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44元魔王は墓を掘る。
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「ねぇルイン……その山は……なに?」
「おはようラフィ。よく眠れたか?」
東の空が白み始めると、ラフィが起きてきた。
僕は悪党を手厚く埋葬するべく、穴を掘って今しがた埋め終わったところだ。
「なに、ただの墓さ」
「……いったいアタイが寝ている間に、何があったのさ」
「特に何も? まぁよくあることだ」
森や人気の無い夜だと悪党はどこからともなく湧いてくる。
前はそういった奴らで、覚えた神聖魔法の試し打ちをしたものだ。
ラフィが起きて暫くすると、小屋から御者も起きてきた。
朝食は各自でというのがこの乗合馬車の仕様らしく、御者は自分の分の食事を用意しはじめた。
そしてラフィと同じく、さきほど僕が作った土の山が気になったらしい。
「あの……あれはいったい?」
「墓だ。彼の仲間のな」
僕はひとりだけ生かしておいた。もし賞金首だった場合、この男が証人になってくれるだろう。
違えばまぁ、仲間と同じように地獄へ送ってやるだけだ。
続々と起きて来た乗客たちも、その都度墓を見て唖然とする。
こんなことならもっと目立たない場所に墓を作るんだった。いや、寧ろ炎の魔法で焼却すればよかったのか。
ここのところ、神聖魔法ばかり使っているが、実はこの魔法、対人には効果が薄い。
まぁ当たり前か。元々は人を癒したり、支援するのが目的の魔法なのだから。
それでも聖属性を拳に付与し殴れば、対人攻撃として使えなくもない。
うん。これからは神聖魔法に拘らず、臨機応変に使い分けよう。
もちろん対魔物相手なら、神聖魔法が抜群に効果がある。
思う存分、神聖魔法を披露してやろう。
全員の食事が終われば、直ぐにでも馬車は出発するという。
魂の抜け殻のようになった夜盗を縄で縛りあげ、乗合馬車の屋根に括り付ければいざ出発!
昨日の昼過ぎに出発した馬車は、今日の昼前には目的地のオムーアへと到着した。
田園風景の広がるこの地は、葡萄や林檎を栽培で豊かなのだという。
「葡萄か。今は収穫時期ではないようだな」
「あれって秋の果物だろ? 林檎はその後だっけ?」
どことなく弾むようなラフィの声。
ポッソが以前言っていたな。
女子は果物やスィーツに目がない――と。
女らしくないなどと自分で言っておきながら、ラフィも立派な女子ではないか。
「しかし依頼は家畜運搬の護衛だろう?」
「うん、そうだね。まずは村長さんの家に行こう」
と言ってもどの家が村長宅なのか分からない。
村人に聞きながら一軒の家へと辿り着く。
「僕の実家のある村とは大違いだな。この村の家々は随分と造りがしっかりとしている」
「アタイの村とも大違い。もっとこう……壁板には隙間があって、屋根に穴が空いてるなんて当たり前って感じだけど」
「屋根の穴は塞ごう。雨漏りなんてもんじゃ済まないぞ」
屋根に穴のある家はさすがに無いが、隙間風が入り込みそうな家ならある。
いや、あったと言うべきか。
ここ一年でアルファート領にある村の家も修繕し、だいぶん住みやすくはなっているはずだ。
だがこの村の家はどれも立派に見える。
木材だけではなく、壁の下半分は煉瓦で補強されて見た目も美しい。
何よりどの家も同じようなデザインで、葡萄畑が奥に広がる景観に、実にマッチしていた。
「おや、お客様ですかな?」
男の声がして振り向くと、美味しい物をたらふく食べていそうな中年男性が立っていた。
「王都のギルドに張り出された依頼を見てやって来た」
「おぉおぉ。ようやっと護衛の冒険者さまが来てくださいましたか。さあどうぞ。中へお入りください」
どうやらこの男が村長らしい。
「王都の肉加工業者に、豚と牛を合わせて三十五頭届けます。数が多いので二往復する予定でして。家畜は村人が世話をしますので、お二人は護衛をお願いします」
「家畜を狙う夜盗がいるのか?」
揉み手をする村長の話を聞きながら、疑問に思ったことを尋ねてみた。
食用として奪うのか、それとも換金するためなのか。
「まぁ夜盗よりも、獣に襲われたり、場合によっては魔物が狙うこともありますので」
「あぁなるほど。肉を欲するのは、何も人だけではなかったな」
「その通りです。報酬のほうは家畜を売った金額の5%で。ですので、一匹も殺されずに送り届けられれば報酬は上がります」
成功報酬というわけか。確かに金額固定で、無事に届けられる家畜が半数以下となると、村の損失は大きいだろう。
「村長さん。家畜はどうやって運ぶんです?」
ラフィの質問に村長の表情が曇る。
「豚は荷車で、けど牛は……」
「歩かせるのか?」
「はい……」
まぁそうだろう。牛を乗せて荷車を走らせるとなると、一台につき三頭ぐらいが限界か。
荷台を大きくし、多頭引きにしても限界はある。
それに馬は貴重だし、効果だ。いくら裕福な農村だと言っても、家畜の運搬だけに馬を数十頭も飼えぬだろうな。
「二往復かぁ。王都までどのくらい掛かります?」
「お、往復で四日と言ったところでしょうか。もちろん帰りは荷下ろしをして軽くなった分、早くこちらへ戻ってこれます」
「一瞬だ」
「「え?」」
ラフィと村長が呆けた顔で僕を見た。
王都は既に僕の記憶《デバイス》に刻まれた。
空間転移の魔法で一瞬で行ける。もちろん家畜含めて。
その為に特大の魔法陣を描く必要はあるが。
「おはようラフィ。よく眠れたか?」
東の空が白み始めると、ラフィが起きてきた。
僕は悪党を手厚く埋葬するべく、穴を掘って今しがた埋め終わったところだ。
「なに、ただの墓さ」
「……いったいアタイが寝ている間に、何があったのさ」
「特に何も? まぁよくあることだ」
森や人気の無い夜だと悪党はどこからともなく湧いてくる。
前はそういった奴らで、覚えた神聖魔法の試し打ちをしたものだ。
ラフィが起きて暫くすると、小屋から御者も起きてきた。
朝食は各自でというのがこの乗合馬車の仕様らしく、御者は自分の分の食事を用意しはじめた。
そしてラフィと同じく、さきほど僕が作った土の山が気になったらしい。
「あの……あれはいったい?」
「墓だ。彼の仲間のな」
僕はひとりだけ生かしておいた。もし賞金首だった場合、この男が証人になってくれるだろう。
違えばまぁ、仲間と同じように地獄へ送ってやるだけだ。
続々と起きて来た乗客たちも、その都度墓を見て唖然とする。
こんなことならもっと目立たない場所に墓を作るんだった。いや、寧ろ炎の魔法で焼却すればよかったのか。
ここのところ、神聖魔法ばかり使っているが、実はこの魔法、対人には効果が薄い。
まぁ当たり前か。元々は人を癒したり、支援するのが目的の魔法なのだから。
それでも聖属性を拳に付与し殴れば、対人攻撃として使えなくもない。
うん。これからは神聖魔法に拘らず、臨機応変に使い分けよう。
もちろん対魔物相手なら、神聖魔法が抜群に効果がある。
思う存分、神聖魔法を披露してやろう。
全員の食事が終われば、直ぐにでも馬車は出発するという。
魂の抜け殻のようになった夜盗を縄で縛りあげ、乗合馬車の屋根に括り付ければいざ出発!
昨日の昼過ぎに出発した馬車は、今日の昼前には目的地のオムーアへと到着した。
田園風景の広がるこの地は、葡萄や林檎を栽培で豊かなのだという。
「葡萄か。今は収穫時期ではないようだな」
「あれって秋の果物だろ? 林檎はその後だっけ?」
どことなく弾むようなラフィの声。
ポッソが以前言っていたな。
女子は果物やスィーツに目がない――と。
女らしくないなどと自分で言っておきながら、ラフィも立派な女子ではないか。
「しかし依頼は家畜運搬の護衛だろう?」
「うん、そうだね。まずは村長さんの家に行こう」
と言ってもどの家が村長宅なのか分からない。
村人に聞きながら一軒の家へと辿り着く。
「僕の実家のある村とは大違いだな。この村の家々は随分と造りがしっかりとしている」
「アタイの村とも大違い。もっとこう……壁板には隙間があって、屋根に穴が空いてるなんて当たり前って感じだけど」
「屋根の穴は塞ごう。雨漏りなんてもんじゃ済まないぞ」
屋根に穴のある家はさすがに無いが、隙間風が入り込みそうな家ならある。
いや、あったと言うべきか。
ここ一年でアルファート領にある村の家も修繕し、だいぶん住みやすくはなっているはずだ。
だがこの村の家はどれも立派に見える。
木材だけではなく、壁の下半分は煉瓦で補強されて見た目も美しい。
何よりどの家も同じようなデザインで、葡萄畑が奥に広がる景観に、実にマッチしていた。
「おや、お客様ですかな?」
男の声がして振り向くと、美味しい物をたらふく食べていそうな中年男性が立っていた。
「王都のギルドに張り出された依頼を見てやって来た」
「おぉおぉ。ようやっと護衛の冒険者さまが来てくださいましたか。さあどうぞ。中へお入りください」
どうやらこの男が村長らしい。
「王都の肉加工業者に、豚と牛を合わせて三十五頭届けます。数が多いので二往復する予定でして。家畜は村人が世話をしますので、お二人は護衛をお願いします」
「家畜を狙う夜盗がいるのか?」
揉み手をする村長の話を聞きながら、疑問に思ったことを尋ねてみた。
食用として奪うのか、それとも換金するためなのか。
「まぁ夜盗よりも、獣に襲われたり、場合によっては魔物が狙うこともありますので」
「あぁなるほど。肉を欲するのは、何も人だけではなかったな」
「その通りです。報酬のほうは家畜を売った金額の5%で。ですので、一匹も殺されずに送り届けられれば報酬は上がります」
成功報酬というわけか。確かに金額固定で、無事に届けられる家畜が半数以下となると、村の損失は大きいだろう。
「村長さん。家畜はどうやって運ぶんです?」
ラフィの質問に村長の表情が曇る。
「豚は荷車で、けど牛は……」
「歩かせるのか?」
「はい……」
まぁそうだろう。牛を乗せて荷車を走らせるとなると、一台につき三頭ぐらいが限界か。
荷台を大きくし、多頭引きにしても限界はある。
それに馬は貴重だし、効果だ。いくら裕福な農村だと言っても、家畜の運搬だけに馬を数十頭も飼えぬだろうな。
「二往復かぁ。王都までどのくらい掛かります?」
「お、往復で四日と言ったところでしょうか。もちろん帰りは荷下ろしをして軽くなった分、早くこちらへ戻ってこれます」
「一瞬だ」
「「え?」」
ラフィと村長が呆けた顔で僕を見た。
王都は既に僕の記憶《デバイス》に刻まれた。
空間転移の魔法で一瞬で行ける。もちろん家畜含めて。
その為に特大の魔法陣を描く必要はあるが。
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