私を婚約破棄に追い込みましたけど、横の繋がりを知らないのですか?~私の妹が皇帝陛下の側室だった件~

マルローネ

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2話 婚約破棄をされたシェル ②

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「姉さま、どうかなさいましたか?」

「ソシエ……いえ、なんでもないわ……」


 私は貴族街にあるエドガー家の屋敷に戻っていた。私室でうなだれていたのだけれど、そこに妹のソシエが来ている。私のことを心配してか、先ほどから声を掛けて来ていた。



「姉さま、元気がありませんわ。本日はダンテ様とご一緒だったと伺っておりますが……もしかして、何かあったのですか?」


 流石は勘の良さに長けているソシエ……彼女は17歳という若さだけれど、ライドウ・イグンシム皇帝陛下の側室という立場にある。つまりは私よりも立場は上なわけで……公共の場ではむしろ、敬語を使うべき存在ということ。今は、エドガー家の屋敷内なので、通常の姉妹関係に戻っているけれど……。


「心配してくれるのはありがたいけれど、何もないわ……」

「本当ですか? 私に心配をかけまいと思っているなら、正確に話して頂きたいのですが……」


 流石にソシエは勘が鋭いわね……まるで、私の心の中を全て見透かしているような……そんな気さえしてしまうわ。確かにここでシラを切ったとしても、最終的には情報は流れてくるわけだし……隠してもあまり意味を成さないわね。

 ソシエの追求に観念した私は真実を話すことにした。


「実は……婚約破棄をダンテ様に言い渡されてしまって……」

「こ、婚約破棄ですか……!?」

「ええ……そうなの」


 ソシエは私の言葉を、一字一句聞き逃すまいと真剣な表情になっていた……。そんな彼女からは、怖さすら感じてしまう。



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 私はダンテ様に言われたことを全て、妹のソシエに話した。明らかにソシエの雰囲気が変化している……。


「なるほど……そんなことがあったんですね……」


「ええ、そうだけれど……。ソシエ? 表情が怖いわよ? もう少し朗らかにできないかしら?」


「あ、ごめんなさい姉さま……姉さまの前でする表情ではありませんでした」

「いえ、それはいいんだけど……」


 私の指摘に合わせるように、ソシエは可愛らしい笑顔を私に見せてくれる。でも、それは明らかに作られた笑顔で……心の中の焔は煮えたぎっているような……。


「姉さま、私は少々出かけて参ります。帰りは遅くなるかもしれませんので、お父様たちにお伝えいただけますか?」

「え? ええ……それは構わないけれど……」

「ありがとうございます、姉さま」


 ソシエの圧倒的な雰囲気は、姉である私でさえも恐怖を感じるほどだった。彼女が何をしようとしているのか……今はまだ、わかっていない。
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