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7:お・ね・が・い
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「えっと……タクミ、お願いがあるの」
彼女のお願いっていうのは、俺と契約をしてくれってことだろう。
俺のレベルはすぐに上がる。レベルが上がればStPも貰えるし……いや、レベルが下がればその分のStPも消えてしまうのかな?
そこは要検証ということで。
だとしても、レベルがすぐに上がることに違いはない。
異世界に転移して、右も左も分からない俺にとって、彼女と行動をすることはマイナスではなく、プラスになるはずだ。
「いいよ。契約をしよう」
「え!? い、いいの? 契約をするってことは、私と一緒にいるってことよ!?」
「あぁ、そうだね君と……!?」
そ、そうだ。彼女と一緒にいなきゃならないってことだ。
あぁーっ。なんか急に恥ずかしくなってきた。どうしよう。ずっと一緒ってことは……その、彼女に恋人が出来た時、俺ってただのお邪魔虫になってしまうんじゃ。
「し、将来、君に恋人が出来て……いや、もう恋人いたりする?」
「し、しないわよっ。そこ気にするのね。だ、大丈夫よ。あんたに好きな人が出来たら、その時は……そうね、時々会ってくれて、その時にレベルをくれればそれでいいわ」
「はは。じゃあ、君に恋人が出来たときもそれで」
「い、いいわよ。まぁ、そんなの……出来るとは思わないけどさ」
そうかなぁ。こんな綺麗な子、誰だって放っておかないだろう。
「じゃあ……契約……お願い」
「あ、うん。どうすればいい?」
「ん」
ルーシェが立ち上がり、自分の正面に立ってくれと言う。
言われた通り彼女の正面に立つ。するとルーシェが俺の手を握った。
俺の右手は彼女の左手に、俺の左手は彼女の右手に。
こ、これは恥ずかしい。
「あ、の……タクミ」
「な、なんだい?」
「あの、ちょっとしゃがんでくれる? オデコをくっつけたいの」
「お、おう。分かった」
「あんたって、背が高いんだもの」
はは。182センチあるからね。
サッカーよりバスケのほうが向いてるんじゃないかって言われることもあったし。
ルーシェと同じ高さまでしゃがむと、彼女の顔が近づく。
まつ毛……長いな……。なんとなく直視できず、目を閉じた。
こつんっとオデコに何かがぶつかる。当然それが彼女のオデコだというのは分かるけど、ここで目を開ける勇気はない。
そのままルーシェの凛とした声が聞こえてきた。何を言っているのかさっぱりなほど、言語が分からない。
「オデコが温かい」
「私のマナが、タクミの中に流れているからよ。大丈夫、火傷はしないから」
はは、そりゃそうだろう。
暫くして「契約、出来たわ」と、ルーシェが離れた。
なんとなく気恥ずかしくて、会話が進まない。
するとどこかでぐぅーっと音がして、それが彼女の腹の虫だと気づくのに時間は掛からなかった。
こういう時はな、女の子に恥をかかせちゃいけないんだ。
「お腹空いた! そうだ、神様から貰ったパンが残っていたんだ。一緒に食べるかい?」
「そ、そうね。っていうか、神様がくれたの!?」
「そう。残り一個なんだけどさ」
「ちょっと、めちゃくちゃ貴重じゃない。っていうか食料全然ないの!?」
残りはスナック菓子一袋。非常にピンチです。
まぁ周りは海だし、魚が捕まえられたりしないかなーという期待はある。
「私もあまりたくさんは持っていないけど、ダンジョンなら食料の調達もできるわよね」
「モンスターを食べる……のか?」
「一部のモンスターは食材になるわよ。中には高級料理の具材になる奴だっているんだから」
そう言いながら、彼女は宙から調理道具のようなものを次々と取り出した。
竹筒から水を出し、鍋に入れる。そこに何やら乾燥したものを投入していって、キャンプで使うようなコンロ台を置いた。
「じゃ、神様から貰ったパンと、私がスープを作るから食事にしましょうか」
「お、温かいスープが食べられるのか。そりゃあ有難い」
食事の間も彼女とはいろいろ話をした。
そこでまず驚いたのが、この世界にステータスポイントがないということ。
「じゃあ、ステータスってどうやって伸ばすんだ?」
「そりゃあ行動でしょ。腕力なら、力を使うようなことをたくさんしていれば上がるし、肉体を酷使していれば体力が」
「レベルアップの時に、一気に上がるのか」
「いいえ。ステータスは常に上がっていくわ。もちろん、そう簡単に上がる訳じゃないけど。それプラスでレベルが上がるとボーナスみたいな感じで少し上がるのよ」
そうなのか。けど、俺のステータスはStP以外で上がっているようには見えない。
もしかしてレベルが上がるのが早すぎるからかな?
そうだとして、レベルドレインでStPもリセットされるようなら……レベルが上がりやすいことでデメリットしかなくなってしまう。
その為にも確かめて見なきゃな。
「ルーシェ、ちょっと検証したいことがあるんだ。手伝ってくれないか?」
「検証したい? いったい何の検証なの」
「レベルドレインによってStPがどうなるのか、それを知りたいんだ」
「レベルアップで貰えるポイント? そういえば、普通はそんなポイント貰えないから……どうなるのかしら」
それを検証するために、まずはStPを1残して全部振ってしまおう。
残りは7ポイントなので、1残すとして全部腕力に振るか。
今の数値を地面にメモ書きして──StPで増やした分は括弧内に書いておこう。
「これが今の数字なのね。正直……これだけ平均的に高い数字ってむちゃくちゃよ」
「む、むちゃくちゃ?」
「普通はね、得意分野だけが特化したようなステータスになるのよ。それなのにあんたのは、魔力は確かに低いけど、それでも……平均値が高すぎるの。とてもレベル20のステータスじゃないわね」
「そうなのか。意外に向こうの世界でやって来たことが、この世界に転移してきても役に立ってるんだな。で、検証したいのは──」
1:レベルが下がることで、残りのStPは消えるのか。
2:レベルが下がることで、StPを振り分けて上昇させたステータスはリセットされるのか。
もし上昇したステータスはそのままで、StPだけが消えるというパターンもある。
だから1ポイントを残して、あとは振り分けるのに使った。
「さ、準備OKだ。いつでも吸ってくれ!」
彼女のお願いっていうのは、俺と契約をしてくれってことだろう。
俺のレベルはすぐに上がる。レベルが上がればStPも貰えるし……いや、レベルが下がればその分のStPも消えてしまうのかな?
そこは要検証ということで。
だとしても、レベルがすぐに上がることに違いはない。
異世界に転移して、右も左も分からない俺にとって、彼女と行動をすることはマイナスではなく、プラスになるはずだ。
「いいよ。契約をしよう」
「え!? い、いいの? 契約をするってことは、私と一緒にいるってことよ!?」
「あぁ、そうだね君と……!?」
そ、そうだ。彼女と一緒にいなきゃならないってことだ。
あぁーっ。なんか急に恥ずかしくなってきた。どうしよう。ずっと一緒ってことは……その、彼女に恋人が出来た時、俺ってただのお邪魔虫になってしまうんじゃ。
「し、将来、君に恋人が出来て……いや、もう恋人いたりする?」
「し、しないわよっ。そこ気にするのね。だ、大丈夫よ。あんたに好きな人が出来たら、その時は……そうね、時々会ってくれて、その時にレベルをくれればそれでいいわ」
「はは。じゃあ、君に恋人が出来たときもそれで」
「い、いいわよ。まぁ、そんなの……出来るとは思わないけどさ」
そうかなぁ。こんな綺麗な子、誰だって放っておかないだろう。
「じゃあ……契約……お願い」
「あ、うん。どうすればいい?」
「ん」
ルーシェが立ち上がり、自分の正面に立ってくれと言う。
言われた通り彼女の正面に立つ。するとルーシェが俺の手を握った。
俺の右手は彼女の左手に、俺の左手は彼女の右手に。
こ、これは恥ずかしい。
「あ、の……タクミ」
「な、なんだい?」
「あの、ちょっとしゃがんでくれる? オデコをくっつけたいの」
「お、おう。分かった」
「あんたって、背が高いんだもの」
はは。182センチあるからね。
サッカーよりバスケのほうが向いてるんじゃないかって言われることもあったし。
ルーシェと同じ高さまでしゃがむと、彼女の顔が近づく。
まつ毛……長いな……。なんとなく直視できず、目を閉じた。
こつんっとオデコに何かがぶつかる。当然それが彼女のオデコだというのは分かるけど、ここで目を開ける勇気はない。
そのままルーシェの凛とした声が聞こえてきた。何を言っているのかさっぱりなほど、言語が分からない。
「オデコが温かい」
「私のマナが、タクミの中に流れているからよ。大丈夫、火傷はしないから」
はは、そりゃそうだろう。
暫くして「契約、出来たわ」と、ルーシェが離れた。
なんとなく気恥ずかしくて、会話が進まない。
するとどこかでぐぅーっと音がして、それが彼女の腹の虫だと気づくのに時間は掛からなかった。
こういう時はな、女の子に恥をかかせちゃいけないんだ。
「お腹空いた! そうだ、神様から貰ったパンが残っていたんだ。一緒に食べるかい?」
「そ、そうね。っていうか、神様がくれたの!?」
「そう。残り一個なんだけどさ」
「ちょっと、めちゃくちゃ貴重じゃない。っていうか食料全然ないの!?」
残りはスナック菓子一袋。非常にピンチです。
まぁ周りは海だし、魚が捕まえられたりしないかなーという期待はある。
「私もあまりたくさんは持っていないけど、ダンジョンなら食料の調達もできるわよね」
「モンスターを食べる……のか?」
「一部のモンスターは食材になるわよ。中には高級料理の具材になる奴だっているんだから」
そう言いながら、彼女は宙から調理道具のようなものを次々と取り出した。
竹筒から水を出し、鍋に入れる。そこに何やら乾燥したものを投入していって、キャンプで使うようなコンロ台を置いた。
「じゃ、神様から貰ったパンと、私がスープを作るから食事にしましょうか」
「お、温かいスープが食べられるのか。そりゃあ有難い」
食事の間も彼女とはいろいろ話をした。
そこでまず驚いたのが、この世界にステータスポイントがないということ。
「じゃあ、ステータスってどうやって伸ばすんだ?」
「そりゃあ行動でしょ。腕力なら、力を使うようなことをたくさんしていれば上がるし、肉体を酷使していれば体力が」
「レベルアップの時に、一気に上がるのか」
「いいえ。ステータスは常に上がっていくわ。もちろん、そう簡単に上がる訳じゃないけど。それプラスでレベルが上がるとボーナスみたいな感じで少し上がるのよ」
そうなのか。けど、俺のステータスはStP以外で上がっているようには見えない。
もしかしてレベルが上がるのが早すぎるからかな?
そうだとして、レベルドレインでStPもリセットされるようなら……レベルが上がりやすいことでデメリットしかなくなってしまう。
その為にも確かめて見なきゃな。
「ルーシェ、ちょっと検証したいことがあるんだ。手伝ってくれないか?」
「検証したい? いったい何の検証なの」
「レベルドレインによってStPがどうなるのか、それを知りたいんだ」
「レベルアップで貰えるポイント? そういえば、普通はそんなポイント貰えないから……どうなるのかしら」
それを検証するために、まずはStPを1残して全部振ってしまおう。
残りは7ポイントなので、1残すとして全部腕力に振るか。
今の数値を地面にメモ書きして──StPで増やした分は括弧内に書いておこう。
「これが今の数字なのね。正直……これだけ平均的に高い数字ってむちゃくちゃよ」
「む、むちゃくちゃ?」
「普通はね、得意分野だけが特化したようなステータスになるのよ。それなのにあんたのは、魔力は確かに低いけど、それでも……平均値が高すぎるの。とてもレベル20のステータスじゃないわね」
「そうなのか。意外に向こうの世界でやって来たことが、この世界に転移してきても役に立ってるんだな。で、検証したいのは──」
1:レベルが下がることで、残りのStPは消えるのか。
2:レベルが下がることで、StPを振り分けて上昇させたステータスはリセットされるのか。
もし上昇したステータスはそのままで、StPだけが消えるというパターンもある。
だから1ポイントを残して、あとは振り分けるのに使った。
「さ、準備OKだ。いつでも吸ってくれ!」
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