私を婚約破棄に追い込みましたけど、横の繋がりを知らないのですか?~私の妹が皇帝陛下の側室だった件~

マルローネ

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23話 事件簿の後始末 ①

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 こうして、教会事件簿は終幕したわけだけど……正直な話、私にとっては恐怖の1日でもあった。ハロルドの付き添いで来ていなかった場合、ダンテ様の手に掛かっていた可能性もあるのだから。


「私がこういうのもなんだけど……怖かったわ」

「済まない、シェル。君に怖い思いをさせてしまって……」


「やめてよ、ハロルド。あなたには感謝しても仕切れないくらいの恩があるんだから」


「いや、そんな……当然のことをしたまでさ」


 ああ……ハロルドのこの言葉を聞くだけで、私は癒されてしまう……。白馬の王子様ならぬ、白馬の侯爵令息様といったところかしら?


 そんなことを考えていると、ハロルドは私を力強く抱きかかえてくれた。やっぱりハロルドって強かったんだ……私の力なんかでは、とても抗えない領域……いえ、別に抗ったりもしないけど。


「君を守ることが出来て……本当に良かったよ。もしも、シェルに何かあったら、今頃、僕は後悔の念で自決していたかもしれない……」

「は、ハロルド……!」


 そ、そこまで私のことを……! そして、彼の顔……と、いうより唇が私の顔に近づいて来る。これはあれよね? 流石の私でも彼が何をしようとしているのかはすぐに理解できた。この状況で、ハロルドの決意を無下にする程、愚かな性格はしていない。私は静かに瞳を閉じた……。





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 それからどのくらいの時間が経っただろうか……1分くらいかな? でも、私には1時間にも感じられる時間だったり……。


「……」


「……」


 熱い抱擁からのキスを終え、私とハロルドは気まずい雰囲気になっていた。抱擁だけならまだしも……キスまでしちゃったし……しかも、侯爵令息様と!


「あ、あの……」

「あ、な、なにかな?」

「ハロルドからどうぞ……!」

「いや……シェルからどうぞ! レディファーストだよ……!」


 レディファースト……女性を優先する言葉ではあるけれど、この場でその言葉を出すのは、ハロルドの頭の回転の早さを物語っていると思う。こうなっては、私は何も言うことができなくなってしまうし……。


「ハロルド……ずるい……」

「な、なんのことかなぁ……?」

「もう……!」


 ハロルドは顔を真っ赤にしながら、私から完全に視線を逸らしていた。いいわよ、あなたがそういう態度なら、私にだって考えがあるんだから……!


「ハロルド!」

「な、なにかな、シェル……?」


「私はあなたのことが好きです! 結婚してください!」


 予期せぬカウンターパンチ……私の一世一代の勇気に、ハロルドは完全に固まっていた。
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