上 下
6 / 11

6話 お父様との会話 その2

しおりを挟む
「力添えか……まあ、分かっているとは思うが、私の力では少し難しいな」

「ジーク様……やはり難しいのですか?」

「ファラウ……お父様……」

 お父様からの返答にファラウはがっかりした様子を見せていた。でも、仕方ないことなのかもしれない。なにせ相手は侯爵家だ。さらに婚約破棄に対する対策ではなく、決して婚約破棄はしないことへの対抗策になるのだから、より厳しいと言える。

 確実により上位の貴族、王族の助けは必要になってくるのだろう。でも、伯爵家でしかない私達にそれだけの繋がりは……。王家にゆかりの深い公爵家とも挨拶をしたことはあるけれど、間違っても仲が良いとは言えなかった。それだけの関係性では助けを求めることは出来ないだろう。

 むしろ、高名なジストン侯爵家に味方をする可能性の方が高いかもしれない。そういう意味では上位の方々に助けを求めるのは絶望的だと言えた。


「私だけの力では無理でしょう。しかし、希望がないわけではありません。私達家族の力をフルに使えば……可能性はあるかと」

「家族の力をフルに使うのですか?」

「その通りです、ファラウ殿」

「そ、それは一体どういう意味でしょうか?」


 ファラウ様は食い気味に話を聞いているが、私にとっても意味の分からないことだった。マリーチ伯爵家がいかに貴族の中では中堅以上だとは言っても限度がある。それに付随する家族や親戚の力を借りたところで……でも、私は困惑していた。私はそういう親戚関係に疎かったからだ。

「お父様、策はあるということでしょうか?」

「うむ、策はある。ただし、どこまで有効になるかは約束はできぬがな」

「それは構いませんが……一体、どういう策なのでしょうか?」

 間違いであっても構わない……少しでもドール様との婚約破棄に役立つことであれば。私も食い入るようにお父様の次の言葉を待った。


「我がマリーチ家は実は、元をただせば王家に源流があるのだ」

「えっ!?」

「そ、そうだったのですか……!?」


 王家との関係性がある……? そんなことは初めて聞いたことだった。まあ、私が親戚関係に疎かったのが悪いんだけれど。

「まあ、分家の跡取りの関係で今は伯爵家という立場にはなっているが、元々は現在のアンバートル王家だったのだよ。その辺りを活用し、王家に助けを求めれば……可能性はあるかもしれん」

「な、なるほど……しかし、それは可能性の話ですよね?」

「もちろん、可能性の話でしかない。アンバートル王家が今さら動いてくれるという保証はないからな。しかし、状況が状況だけに試してみる価値はあるだろう」


 お父様の提案した事柄は途方もないことのように思えた。王家を味方に付ける……雲を掴むようなことに見えてしまうけれど、今の私達にはそれに賭けるしかなかったのかもしれない……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった

岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】 「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」  シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。  そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。  アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。  それだけではない。  アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。  だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。  そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。  なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

婚約破棄されました。あとは知りません

天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。 皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。 聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。 「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」 その時… ---------------------- 初めての婚約破棄ざまぁものです。 --------------------------- お気に入り登録200突破ありがとうございます。 ------------------------------- 【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。

冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。 本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。 ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。 隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。 「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」 どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?

【完結】悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?

山咲莉亜
恋愛
「カティア・ローデント公爵令嬢!心優しい令嬢をいじめ抜き、先日は階段から突き落としたそうだな!俺はそんな悪役令嬢と結婚するつもりはない!お前との婚約を破棄し、男爵令嬢アリアと婚約することをここに宣言する!」 卒業パーティーと言う大事な場での婚約破棄。彼は生まれた時から決められていた私の婚約者。私の両親は嫌がったらしいが王家が決めた婚約、反対することは出来なかった。何代も前からローデント公爵家と彼の生まれ育ったレモーネ公爵家は敵対していた。その関係を少しでも改善させようと言う考えで仕組まれた婚約。 花嫁教育としてレモーネ家に通うも当然嫌われ者、婚約者に大切にされた覚えはなく、学園に入学してからはそこの男爵令嬢と浮気。 …………私を何だと思っているのでしょうか?今までどんなに嫌がらせを受けても悪口を言われても黙っていました。でもそれは家に迷惑をかけないため。決して貴方に好き勝手されるためではありません。浮気のことだって隠していたつもりのようですが私が気付かないわけがありません。 悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?断罪されるのは───あなたの方です。

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。 だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。 平民ごときでは釣り合わないらしい。 笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。 何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。

処理中です...