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20話 教会事件簿 ⑤
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私がダンテ様の前で彼の性癖を暴露、ダンテ様は叫びながらその場に崩れ落ちる……この辺りまでが、教会事件簿と呼ばれるようになる出来事の詳細……なんだけど、これには続きがあったりする。
「アイミー様はダンテ様の性癖を理解なさっていたんですか?」
「うっ……私まで蔑むつもり? あなたは……!」
侯爵令嬢であるアイミー令嬢は私よりも上の立場の存在。睨んではくるけれど、ハロルドや皇帝陛下が背後に立っているので、強くは出れない印象だった。
蔑む……? 別にそんなつもりなんてないわ。
「いえ、決してそういうつもりではありません。ですが、見た通り、ダンテ様は非常にわがままな性格をされていらっしゃいます。アイミー様も気を付けてお付き合いいただければ、と思っております」
「……わ、わかってるわよ……!」
「そうですか、それならば安心です。それでは」
私はアイミー様に深々と頭を下げた。それから彼女とは視線を合わせないように振り向いた。そこにはハロルドの視線がある。
「お疲れ様、シェル。格好良かったよ」
「ありがとう、ハロルド」
「気分はどうだい?」
「うん、大丈夫だと思う。まだ、ドキドキしているけれど……」
このドキドキは緊張感が解放されたから、胸が高鳴っている証拠みたいなものだ。
「さて、これで一件落着か……」
ライドウ皇帝陛下が低い声で静かに言った。先ほどまでざわついていた教会内だけれど、いつの間にか静寂に包まれている。ダンテ様の本性が分かり、慌てふためいていた人々も落ち着いて来たんだと思う。
張本人の私が冷静に事を運んだから、それにつられているとも言えるだろうけど。私の心の傷は、なかなか消えないけれど、この一件で大分、癒えてきたと思う。
妹のソシエも笑っている……一件落着、そうなるはずだったんだけれど……。
「許さない……絶対に許さないぞ、シェル!!」
「なっ……!」
静寂に包まれていた教会内。ダンテ様の予期せぬ怒号がこだますることになった。これだけは本当に予想外……。
「お前は、私の人生を亡ぼす気なのか? こんなことをして、何が楽しいのだ!?」
先ほどまで叫んでいたダンテ様だけれど、今の彼の叫びはレベルが違う。完全に逆恨みでしかないけれど、今にも私を殴りつけそうな、そんな雰囲気さえはらんでいた。
背後に逃げて行きたけれど、貴族たちが集まっているから、ダンテ様と十分な距離を取ることが難しい。
「ちょ、ちょっと、これ以上は本当に不味いと思うわよっ!?」
「うるさい!」
止めに入ろうとしたアイミー令嬢を、ダンテ様は殴りつけ地面に倒した。そして、再び私に視線を向ける。怖い……これほどまでにダンテ様に恐怖したのは、後にも先にもこれが初めてだった……。
「アイミー様はダンテ様の性癖を理解なさっていたんですか?」
「うっ……私まで蔑むつもり? あなたは……!」
侯爵令嬢であるアイミー令嬢は私よりも上の立場の存在。睨んではくるけれど、ハロルドや皇帝陛下が背後に立っているので、強くは出れない印象だった。
蔑む……? 別にそんなつもりなんてないわ。
「いえ、決してそういうつもりではありません。ですが、見た通り、ダンテ様は非常にわがままな性格をされていらっしゃいます。アイミー様も気を付けてお付き合いいただければ、と思っております」
「……わ、わかってるわよ……!」
「そうですか、それならば安心です。それでは」
私はアイミー様に深々と頭を下げた。それから彼女とは視線を合わせないように振り向いた。そこにはハロルドの視線がある。
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「許さない……絶対に許さないぞ、シェル!!」
「なっ……!」
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背後に逃げて行きたけれど、貴族たちが集まっているから、ダンテ様と十分な距離を取ることが難しい。
「ちょ、ちょっと、これ以上は本当に不味いと思うわよっ!?」
「うるさい!」
止めに入ろうとしたアイミー令嬢を、ダンテ様は殴りつけ地面に倒した。そして、再び私に視線を向ける。怖い……これほどまでにダンテ様に恐怖したのは、後にも先にもこれが初めてだった……。
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