私を婚約破棄に追い込みましたけど、横の繋がりを知らないのですか?~私の妹が皇帝陛下の側室だった件~

マルローネ

文字の大きさ
上 下
20 / 32

20話 教会事件簿 ⑤

しおりを挟む
 私がダンテ様の前で彼の性癖を暴露、ダンテ様は叫びながらその場に崩れ落ちる……この辺りまでが、教会事件簿と呼ばれるようになる出来事の詳細……なんだけど、これには続きがあったりする。



「アイミー様はダンテ様の性癖を理解なさっていたんですか?」


「うっ……私まで蔑むつもり? あなたは……!」


 侯爵令嬢であるアイミー令嬢は私よりも上の立場の存在。睨んではくるけれど、ハロルドや皇帝陛下が背後に立っているので、強くは出れない印象だった。


 蔑む……? 別にそんなつもりなんてないわ。


「いえ、決してそういうつもりではありません。ですが、見た通り、ダンテ様は非常にわがままな性格をされていらっしゃいます。アイミー様も気を付けてお付き合いいただければ、と思っております」


「……わ、わかってるわよ……!」


「そうですか、それならば安心です。それでは」


 私はアイミー様に深々と頭を下げた。それから彼女とは視線を合わせないように振り向いた。そこにはハロルドの視線がある。


「お疲れ様、シェル。格好良かったよ」

「ありがとう、ハロルド」

「気分はどうだい?」

「うん、大丈夫だと思う。まだ、ドキドキしているけれど……」


 このドキドキは緊張感が解放されたから、胸が高鳴っている証拠みたいなものだ。


「さて、これで一件落着か……」


 ライドウ皇帝陛下が低い声で静かに言った。先ほどまでざわついていた教会内だけれど、いつの間にか静寂に包まれている。ダンテ様の本性が分かり、慌てふためいていた人々も落ち着いて来たんだと思う。


 張本人の私が冷静に事を運んだから、それにつられているとも言えるだろうけど。私の心の傷は、なかなか消えないけれど、この一件で大分、癒えてきたと思う。


 妹のソシエも笑っている……一件落着、そうなるはずだったんだけれど……。


「許さない……絶対に許さないぞ、シェル!!」


「なっ……!」


 静寂に包まれていた教会内。ダンテ様の予期せぬ怒号がこだますることになった。これだけは本当に予想外……。




「お前は、私の人生を亡ぼす気なのか? こんなことをして、何が楽しいのだ!?」


 先ほどまで叫んでいたダンテ様だけれど、今の彼の叫びはレベルが違う。完全に逆恨みでしかないけれど、今にも私を殴りつけそうな、そんな雰囲気さえはらんでいた。


 背後に逃げて行きたけれど、貴族たちが集まっているから、ダンテ様と十分な距離を取ることが難しい。


「ちょ、ちょっと、これ以上は本当に不味いと思うわよっ!?」

「うるさい!」


 止めに入ろうとしたアイミー令嬢を、ダンテ様は殴りつけ地面に倒した。そして、再び私に視線を向ける。怖い……これほどまでにダンテ様に恐怖したのは、後にも先にもこれが初めてだった……。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。

十条沙良
恋愛
いくら謝っても無理です。

聖女がいなくなった時……

四季
恋愛
国守りの娘と認定されたマレイ・クルトンは、十八を迎えた春、隣国の第一王子と婚約することになった。 しかし、いざ彼の国へ行くと、失礼な対応ばかりで……。

【完結】本当に私と結婚したいの?

横居花琉
恋愛
ウィリアム王子には公爵令嬢のセシリアという婚約者がいたが、彼はパメラという令嬢にご執心だった。 王命による婚約なのにセシリアとの結婚に乗り気でないことは明らかだった。 困ったセシリアは王妃に相談することにした。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

処理中です...