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元魔王は敗北する。
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「我に全てをさらけ出せ。鑑定――」
世界に存在するありとあらゆる物の情報を引き出す魔法、それが『鑑定』だ。
もちろん対人、対魔物にも効果がある。
ぼくの記憶だとこれはオーガ――種族妖魔の角を持つ亜人。
鑑定によって得られる情報は、脳裏に直接文字列として浮かび上がる。
予想通り、これはオーガだった。
********************************************
【オーガ】
種族:妖魔 属性:闇(5)
弱点:聖
普段は日差しを避け、深い森や洞窟に生息する魔物。
小集団で行動し、ゴブリンやホブゴブリン、オークなどを
従えることもある怪力の持ち主。
知能は人と比べてやや低い程度。
********************************************
浮かんでくる情報と記憶にある情報を比べると、明らかに違う部分がある。
魔物たちがまだ、ぼくに服従を誓っていなかった頃。
奴らは雑魚キャラをこれでもかと寄越してきた。その時にオーガも混ざっていて覚えている。
オーガは無属性であったはず。
弱点はほぼ全てだったはず。
何故属性が闇になっているのだ!
しかも(5)だと!?
闇の衣は当然、闇属性である。
闇属性の攻撃を、闇属性を持つ相手にぶつけても効果は薄い。
だがレベル差があればそれを埋めることも出来る――が、ぼくとの差は5しかない。
5しかないけど、もうちょっと切れてもいいと思うんだけどなぁ。
血反吐を吐き地に倒れているオーガたちは、腕の一本すら切り落とせてない。骨で止まっているようだ。
以前だと胴体もスパーンッと切れたのに。それこそ一触れで周辺のオーガをまとめて真っ二つに出来るぐらいの切れ味だった。
属性レベルは最高で10。ぼくの闇属性も10。
10と5の差でこれほどまで違うなんて……いや。
もしやと思って自らを鑑定してみる。
********************************************
【ルイン・アルファート】
種族:人間(元魔王)
属性:火(10) 土(10) 風(10) 水(10)
雷(10) 氷(10) 聖(2) 闇(8)
アルファート男爵家の次男坊。
魔王ルディンヴァートの生まれ変わり。
********************************************
日頃から鑑定妨害結界を施してはいるが、それも面倒だし今度『偽情報』でも掛けておくか。
「って、えええぇぇえぇぇっ!? な、なんで僕が闇8なの? え? せ、聖2??」
魔王だった頃、唯一持っていないのが聖属性だった。
持っていないだけで弱点ではない。
聖属性を持てたのは嬉しい。
だが代わりに闇が下がってるし!
だからか……だからぼくは弱くなっちゃったのか。
同じ最高レベルの他属性と比べても、ぼくの特異属性は闇だったのに。
いや!
闇属性は聖以外の属性攻撃に対して耐性がある。
つまり闇属性5のオーガに他属性で攻撃しても、闇の衣と同程度か下手するとそれ以下の効果しか発揮できないかもしれない。
オーガ以外はどうだ?
ぼくは村を走り回り、目に付いた魔物全てに鑑定をしていった。
その結果――
「ゴ、ゴブリンですら闇(1)って……そんな」
膝を突き、両手を地面につけ項垂れた。
これが……これが敗北感というものだろうか。
ゴブリンたちにこん棒で突かれながら悲観していると、突然辺りが暖かな光に包まれた。
「死んじゃダメ!? 今すぐ助けてあげるから、頑張ってっ――聖なる光!」
いや、特に死ぬほどの怪我もしていないが。
だがしかし、ゴブリンによってつけられた擦り傷は既に完治していた。
さっきの暖かな光――あれは聖職者らが使う神聖魔法か。
『ゲエェェェッ』
眩い光を浴びたゴブリンたちが、次々に悲鳴を上げその場へと倒れていく。
おおぉ、おおおおぉぉぉぉ!
こ、これが聖属性の威力か!?
光を浴びただけのゴブリンどもが、既に息絶えている!!
ただの光だぞ? なんて破壊力なのだ、聖属性は!?
欲しい。
この力が欲しい!
ぼくのスローライフを邪魔する輩をぶちのめす為、聖属性が欲しい!!
「ボク、大丈夫だった?」
穏やかな笑みを浮かべやって来たのは若い女性。
純白の法衣に身を包み、その手には本を抱えていた。
聖書だろうか。
本に魔力を貯め込み、いざという時に開放して武器とする聖職者がいる――というのは、前世の知識でも知っている。
ぼくと目線を合わせるためにその女性はしゃがんで微笑む。
「お姉さんは、聖女さま?」
聖女――勇者一行には高確率でメンバーの中に入っていた。
神の啓示により選ばれた女性聖職者が聖女と呼ばれる。
「え? や、やだ。聖女さまだなんて。んふふ、違うわよ。私はただの神官。しかも神殿に所属しない、冒険者よ」
「……ぼうけんしゃ?」
「話はまたあとでね。今は早く、この村を襲う魔物たちをどうにかしなきゃ」
神官だという女性はそう言うと、辺りを見渡し獲物となる魔物を探し始めた。
村の奥で悲鳴が聞こえると、ぼくの手を引いてそちらへと駆ける。
「ごめんね、でもひとりにしておく方が危険だし、一緒に来てくれる?」
「うん! ぼく神官さまの魔法、もっと見たい!!」
一緒に連れて行ってくれるというなら好都合。
ぼくは神官の足手まといにならないよう全力で走り、思わず彼女を追い抜いてし合った。
「ダ、ダメよ。私より前に出ちゃあ。ひゃー、田舎の子は足速いなぁ」
世界に存在するありとあらゆる物の情報を引き出す魔法、それが『鑑定』だ。
もちろん対人、対魔物にも効果がある。
ぼくの記憶だとこれはオーガ――種族妖魔の角を持つ亜人。
鑑定によって得られる情報は、脳裏に直接文字列として浮かび上がる。
予想通り、これはオーガだった。
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【オーガ】
種族:妖魔 属性:闇(5)
弱点:聖
普段は日差しを避け、深い森や洞窟に生息する魔物。
小集団で行動し、ゴブリンやホブゴブリン、オークなどを
従えることもある怪力の持ち主。
知能は人と比べてやや低い程度。
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浮かんでくる情報と記憶にある情報を比べると、明らかに違う部分がある。
魔物たちがまだ、ぼくに服従を誓っていなかった頃。
奴らは雑魚キャラをこれでもかと寄越してきた。その時にオーガも混ざっていて覚えている。
オーガは無属性であったはず。
弱点はほぼ全てだったはず。
何故属性が闇になっているのだ!
しかも(5)だと!?
闇の衣は当然、闇属性である。
闇属性の攻撃を、闇属性を持つ相手にぶつけても効果は薄い。
だがレベル差があればそれを埋めることも出来る――が、ぼくとの差は5しかない。
5しかないけど、もうちょっと切れてもいいと思うんだけどなぁ。
血反吐を吐き地に倒れているオーガたちは、腕の一本すら切り落とせてない。骨で止まっているようだ。
以前だと胴体もスパーンッと切れたのに。それこそ一触れで周辺のオーガをまとめて真っ二つに出来るぐらいの切れ味だった。
属性レベルは最高で10。ぼくの闇属性も10。
10と5の差でこれほどまで違うなんて……いや。
もしやと思って自らを鑑定してみる。
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【ルイン・アルファート】
種族:人間(元魔王)
属性:火(10) 土(10) 風(10) 水(10)
雷(10) 氷(10) 聖(2) 闇(8)
アルファート男爵家の次男坊。
魔王ルディンヴァートの生まれ変わり。
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日頃から鑑定妨害結界を施してはいるが、それも面倒だし今度『偽情報』でも掛けておくか。
「って、えええぇぇえぇぇっ!? な、なんで僕が闇8なの? え? せ、聖2??」
魔王だった頃、唯一持っていないのが聖属性だった。
持っていないだけで弱点ではない。
聖属性を持てたのは嬉しい。
だが代わりに闇が下がってるし!
だからか……だからぼくは弱くなっちゃったのか。
同じ最高レベルの他属性と比べても、ぼくの特異属性は闇だったのに。
いや!
闇属性は聖以外の属性攻撃に対して耐性がある。
つまり闇属性5のオーガに他属性で攻撃しても、闇の衣と同程度か下手するとそれ以下の効果しか発揮できないかもしれない。
オーガ以外はどうだ?
ぼくは村を走り回り、目に付いた魔物全てに鑑定をしていった。
その結果――
「ゴ、ゴブリンですら闇(1)って……そんな」
膝を突き、両手を地面につけ項垂れた。
これが……これが敗北感というものだろうか。
ゴブリンたちにこん棒で突かれながら悲観していると、突然辺りが暖かな光に包まれた。
「死んじゃダメ!? 今すぐ助けてあげるから、頑張ってっ――聖なる光!」
いや、特に死ぬほどの怪我もしていないが。
だがしかし、ゴブリンによってつけられた擦り傷は既に完治していた。
さっきの暖かな光――あれは聖職者らが使う神聖魔法か。
『ゲエェェェッ』
眩い光を浴びたゴブリンたちが、次々に悲鳴を上げその場へと倒れていく。
おおぉ、おおおおぉぉぉぉ!
こ、これが聖属性の威力か!?
光を浴びただけのゴブリンどもが、既に息絶えている!!
ただの光だぞ? なんて破壊力なのだ、聖属性は!?
欲しい。
この力が欲しい!
ぼくのスローライフを邪魔する輩をぶちのめす為、聖属性が欲しい!!
「ボク、大丈夫だった?」
穏やかな笑みを浮かべやって来たのは若い女性。
純白の法衣に身を包み、その手には本を抱えていた。
聖書だろうか。
本に魔力を貯め込み、いざという時に開放して武器とする聖職者がいる――というのは、前世の知識でも知っている。
ぼくと目線を合わせるためにその女性はしゃがんで微笑む。
「お姉さんは、聖女さま?」
聖女――勇者一行には高確率でメンバーの中に入っていた。
神の啓示により選ばれた女性聖職者が聖女と呼ばれる。
「え? や、やだ。聖女さまだなんて。んふふ、違うわよ。私はただの神官。しかも神殿に所属しない、冒険者よ」
「……ぼうけんしゃ?」
「話はまたあとでね。今は早く、この村を襲う魔物たちをどうにかしなきゃ」
神官だという女性はそう言うと、辺りを見渡し獲物となる魔物を探し始めた。
村の奥で悲鳴が聞こえると、ぼくの手を引いてそちらへと駆ける。
「ごめんね、でもひとりにしておく方が危険だし、一緒に来てくれる?」
「うん! ぼく神官さまの魔法、もっと見たい!!」
一緒に連れて行ってくれるというなら好都合。
ぼくは神官の足手まといにならないよう全力で走り、思わず彼女を追い抜いてし合った。
「ダ、ダメよ。私より前に出ちゃあ。ひゃー、田舎の子は足速いなぁ」
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