上 下
33 / 42

33話:シュート

しおりを挟む
 スキルカードは破ることで、カードに封じられたスキルを習得できる。

 ビリリっとカードを被ると、ぷわぁっと光の粉みたいになって、それから俺の掌に吸い込まれていった。

「これでいい?」
「ステータスを確認してみれば分かるわ」

 なんかあっさりしすぎて実感が湧かないなぁ。


 レベル100   MP:129/129
 腕力:265  体力:227  俊敏:162
 持久:178  器用:195  魔力:97

 StP:0

【転移ボーナス】
 EXPが1になる

【スキル】
 フィールドダンジョン生成2
 キック1

【装備によるスキル付与】
 ハイ・スピード500
 ビッグ500


「へぇ。ブーツに付与されてるスキルも見れるのか──って、ハイ・スピード500ってなんだ!?」
「ご、500もあるの!? なんて無駄なスキルを付与してるのかしら……」
「あの、スキルレベルの上限って?」
「999にゃよ。と言っても、500もあれば凄い方にゃ」
「スキルレベルを上げる方法は、そのスキルをどうやって習得したかによって違うって話したわよね?」

 学んで自然を習得する方法と、ドロップや討伐報酬で得られる方法だな。

「自力で習得できたものは、それを使うことで熟練度が増してレベルが上がるの。でもスキルって同時にいくつも使える訳じゃないし、使えば使っただけ、MPが持っていかれちゃうから……」
「経験値の配分設定もにゃ、スキルごとに何%分配するにゃーってしなきゃならないにゃからねぇ。あれもこれもとにゃってたら、なかなか上がらないにゃよ」

 だいたいの人は、まず一つを重点的にレベルを上げるそうだ。
 十分な威力が確保できれば、次のスキルを──というように育てていく。
 複数同時に育てるにしても、分配の%を均等にはせず、それかに偏らせる育て方が一般的らしい。

「俺の場合、経験値はどうせ1しか貰えないし……」
「なんにしても、育てられるのは一つだけね。満足いくレベルになったら別のスキルをって感じかしら」
「スキルかベースのどちにゃか、しかもスキルも一つだけ。タクミはあまり深く考えない方がいいにゃねぇ」

 貰える経験値が1しかないんだし、それを複数のスキルに分配することもできないし……考えるだけ無駄か。
 うん、分かったよ。

「じゃあキックのスキルレベル上げを先にするかな」
「そうね。不人気階層なら他の冒険者もいないし、狩り放題だから直ぐに100ぐらい上がるでしょ」
「ベースレベルを下げた方がいいにゃねぇ」
「地下二階の適正レベルが35だったかしら?」

 さっそく迷宮に潜って、徒歩で地下二階を目指す。
 マスターキーは地下三十八階にぶっ差しているけど、次にベースレベルを上げたくなった時には四十階からスタートすればいい。
 今日一日でのレベルの上がり方次第で、二階の壁に鍵を挿してもいいな。





「キック!」

 スキルを使う時には、スキル名を口にすればいい。
 魔法の場合にはそれプラス呪文が必要で、厨二心をくすぐる仕様になっている。

 キックは物理攻撃スキルだから、こうして口にすればいいだけのハズなんだが……。

「なんか足先が温かくなるだけで、何も起きないんですけど?」
「蹴り技にゃあ。何も蹴ってにゃいから、そりゃにゃあぁ」
「蹴らなきゃダメなのか……」

 対峙するモンスターは兎だ。ただ二足歩行で、顔には十字の傷もあって可愛さの欠片もない。
 その手にはこん棒を持っているけれど、あの手をどうやって握っているんだろうな。

「じゃあ兎を蹴らなきゃダメかぁ」

 ちぇーっ。
 ちょっと不貞腐れて足元に転がる小石を蹴ってみた。

 ヒュンっと音がして、次の瞬間には『ピァッ』という短い断末魔が聞こえる。

「え?」
「な、なによ今の?」
「にゃあぁぁ……酷いにゃねぇ」

 な、なにが起きたんだ?
 一瞬のことだったから分かりにくかったけど、なんか大きな岩が兎に向かって飛んで行ったような?

 いや、違う。
 小石だ。
 ブーツに付与されたビッグの効果で、石からサッカーボールを一回り大きくしたサイズに膨れ上がったんだ。
 それが……ハイ・スピードの効果によって、物凄い速度で飛んでいった……と。

「蹴るのはモンスターじゃなくてもいい、のか。いやこれ、モンスターを蹴ったら巨大化して大変なことにならないか?」
「そ、そうね……小石で留めておくべきね。でもどうしてブーツの効果が出ちゃったのかしら」
「さっきキックのスキルを使ったにゃあ。それで自然と魔力が足に蓄積されたにゃねぇ」
「あぁ、なるほどね。キックと併用すれば、魔力コントロールもほとんど必要ないんだわ」

 俺にはなんのことだかサッパリ分からないけど、まだキックと同時に使えばいいってことだな。
 うっし!
 じゃんじゃんレベル上げするぞ!!





「それで、今日一日ずっとキックスキルのレベル上げしてたですか?」
「そうなんだ」
「ベースレベル上げのはずだったのに、下がってるじゃないですかぁ」
「ルーシェに吸って貰ったからね」
「卑猥ですぅ」

 なんで掌をちゅーってするだけで卑猥なんだよ!

「それでぇ、キックのレベルはいくつになったのですかぁ?」
「うん。五時間ぐらい頑張って、レベル130になったんだ!」
「相変わらずおかしいですぅ~」

 おかしいって言うの止めてくれないかなぁ。ちょっと傷つくんだけど。

 俺ひとりでもモンスターを倒せる。もちろんレベル35と決して強い相手じゃない。
 だけどそれが嬉しくて、ついつい張り切り過ぎてしまった。
 あとはルーシェの手を煩わせない分、レベルが下がる心配もない。ってことは、レベルドレインの必要もない。
 しかもベースレベルは上がらないから、ずっと同じ狩場でスキルのレベルを上げることも出来るし。

 無駄な工程が無かったのも、レベリング効率が良かった要因だろう。

「さぁ、明日はキックのレベルを250まで上げるぞぉ」
「えぇ!? ま、まだ上げるのですかぁ? いつになったらトーカのところに戻ってきてくれるのですかマスター?」
「いつまでもあんたのところには戻って行かないわよ。さ、タクミ。宿に戻りましょう」
「そうだな。お腹も好いたことだし。じゃあトーカ、マッシュマンにもよろしく伝えておいてくれ」
「ふえええぇぇーん」

 さぁて、今夜は何を食べようかなぁ。
 あ、兎肉だけはなしな方向で。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を

榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。 16歳。 ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。 しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。 まったくふざけた話である。 まあだが別にいいさ。 何故なら―― 俺は超学習能力が高い天才だから。 異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。 そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。 これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...