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30:羊から山羊へ

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 ゴーレムに魔力を注ぐ方法は、ゴーレムの体の中にある核に触れて魔法を使う要領で魔力を発散すればいい。

「と言われてもなぁ、魔法を使う要領ってのがいまいちで」
「それは慣れるしかないわね。ほら、この前のヒールを思い出して」

 と言われても、ヒールは呪文を唱えれば発動するわけだし。
 いや、まぁ怪我がなおれーって思いながらだけど。
 じゃあ魔力よ発散しろーって思いながらなら、注げるのかな?

『ごっ』

 ゴーレンが胸を叩くと、パカっと扉のようなのが開いて虹色の石が見えた。
 それが核らしい。

 何度かやってみたけど、注ぎ失敗ばかり。
 十数回目でやっと注げて、

「今の感じを覚えて!」

 とセリスに笑顔で言われたけど、無理です。
 なんで成功したのかも分かりません。

 とりあえず朝昼夕がた、そして寝る前に魔力注ぎをすることにしよう。





「ふぅ、洗濯桶完成っと。風呂程大きくもないし、半日で完成したな」
『ごぅ』

 斧で桶をほりほりしている間は、ゴーレンに丸太が動かないように押さえて貰った。
 それだけじゃなく、ゴーレンは俺の作業をじぃーっとみて学習したようで、腕が痛くなると交代。それもあって作業は早く終わった。

「でも今から洗濯しても、今夜寝るときには使えないな」
『ごぉ……』
『ンメッ。ンメェー』
「ん? ゴ──ゴン!?」

 砦の中からぴょんこぴょんこと跳ねて出てきたのは、随分とスッキリしたゴンだった。

 羊に間違えられることもあるクラッシュゴードン……が、正真正銘、山羊になっている。

「ど、どうしたんだ、ゴン?」
『ンメェー。メヘメェェー』
『ごっ。ごぉれごれむ。ごむぉー』
「は? ネネさんにあげた? ってかゴーレン、ゴンの言葉が分かるのか?」
『ご』

 モンスターの言葉は分かる──のか。
 へぇ。ゴンの言葉が分かるのは便利だな。

 って、ネネさんはゴンの毛をどうするんだろう?

 ゴーレンも連れて二階に行くと、ゴンの刈りたての毛をネネさんたちがまとめていた。

「あ、ディオンさん。勝手にゴンちゃんの毛刈りをしてごめんなさい。ゴンちゃんがいいって言うもんだから」
『んめっ』
『ごぉむ』
「あ、毛が絡み始めていて、嫌だったんだな。刈って貰いたかったみたいですよ」
「まぁ!? ゴンちゃんの言葉が分かるの?」

 分かるのはゴーレンで、俺はゴーレンの主人ってことで言葉が理解出来る。
 それを話すとゴーレンが褒められた。そしてゴーレンはネネさんに頭を差し出す。

「え?」
「あ、すみませんっ。俺が今朝、頭を撫でるのは褒めているからだって教えたもんだから」
「まぁ、そうだったのね。ふふ、ゴーレンは凄いわねぇ」

 ネネさんに撫でられて、ゴーレンは嬉しそうだ。
 それを見ていたゴンが二人の間に首を突っ込む。

「ゴンちゃんも撫でて欲しいのね」
『ンメェー』

 こちらも撫でて貰って嬉しそうだ。
 こいつら撫でられ好きだな……。

 あ、そうだ。

「ネネさん、洗濯桶が完成したんですけど」
「まぁ、早かったのね。じゃあさっそくお洗濯しましょうか。リリ、繕ったシーツを持って来てちょうだい」
「はぁーい」

 ネネさんと子供たちがシーツを抱えて階段を下りて行く。
 ゴーレンも一緒に行かせて、井戸から水を汲む手伝いをお願いしておいた。

「お前の毛、何に使うんだろうな?」
「毛糸にして、マフターを編むって言ってました」
「ロロ。あれ? そういやロロは今日、どこに行っていたんだい?」

 朝食と昼食の時には姿を見たけど、それ以外のときには一度も見ていない。
 まぁ俺がずっと外にいたってのもあるんだろうけど。

「オレはずっと砦の中にいましたよ。でも一階の、ベッドのない部屋にですけど。そこで母さんに頼まれた物を作っていたんです」
「ネネさんに頼まれていた?」
「はい。編み棒と、糸を紡ぐ道具を。なくても綿から糸は紡げますが、あった方が作業時間が短縮できるからって」
「そっか。お疲れさん」
「いえ、ディオンさんこそお疲れ様です」

 木工スキルを使えば、編み棒も糸紡ぎ道具も簡単に作れるだろう。でも俺ひとりでなんでもやっていたら、時間がいくらあっても足りない。
 頼れるところは頼るって決めたもんな。

 それでも……。

 今夜はロロのために木工スキルを最大値にして、弓を作ろう。
 さすがに弓作りはそう簡単じゃないだろうしね。
 その為に麻も見つけてきて弦を──あ、弦用の糸がまだ出来ていなかった。
 
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