私を婚約破棄に追い込みましたけど、横の繋がりを知らないのですか?~私の妹が皇帝陛下の側室だった件~

マルローネ

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26話 ダンテ達への罰 ①

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 私とハロルドの愛の告白劇を妹のソシエと、皇帝陛下一行に見られた……私たちはとても恥ずかしい思いをして、本来なら、ソシエのいたずら心で終わるはずだったのに。


 それはなんだか、副題でしかないようだった。本題はむしろこちらであって……。


「まずは、ダンテの処遇についてだが……」

「は、はい……」


 ソシエはこの辺りは立場を弁えているのか、ちゃんと報告自体をライドウ皇帝陛下に譲っている。いたずらっぽく、ニヤニヤと笑っていたけれど……。


「ダンテの処遇は議会との話し合いの結果、島流しということに決まった」

「し、島流し……!?」

「これは……想像以上に……」


 ライドウ皇帝陛下から出た、島流しと言う言葉……私やハロルドは、とてつもなく重罪なんじゃないかと息を呑んでしまった。


「あ、違いますよ、多分。本当の意味での島流しってわけじゃないはずです」


「あ、それはそうよね……」


 私たち二人が勘違いしていることを察したソシエが、すぐにフォローの言葉を発した。このあたりは流石に、皇帝陛下の側室にまでなった子だと思う。王国内での本来の意味での島流しは、殺人や国家反逆罪に問われた人物を、離島へと隔離する手段である。


 当然、期間は無期である場合がほとんどなわけで……たまに戻って来れる人もいるらしいけれど。


「ああ、言葉が足らずに申し訳なかった。ダンテ侯爵令息は、爵位を一時的に剥奪し、島流しに利用している東の離島での勤務ということになる。ダンテの行ったことは貴族の権威を下げる行為に他ならん上に、シェル殿にも危害を加えようとしたのだからな」


「事実上の島流しということですね……罪人とは立場が違うので、一定の自由があるとはいえ」

「そうだな。それから、教会内で役に立たなかった衛兵たちも同様に、島流しという罰になった。まあ、これらを罰と称してしまうのは、普段、離島で働いている者達に失礼なんだがな」


 確かに……ダンテ様たちは罰を受ける立場にあるから仕方ないけれど、勤務地が離島になるだけとも言えるわね。それに加えて、ダンテ様は貴族の称号を一時的に剥奪されるわけか。


「……」


「姉さま? どうかされましたか?」


「ソシエ?」


 無言になっていた私を心配してか、ソシエが顔を近づけて来ていた。私は思わず我に返ってしまう。


「やはり、この程度の罪だと腹の虫が収まらないでしょうか?」


 ソシエとしては、やや不満の残る罰に収まっていると考えているようだった。どうかしら……? 最初に私とハロルドが勘違いした流刑……いわゆる、終身刑や事実上の死刑に近い罰はやり過ぎだとは思うけれど。やり過ぎというか、流石にそれはあり得ないというか。

 勤務地の大幅な強制変更が妥当な罰なのかは、私には判断できないところでもある。ただ……教会で助けてくれなかった兵士達の処遇は十分だと思うけど、ダンテ様に対してはどうだろう?


 私をアブノーマルが良いということで一方的に婚約破棄をし、教会内では激昂し、ハロルドが居なければ私はどうなっていたか分からない状況だった。人生の中で、あそこまで強烈に人間の恨みを買ったことはなかったから。ハロルド自身も決定した罰に対して、微妙な表情を浮かべている。


 可能であれば、追加で罰を下して欲しいと考えているのかな? だとしたら嬉しいかも。


「そうだ、アイミー令嬢はどうなったのでしょうか……?」


 ダンテ様に殴られ、そのまま地面に勢いよく倒された彼女……大丈夫だったのかしら?


「アイミー令嬢はある意味で、可哀想な立場にあるかもしれんな」

「えっ、どういうことでしょうか……?」


 ライドウ皇帝陛下の言葉の意味が分からなかった。確か、私が見た限りでは護衛らしき人物に助けられていたはずだけど。


「彼女は今、医療施設の方で静養中だ。顔面が骨折してしまったからな。どうも、陥没しているらしく、元には戻らないのだそうだ」

「……なんと、そんなことが……!」


 私よりも早く反応したのは、ハロルドだった。アイミー令嬢に対する同情というよりは、女性にそこまでの大けがを負わせたダンテ様に怒りを震わせている。


 それに関しては、私も全く同じ気持ちだった。
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