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21話 教会事件簿 ⑥
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「きゃあ……!」
「アイミー令嬢!」
ダンテ様に殴られて、アイミー令嬢はそのまま勢いよく地面に倒れこんだ。私は自然と彼女の名前を叫んでいた。
「シェル……お前は、お前だけは……許さん!」
凄まじい勢いで私を凝視しているダンテ様。私は恐怖の余り、声を出せなくなってしまった。こんなにも恐ろしいダンテ様を見るのはもちろん初めてだし、こんな場所で、叫び散らすなんていうのも予想外だったから。
まるで、テロを目的とした輩が皇帝陛下達の命を狙って教会襲撃を実行したかのような雰囲気だ。
ダンテ様の激昂は、それくらい「あり得ない」ことだった。
周囲の貴族たちも、見たことのないダンテ様の態度に言葉を失っている……先ほど、助けてもらっていた平民に関しても同じだった。私は捕まれば絞め殺されてしまうんじゃないか……そう思わせるほどの迫力が、ダンテ様にはあった。
「ダンテ殿……いい加減にしておけ。これ以上は、冗談では済まないぞ」
「ハロルド……貴様、邪魔をするつもりか? どけっ!」
私の前にハロルドが立ちはだかってくれた。私を守ろうとしてくれているようだけれど、ダンテ様は全く怯む様子を見せていない。周囲に居る衛兵や護衛たちも、どうしたらいいのか分からず、立ち尽くしているようだ。
……まったく使えない……どうするのかなんて、一目瞭然のはずなのに。
「シェルは僕の大切な人だ……傷つけるというのなら、容赦はしないよ?」
「大切な人だと? 俺の人生をめちゃくちゃにしておいて、何を言ってるんだ……?」
怒りに満ちたダンテ様の言葉……最早、貴族ではなく、ただのチンピラにしか見えない……。
「君の場合は身から出た錆だろう? 自業自得……元々はどちらが先に仕掛けたことなのかを、良く考えることだな」
「う、うるさい……! そんなことはどうでもいい! 問題はそいつが、私をこの教会内でコケにしたことだ!」
「最早、話が通用しないか……」
子供の理論武装だろうか……? ダンテ様はおそらく善悪の区別や、皇帝陛下が間近に居ることも忘れている。周囲の懇意にしていたであろう貴族たちの表情も、とても冷めきっていた……。これでは敵を作ってしまうだけなのに……素直に謝罪をしていた方が、どれだけダメージが少なかったことか。
彼は侯爵令息なんだし、賠償金なんて簡単に払えるだろうに。
「うおおおおお!!」
ダンテ様はなりふり構うことが出来なくなったのか、ハロルドに特攻を開始していた。おそらく、自分でも何をしているのか分かっていないのかもしれない……。
「ハロルド!」
ハロルドは私の目の前をガードしている。このままでは、ハロルドが私の代わりに大怪我をしてしまう……私はなんとしてもそれは避けたかった。だから、私がせめて身代わりに……と思った時、ダンテ様の身体は天空を優雅に舞い、そのまま地面へと打ち付けられていた……。
「がっ……!」
「教会の地面は固い……あばら骨が折れているかもしれないから、あまり動かない方がいいよ」
完全なる正当防衛だけれど……ハロルドは涼しい顔をして、ダンテ様を投げつけてしたのだった。えっ、ハロルドってこんなに強かったの……?
「アイミー令嬢!」
ダンテ様に殴られて、アイミー令嬢はそのまま勢いよく地面に倒れこんだ。私は自然と彼女の名前を叫んでいた。
「シェル……お前は、お前だけは……許さん!」
凄まじい勢いで私を凝視しているダンテ様。私は恐怖の余り、声を出せなくなってしまった。こんなにも恐ろしいダンテ様を見るのはもちろん初めてだし、こんな場所で、叫び散らすなんていうのも予想外だったから。
まるで、テロを目的とした輩が皇帝陛下達の命を狙って教会襲撃を実行したかのような雰囲気だ。
ダンテ様の激昂は、それくらい「あり得ない」ことだった。
周囲の貴族たちも、見たことのないダンテ様の態度に言葉を失っている……先ほど、助けてもらっていた平民に関しても同じだった。私は捕まれば絞め殺されてしまうんじゃないか……そう思わせるほどの迫力が、ダンテ様にはあった。
「ダンテ殿……いい加減にしておけ。これ以上は、冗談では済まないぞ」
「ハロルド……貴様、邪魔をするつもりか? どけっ!」
私の前にハロルドが立ちはだかってくれた。私を守ろうとしてくれているようだけれど、ダンテ様は全く怯む様子を見せていない。周囲に居る衛兵や護衛たちも、どうしたらいいのか分からず、立ち尽くしているようだ。
……まったく使えない……どうするのかなんて、一目瞭然のはずなのに。
「シェルは僕の大切な人だ……傷つけるというのなら、容赦はしないよ?」
「大切な人だと? 俺の人生をめちゃくちゃにしておいて、何を言ってるんだ……?」
怒りに満ちたダンテ様の言葉……最早、貴族ではなく、ただのチンピラにしか見えない……。
「君の場合は身から出た錆だろう? 自業自得……元々はどちらが先に仕掛けたことなのかを、良く考えることだな」
「う、うるさい……! そんなことはどうでもいい! 問題はそいつが、私をこの教会内でコケにしたことだ!」
「最早、話が通用しないか……」
子供の理論武装だろうか……? ダンテ様はおそらく善悪の区別や、皇帝陛下が間近に居ることも忘れている。周囲の懇意にしていたであろう貴族たちの表情も、とても冷めきっていた……。これでは敵を作ってしまうだけなのに……素直に謝罪をしていた方が、どれだけダメージが少なかったことか。
彼は侯爵令息なんだし、賠償金なんて簡単に払えるだろうに。
「うおおおおお!!」
ダンテ様はなりふり構うことが出来なくなったのか、ハロルドに特攻を開始していた。おそらく、自分でも何をしているのか分かっていないのかもしれない……。
「ハロルド!」
ハロルドは私の目の前をガードしている。このままでは、ハロルドが私の代わりに大怪我をしてしまう……私はなんとしてもそれは避けたかった。だから、私がせめて身代わりに……と思った時、ダンテ様の身体は天空を優雅に舞い、そのまま地面へと打ち付けられていた……。
「がっ……!」
「教会の地面は固い……あばら骨が折れているかもしれないから、あまり動かない方がいいよ」
完全なる正当防衛だけれど……ハロルドは涼しい顔をして、ダンテ様を投げつけてしたのだった。えっ、ハロルドってこんなに強かったの……?
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