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32:ゴーレムパンチ
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「ふぅ、やぁっと完成だ」
「うわぁぁ、ありがとうございますディオンさん!」
ロロにアドバイス貰いながら、それでも三本ほど失敗してようやく弓は完成した。
「よく斧一本で作れたわね。それもやっぱりスキルレベルのおかげなのかしら」
「まぁそうだろうなぁ。そもそも俺、弓作り二日目の超初心者だし」
「職人が聞いたら怒るでしょうねぇ」
幸いここには職人がいないからなんとでも言えるけど。
確かに木工歴二日の奴が弓を作るなんて、異世界でも普通は有り得ないことだからなぁ。
「それでも昨日と合わせて、結構な回数失敗してるから……そこは、なんでだろう。やっぱ経験なのかなぁ」
「うぅん、道具じゃないですか? 確かに木を伐るのは斧ですが、削るのには適していませんし」
「私もそう思うわ。やっぱり道具は必要なのよ」
道具かぁ。
けど砦にあったのは、斧ぐらいだもんなぁ。
「あとは矢を作れば終わりだな」
「あ、それはもう作りました」
「……え?」
「矢は職人でなくても、割と簡単に作れるものよ」
セリスがそう言うと、机の上に置かれた矢の束を見せた。
俺が弓を作っている間に、セリスとリリ、ファンファ、トートの四人で矢を完成させたようだ。
そして蛇皮を使って、ネネさんが矢筒まで作ってくれたようだ。
「ツインヘッドスネークの皮で、ディオンさんのジャケットも縫ってみたんです」
「え? 俺の服をですか?」
ネネさんが見せてくれたのは、革ジャンみたいな感じのジャケットだ。
蛇皮と言っても、黒一色なので黒い革ジャンにしか見えない。
裏地にはスリーホーンの毛皮が使われていて、ちょっとした防寒着にもなる。
「ありがとうございますっ。最近冷えてきたし、本当に助かるよ。あ、でも……」
俺だけ防寒着ってのも申し訳ない気がする。
他の毛皮は寝具用に使ってしまっているし、小さな子たち用の服も作れない。
「よぉし。これ着て頑張って狩りをするぞ!」
「無茶はしないでくださいね。冬の間の食料は、もう十分あると思いますし」
「でもあり過ぎて困ることはないですから」
少なくて困るよりはいい。
それに食料が確保できても、寒さ対策が確保できなければ命の危険は十分にある。
薪の残りも心もとないし、狩りと伐採は雪が降るまで続けなきゃな。
そんな決意をした翌朝、空から白いものが落ちてきた。
「ひぃー。今朝は随分冷えるなと思ったら、遂にきたかぁ」
「とうとうね。でもこの雪は……まだ積もらないと思うわ」
雪の粒は小さく、地面に落ちるや否や溶けてしまっている。
けど──遂に雪の季節到来だ。
数日中にやるべきことを済ませておきたい。
「ゴーレン、今日は君にも一緒に来て貰おう。力があるから、比較的細い木ならパワーでへし折れるんじゃないかな」
『ごれっ』
「私も行くわ。ロロは砦の周辺の警戒に当たってね」
「ゴン、お前もロロと一緒にここを守ってくれ」
『ンメェ』
ちょっと不満そうな声のゴンを宥め、俺とセリス、それからゴーレンで森へと向かった。
ゴーレンに斧を持たせるか悩んだけど、俺の腕より少し太い程度の幹ならゴーレンのパンチ一発で伐採。
今回は数重視にして、手頃なサイズの物をどんどん切り倒していくことにした。
「よし、ゴーレン。じゃんじゃん伐採してくれ」
『ごれぇーむ』
「じゃあ私は周りを警戒しているわね。モンスターが近づいて来たら知らせるわ」
ときおり小雪がちらつく中、森にどっかんどっかんと音が響き渡る。
ゴーレンのパンチによって幹が粉砕される音だ。
こんだけ大きな音立ててたら、モンスターが寄ってくるよなぁ。
そう思っていたのだけれど……
「一匹も姿を見せないなんて、珍しいわね」
「あんだけ音が鳴ってたら寄って来ると思ったんだけどな」
「私もそう思ってたんだけど……もしかして逆にモンスターが怯えて寄ってこなかった……のかも?」
……モンスターも怯える粉砕音。まぁ分からなくもない。
うぅん。これじゃあ毛皮狩りが出来ないなぁ。
今日一日でだいぶん伐採できたし、明日は狩りに専念するか。
そんなことを考えながらの帰り道。
『ブオオォォォォォッ』
「毛皮か!?」
「ジャイアントファングボアよ! お肉にだってなるわ!」
『ごれえぇぇっむ』
優秀な獲物が現れ、
「ゴーレンパンチだ!」
『ごっむ!』
『プギャッ──』
ゴーレンの強烈な右ストレートは猪の巨体にめり込んだ。
猪が血泡を吹き出しどぉっと倒れると、暫くぴくぴくと痙攣していたが、やがて動かなくなり、ゴーレンの勝利に終わる。
ゴーレン……めちゃくちゃつえぇぇーっ!
ふへへ。これで食料と毛皮と薪と全部ゲットだぜ。
「うわぁぁ、ありがとうございますディオンさん!」
ロロにアドバイス貰いながら、それでも三本ほど失敗してようやく弓は完成した。
「よく斧一本で作れたわね。それもやっぱりスキルレベルのおかげなのかしら」
「まぁそうだろうなぁ。そもそも俺、弓作り二日目の超初心者だし」
「職人が聞いたら怒るでしょうねぇ」
幸いここには職人がいないからなんとでも言えるけど。
確かに木工歴二日の奴が弓を作るなんて、異世界でも普通は有り得ないことだからなぁ。
「それでも昨日と合わせて、結構な回数失敗してるから……そこは、なんでだろう。やっぱ経験なのかなぁ」
「うぅん、道具じゃないですか? 確かに木を伐るのは斧ですが、削るのには適していませんし」
「私もそう思うわ。やっぱり道具は必要なのよ」
道具かぁ。
けど砦にあったのは、斧ぐらいだもんなぁ。
「あとは矢を作れば終わりだな」
「あ、それはもう作りました」
「……え?」
「矢は職人でなくても、割と簡単に作れるものよ」
セリスがそう言うと、机の上に置かれた矢の束を見せた。
俺が弓を作っている間に、セリスとリリ、ファンファ、トートの四人で矢を完成させたようだ。
そして蛇皮を使って、ネネさんが矢筒まで作ってくれたようだ。
「ツインヘッドスネークの皮で、ディオンさんのジャケットも縫ってみたんです」
「え? 俺の服をですか?」
ネネさんが見せてくれたのは、革ジャンみたいな感じのジャケットだ。
蛇皮と言っても、黒一色なので黒い革ジャンにしか見えない。
裏地にはスリーホーンの毛皮が使われていて、ちょっとした防寒着にもなる。
「ありがとうございますっ。最近冷えてきたし、本当に助かるよ。あ、でも……」
俺だけ防寒着ってのも申し訳ない気がする。
他の毛皮は寝具用に使ってしまっているし、小さな子たち用の服も作れない。
「よぉし。これ着て頑張って狩りをするぞ!」
「無茶はしないでくださいね。冬の間の食料は、もう十分あると思いますし」
「でもあり過ぎて困ることはないですから」
少なくて困るよりはいい。
それに食料が確保できても、寒さ対策が確保できなければ命の危険は十分にある。
薪の残りも心もとないし、狩りと伐採は雪が降るまで続けなきゃな。
そんな決意をした翌朝、空から白いものが落ちてきた。
「ひぃー。今朝は随分冷えるなと思ったら、遂にきたかぁ」
「とうとうね。でもこの雪は……まだ積もらないと思うわ」
雪の粒は小さく、地面に落ちるや否や溶けてしまっている。
けど──遂に雪の季節到来だ。
数日中にやるべきことを済ませておきたい。
「ゴーレン、今日は君にも一緒に来て貰おう。力があるから、比較的細い木ならパワーでへし折れるんじゃないかな」
『ごれっ』
「私も行くわ。ロロは砦の周辺の警戒に当たってね」
「ゴン、お前もロロと一緒にここを守ってくれ」
『ンメェ』
ちょっと不満そうな声のゴンを宥め、俺とセリス、それからゴーレンで森へと向かった。
ゴーレンに斧を持たせるか悩んだけど、俺の腕より少し太い程度の幹ならゴーレンのパンチ一発で伐採。
今回は数重視にして、手頃なサイズの物をどんどん切り倒していくことにした。
「よし、ゴーレン。じゃんじゃん伐採してくれ」
『ごれぇーむ』
「じゃあ私は周りを警戒しているわね。モンスターが近づいて来たら知らせるわ」
ときおり小雪がちらつく中、森にどっかんどっかんと音が響き渡る。
ゴーレンのパンチによって幹が粉砕される音だ。
こんだけ大きな音立ててたら、モンスターが寄ってくるよなぁ。
そう思っていたのだけれど……
「一匹も姿を見せないなんて、珍しいわね」
「あんだけ音が鳴ってたら寄って来ると思ったんだけどな」
「私もそう思ってたんだけど……もしかして逆にモンスターが怯えて寄ってこなかった……のかも?」
……モンスターも怯える粉砕音。まぁ分からなくもない。
うぅん。これじゃあ毛皮狩りが出来ないなぁ。
今日一日でだいぶん伐採できたし、明日は狩りに専念するか。
そんなことを考えながらの帰り道。
『ブオオォォォォォッ』
「毛皮か!?」
「ジャイアントファングボアよ! お肉にだってなるわ!」
『ごれえぇぇっむ』
優秀な獲物が現れ、
「ゴーレンパンチだ!」
『ごっむ!』
『プギャッ──』
ゴーレンの強烈な右ストレートは猪の巨体にめり込んだ。
猪が血泡を吹き出しどぉっと倒れると、暫くぴくぴくと痙攣していたが、やがて動かなくなり、ゴーレンの勝利に終わる。
ゴーレン……めちゃくちゃつえぇぇーっ!
ふへへ。これで食料と毛皮と薪と全部ゲットだぜ。
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