上 下
7 / 11

7話 王家の助け その1

しおりを挟む
 あれから少しの時間が経過した。お父様が王家の方々にコンタクトを取ってくれて……昔の繋がりから助けてはもらえないかという話をしたらしい。


 それから数日、ついに王家であるアンバートル王家からの回答が帰って来た。使者の方がマリーチ家に来たのだけれど、その回答は予想だにしないものだったのだ。


「えっ、向こうから来てくださるのですか……!?」

「使者の方が言うにはそのようだ。証拠としてアンバートル王家の印が入った手紙も残されて行った。手紙の内容も王家の方々が出向くというものだったよ」

「さ、左様でございますか……」


 意外過ぎる返事に私もファラウも目を丸くしてしまった。ちなみにファラウはあれから私達の屋敷に泊まってもらっている。彼からしても、王家の対応が気になると言うことで、なるべく早く知りたいので泊まらせてくれと言って来たのだ。

「なるほど、流石に過去を遡れば王家に辿り着くという話は伊達ではありませんね」

「そうよね、ファラウ……私としても驚きだわ」


 アンバートル王家は通常、貴族間の問題に関わることはしない。アンバートル王国自体が自立した国家を掲げる為の方策なのだ。それに関連して、公爵家が関わることもあまりないのだけれど……。

 事実、伯爵家クラスが王家に会うことは比較的難しかったりする。でも、今回は驚くほど順調に事が進んでいた。


「私としても驚きだよ……まさか、あのアンバートル家がこれほどスムーズに動いてくれるとは……」


 依頼をした本人であるお父様もかなり驚いているようだった。でも、これは嬉しい誤算だ。私達はあとは王家の方々が来てくれるまで待てば良いのだから。

 私はこの期間、ドール様の屋敷で泊まることはしなかった。何度か行き来はしたけれど、実家の方で仕事ができたからと嘘を吐いている。ウィルガさんがドール様と話してくれて、なんとか了承を得た形だ。

 ウィルガさんは最初は味方になれないと言っていたけれど、今では完全に味方の行動をしてくれている。まあ、ドール様にバレない程度の協力ではあるけれど。


「ウィルガさん、ファラウ……そして、お父様。本当に感謝しかできませんわ」

「何を言っている、エレナよ。これもお前の人徳というやつだ。感謝の言葉を忘れてはならないが、自信を持つことも必要だぞ?」

「はい……お父様。ありがとうございます」

「私としては、幼馴染の君に礼を言われる方がくすぐったいよ」

「まあ、ファラウったら……!」

「ははははは」


 私とファラウは同時に笑い合った。彼も全く気にしている様子はない。これ以上のお礼は、逆に負担になってしまうだろう。私はそこで止めることにした。

 そして、それから時間が過ぎて、王家の方々が屋敷を訪れる時間になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】一緒なら最強★ ~夫に殺された王太子妃は、姿を変えて暗躍します~

竜妃杏
恋愛
王太子妃のオフィーリアは、王太子の子を身に宿して幸せに暮らしていた。 だがある日、聖女リリスに夫を奪われれ、自分に不貞の濡れ衣を着せられて殺されてしまう。 夫とリリスに復讐を誓いながら死んだ……と思ったらなんと翌朝、義弟リチャードの婚約者・シャーロットになって目が覚めた! 入り込んでしまったシャーロットの記憶を頼りに、オフィーリアは奔走する。 義弟リチャードを助けるため、そして憎き二人に復讐するため、オフィーリアが周囲の人々を巻き込んで奮闘する物語です。 ※前半はシリアス展開で残虐なシーンが出てきます。 後半はギャグテイストを含みます。 R15はその保険です。苦手な方はお気をつけて下さい。

【完結】私は婚約破棄されると知っている

山葵
恋愛
私とイザーク王子との出会いは彼の誕生日お茶会。 同じ年頃の子息、令嬢が招待されたお茶会で初めて殿下を見た時は、『うわぁ~、キラキラしてる。本物の王子様だぁ~』なんて可愛い事を思ったっけ。 まさかイザーク王子と私が婚約するなんてねぇ~。 まさか私が悪役令嬢なんてねぇ~。 異世界転生させた神(?かしら)恨むわよっ! 私は絶対に悪役令嬢になんて成らないんだからねっ!!

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

(完結済)婚約破棄と叫ぶ前に

詩海猫
恋愛
「こんなそばかすだらけで不細工な女が僕の婚約者だとっ?!冗談じゃない、お断りだっ!」 __それが、婚約者と初めての顔合わせの時の第一声。 金の髪に緑の瞳の少年は確かに綺麗な顔をしていたが、人を見下す少年(クソガキ)だった。 ピンクなふわふわ髪で平民出身のヒロインが優秀な才女だったら……というパターンを書いてみたかっただけ。

婚約者から婚約破棄のお話がありました。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「……私との婚約を破棄されたいと? 急なお話ですわね」女主人公視点の語り口で話は進みます。*世界観や設定はふわっとしてます。*何番煎じ、よくあるざまぁ話で、書きたいとこだけ書きました。*カクヨム様にも投稿しています。*前編と後編で完結。

完結 愛人と名乗る女がいる

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、夫の恋人を名乗る女がやってきて……

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

処理中です...