはずだが……相手は誰だ?」
「はい……シーザー・カンタゴル侯爵とレイナ・グレート子爵令嬢になります」
「れ、レイナが……!?」
まさかこのタイミングで訪れるなんて……神様のいたずらだろうか?
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