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事件②
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何の音だ。とてつもない音がした。驚きと恐怖で一瞬心臓が止まりかけた。震える体を無理やりベットから起こす。部屋から出て、1階へと向かおうとした。
が、階段の前で立ち尽くした。階段からトラックのフロントガラスが見えたのだ。
トラックが突っ込んだのか?なんで?どうすればいいんだ?あれ、父は?母は?え?
頭がパニックになり、その場に座り込んだ。
全身が震えていた。首から上の血液が全て無くなっていく勢いで血の気が引いていった。
「母さん!」
父の声だ。
「母さん、大丈夫か!?どこにいるんだ?
救急車は呼んだぞ!絶対助けるからな!」
父は無事だ。そして母は無事ではないのか。助けないと。でもどうやってここから降りよう。僕は、足をケガしないように靴下を二重にはき、降りることを試みた。救急車の音が遠くで聞こえる。きっと大丈夫だ。助かるはずだ。そしてなんとか1階に降りることに成功した。トラックの運転手は気を失っているようだ。母はどこだ。ふと横を見ると、父がいた。ただ立っていた。突っ立ってる場合じゃないだろう。僕は口を開こうとした。その時、父が崩れ落ちた。
父が突っ立って見ていたのは、母の左腕だった。
再び味わう、あの底なし沼の様な絶望感と恐怖感。ただ、前回と違うのは、底に限らず広さも限りがないということである。逃げ場も無く、消えもしないであろう大きな沼が、今でさえ捉えきれない面積を、心の中で着々と広げていった。
父が突然立ち上がった。僕には気付きもせず、どこを見ているのかよく分からない瞳で、目の前を通ってトラックの方へ歩いていく。フロントガラスの割れてヒビの入った部分を拳で砕いて穴を開け、ガラスの欠片が刺さった手で運転手の首元へ手を伸ばし始めた。何をしようとしているかは明らかだ。
「父…さん…?」
蚊の鳴くような、しかしこの空間でしっかりと届く声だった。
父の動きが止まり、ゆっくりと振り返った。
父が僕と向き合った瞬間、父の焦点がゆっくりと僕の目と合っていった。そして、その目から、ポツリポツリと涙が溢れ出した。全身から力が抜けたように父はその場で倒れ込み、子供のように大きな声で泣いた。
僕は目の前の現実を受け入れることができず、ショックでその場で気を失った。
倒れる間際、レスキュー隊のライトが家の中を照らし、母の左の薬指と、父の左手の薬指が、一瞬光ったのが見えた。
そして、脳裏にあの声が蘇った。
「そして、お前は知っていく。如何に命が脆い物であるかを」
が、階段の前で立ち尽くした。階段からトラックのフロントガラスが見えたのだ。
トラックが突っ込んだのか?なんで?どうすればいいんだ?あれ、父は?母は?え?
頭がパニックになり、その場に座り込んだ。
全身が震えていた。首から上の血液が全て無くなっていく勢いで血の気が引いていった。
「母さん!」
父の声だ。
「母さん、大丈夫か!?どこにいるんだ?
救急車は呼んだぞ!絶対助けるからな!」
父は無事だ。そして母は無事ではないのか。助けないと。でもどうやってここから降りよう。僕は、足をケガしないように靴下を二重にはき、降りることを試みた。救急車の音が遠くで聞こえる。きっと大丈夫だ。助かるはずだ。そしてなんとか1階に降りることに成功した。トラックの運転手は気を失っているようだ。母はどこだ。ふと横を見ると、父がいた。ただ立っていた。突っ立ってる場合じゃないだろう。僕は口を開こうとした。その時、父が崩れ落ちた。
父が突っ立って見ていたのは、母の左腕だった。
再び味わう、あの底なし沼の様な絶望感と恐怖感。ただ、前回と違うのは、底に限らず広さも限りがないということである。逃げ場も無く、消えもしないであろう大きな沼が、今でさえ捉えきれない面積を、心の中で着々と広げていった。
父が突然立ち上がった。僕には気付きもせず、どこを見ているのかよく分からない瞳で、目の前を通ってトラックの方へ歩いていく。フロントガラスの割れてヒビの入った部分を拳で砕いて穴を開け、ガラスの欠片が刺さった手で運転手の首元へ手を伸ばし始めた。何をしようとしているかは明らかだ。
「父…さん…?」
蚊の鳴くような、しかしこの空間でしっかりと届く声だった。
父の動きが止まり、ゆっくりと振り返った。
父が僕と向き合った瞬間、父の焦点がゆっくりと僕の目と合っていった。そして、その目から、ポツリポツリと涙が溢れ出した。全身から力が抜けたように父はその場で倒れ込み、子供のように大きな声で泣いた。
僕は目の前の現実を受け入れることができず、ショックでその場で気を失った。
倒れる間際、レスキュー隊のライトが家の中を照らし、母の左の薬指と、父の左手の薬指が、一瞬光ったのが見えた。
そして、脳裏にあの声が蘇った。
「そして、お前は知っていく。如何に命が脆い物であるかを」
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