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8話 ダンテの再婚約 ②
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ダンテ・シュール侯爵令息様は、アイミー・ケリス侯爵令嬢と新たに婚約している……それを街にある、神聖な教会で発表する算段……私としては信じられないことだった。
おそらくその場には、ダンテ様と懇意にしている貴族の方々も居るはず……その方々には、事実を伝えるとは思えない。婚約破棄自体は伝えたとしても、上辺だけの事情をでっちあげるはず……。
私はとても許すことが出来ないでいた……。うん、私はハロルドからの勇気づけもあり、気持ちが奮い立ってはいたんだけれど……。
「まあまあまあ……姉さまと、ハロルド様が……!」
私とハロルドがくっついていた所を、妹のソシエに見られてしまった……迂闊だったわ……。
「うふふふふ、確かにそういう雰囲気は前々から感じてはいましたが……なるほどなるほど」
「ちょっ、ちょっとソシエ……変なことを言わないで……!」
私は恥ずかしさと、ハロルドに迷惑を掛けたくないという思いから、ソシエに叱責を行った。ソシエはそんな私の叱責を軽く受け流していたけれど。
「ああ、そうだね……僕なんかでは、シェルの相手としては申し訳ないよ……」
「ん? ハロルド……?」
なんだか、ハロルドの態度が気になってしまう……とても、落ち込んでいるような……。
「ど、どうしたの、ハロルド……?」
「いや、いいんだよ、シェル。なんでもないさ」
「ええっ……?」
私は落ち込んでいるハロルドを前にして、戸惑ってしまっていた。なにか大きな勘違いを与えてしまっている気がするわ。私は咄嗟に誤解を解くことにした。
「違うのよ、ハロルド……! 別にあなたのことが嫌とかそういうことではなくて……むしろ、嬉しいっていうか……!」
あ……思わず口が滑ってしまったかも……。でもまあ、本当のことだし、構わないわよね。
「シェル……? 本当かい……?」
「え、ええ……ハロルドのことはその、えと……なんというか……」
流石に「好き」という言葉を面と向かって言うことは出来なかったけれど、なんとなく伝わったようね。ハロルドの表情がそれを物語っていた。彼の顔が赤くなっていたから……。
「な、なんだか照れ臭いな……ははは……」
「う、うん……そうね……」
「あはは……」
「はは……」
なんだろうこの雰囲気……私は婚約破棄されたばかりで、悲しみの渦中にあるのが普通なのに……。それだけ、ダンテ様の婚約破棄理由が身勝手だったからかしら? ハロルドとの時間に幸せを感じるわ。
それをニンマリとした表情で見ているソシエは、鼻につくけれど……。
「そろそろ、本題の話をさせていただいてよろしいですか? それとも、もうちょっとお二人で過ごします?」
「ソシエ……!」
「うふふふふ……」
まったくこの子は……本題っていうのは、ダンテ様の婚約発表のことよね? それなら、すぐにでも行ってほしいわ。
「本題に行ってもらえる? ソシエ」
「はい、畏まりました」
私の言葉に呼応するように、ソシエは仕事モードに入った。さっきまでの様子が嘘みたいに、真剣な表情になっている。流石は皇帝陛下の側室になれた妹といったところかしら?
教会での婚約発表の話はソシエも加わり、進められることになった。
おそらくその場には、ダンテ様と懇意にしている貴族の方々も居るはず……その方々には、事実を伝えるとは思えない。婚約破棄自体は伝えたとしても、上辺だけの事情をでっちあげるはず……。
私はとても許すことが出来ないでいた……。うん、私はハロルドからの勇気づけもあり、気持ちが奮い立ってはいたんだけれど……。
「まあまあまあ……姉さまと、ハロルド様が……!」
私とハロルドがくっついていた所を、妹のソシエに見られてしまった……迂闊だったわ……。
「うふふふふ、確かにそういう雰囲気は前々から感じてはいましたが……なるほどなるほど」
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私は恥ずかしさと、ハロルドに迷惑を掛けたくないという思いから、ソシエに叱責を行った。ソシエはそんな私の叱責を軽く受け流していたけれど。
「ああ、そうだね……僕なんかでは、シェルの相手としては申し訳ないよ……」
「ん? ハロルド……?」
なんだか、ハロルドの態度が気になってしまう……とても、落ち込んでいるような……。
「ど、どうしたの、ハロルド……?」
「いや、いいんだよ、シェル。なんでもないさ」
「ええっ……?」
私は落ち込んでいるハロルドを前にして、戸惑ってしまっていた。なにか大きな勘違いを与えてしまっている気がするわ。私は咄嗟に誤解を解くことにした。
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あ……思わず口が滑ってしまったかも……。でもまあ、本当のことだし、構わないわよね。
「シェル……? 本当かい……?」
「え、ええ……ハロルドのことはその、えと……なんというか……」
流石に「好き」という言葉を面と向かって言うことは出来なかったけれど、なんとなく伝わったようね。ハロルドの表情がそれを物語っていた。彼の顔が赤くなっていたから……。
「な、なんだか照れ臭いな……ははは……」
「う、うん……そうね……」
「あはは……」
「はは……」
なんだろうこの雰囲気……私は婚約破棄されたばかりで、悲しみの渦中にあるのが普通なのに……。それだけ、ダンテ様の婚約破棄理由が身勝手だったからかしら? ハロルドとの時間に幸せを感じるわ。
それをニンマリとした表情で見ているソシエは、鼻につくけれど……。
「そろそろ、本題の話をさせていただいてよろしいですか? それとも、もうちょっとお二人で過ごします?」
「ソシエ……!」
「うふふふふ……」
まったくこの子は……本題っていうのは、ダンテ様の婚約発表のことよね? それなら、すぐにでも行ってほしいわ。
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「はい、畏まりました」
私の言葉に呼応するように、ソシエは仕事モードに入った。さっきまでの様子が嘘みたいに、真剣な表情になっている。流石は皇帝陛下の側室になれた妹といったところかしら?
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