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30話 平穏な生活 ③
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「それでは、姉さま。私はライドウ皇帝陛下のところへ行ってきます」
その日の朝、ソシエからそんな報告があった。わざわざ、私の部屋を訪ねて来て……。
「皇帝陛下のところへ?」
「はい、そうです」
「念のために聞くけれど、ちゃんと許可は取ってるのよね?」
「もちろんですよ!」
「なら、いいんだけど」
私はまた、ソシエが無茶なことをしないかと心配になってしまった。と、いうより、ソシエはライドウ皇帝陛下の側室になるのよね。だったら、会いに行くのが普通ではあるけど、なんというか……自由過ぎるというか。
この国は比較的、側室にも自由な権限を与えている方だとは思うけど、ソシエの場合はその枠組みを脱して自由な気がする。
「姉さまも、ハロルド様と楽しんでくださいね」
「わかったわ……あなたが言うと、いやらしく聞こえてしまうけど」
「何を想像してるんですか……これだから、妄想のたくましい処女は……」
「むむ……!」
ちょっとカチンと来たけれど、確かにその通りなのよね……ソシエは妹だけど、側室という立場だから、既に子作りを始めているわけで……。そういう意味では、私よりも先輩だった。
私はまだ、ハロルドとは婚約しかしていないから、まだそういう行為には及んでいない。ダンテ様とは違うんだから、ハロルドが襲って来るはずもないし。
「それでは言って参ります」
「はい、いってらっしゃい。今日は戻るの?」
「いえ、宮殿で泊まることになると思います」
そっか……ていうことは、ソシエは……ああ、ダメダメ。また、変な妄想をするところだったわ。
……私って、欲求不満なのかしら?
------------------------------------------------------
「今日も良い天気ね、ハロルド」
「そうだね、シェル。穏やかな季節、天気……心が晴れて行くのを感じるよ」
詩人のような名文句? を隣に座っているハロルドが言った。私とハロルドは、私の部屋でのんびりと窓から見える景色を眺めていた。やるべき公務は一通り終わったし、今は小休止の状態だ。
「ソシエに色々と馬鹿になれるんだけど、最近……」
「彼女にか……なんとなく内容は分かるけどね」
流石はハロルド、私との意思疎通は完璧ね。私の悩みもすぐに分かってくれたみたい。とにかく、ソシエに小馬鹿にされるのは、姉という立場からも悔しいので、私はハロルドにもたれかかってみた。
「ちょ……シェル?」
「ふふ」
照れてるハロルドが可愛い。でも、婚約関係にあるんだから、このくらいは普通よね? 今後はもっと恥ずかしいことだってするんだから。その為の予行演習だと思えば、大したことないわ。
その日の朝、ソシエからそんな報告があった。わざわざ、私の部屋を訪ねて来て……。
「皇帝陛下のところへ?」
「はい、そうです」
「念のために聞くけれど、ちゃんと許可は取ってるのよね?」
「もちろんですよ!」
「なら、いいんだけど」
私はまた、ソシエが無茶なことをしないかと心配になってしまった。と、いうより、ソシエはライドウ皇帝陛下の側室になるのよね。だったら、会いに行くのが普通ではあるけど、なんというか……自由過ぎるというか。
この国は比較的、側室にも自由な権限を与えている方だとは思うけど、ソシエの場合はその枠組みを脱して自由な気がする。
「姉さまも、ハロルド様と楽しんでくださいね」
「わかったわ……あなたが言うと、いやらしく聞こえてしまうけど」
「何を想像してるんですか……これだから、妄想のたくましい処女は……」
「むむ……!」
ちょっとカチンと来たけれど、確かにその通りなのよね……ソシエは妹だけど、側室という立場だから、既に子作りを始めているわけで……。そういう意味では、私よりも先輩だった。
私はまだ、ハロルドとは婚約しかしていないから、まだそういう行為には及んでいない。ダンテ様とは違うんだから、ハロルドが襲って来るはずもないし。
「それでは言って参ります」
「はい、いってらっしゃい。今日は戻るの?」
「いえ、宮殿で泊まることになると思います」
そっか……ていうことは、ソシエは……ああ、ダメダメ。また、変な妄想をするところだったわ。
……私って、欲求不満なのかしら?
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「今日も良い天気ね、ハロルド」
「そうだね、シェル。穏やかな季節、天気……心が晴れて行くのを感じるよ」
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「ソシエに色々と馬鹿になれるんだけど、最近……」
「彼女にか……なんとなく内容は分かるけどね」
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「ちょ……シェル?」
「ふふ」
照れてるハロルドが可愛い。でも、婚約関係にあるんだから、このくらいは普通よね? 今後はもっと恥ずかしいことだってするんだから。その為の予行演習だと思えば、大したことないわ。
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