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22:お肉の保存方法

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「凄い!?」
「うわあぁぁっ、大きなトナカイだぁ」

 木を伐り倒した後、音に反応したのかスリーホーンが襲って来た。
 三本の角を持ったトナカイ──に似たモンスターだ。

 行き成りだったんでビックリしたけど、セリスとの連携で意外とアッサリ倒せた。
 彼女がノームの力を借りてスリーホーンの足元を土に埋める。動けなくなったところで、首筋をスタッシュで斬れば──あとは血抜きの手間も省ける勢いで出血して終わりだ。

 そのスリーホーンもアイテムボックスに入れて砦に戻り、リカバリーするために全ての物を出すと子供たちはビックリ。
 今日はついてる。
 兎肉とこの巨大トナカイの肉が手に入ったし、何より毛皮だ。
 小柄な猫人族の子供なら、毛布としては兎の毛皮で十分なサイズがある。
 それにトナカイの二倍もあるようなスリーホーンの毛皮なら、三人分の毛布になるだろう。

「さて、これを捌くのは一苦労だな」
「て、手伝いますっ。獲物を捌いたことは、何度かありますから」
「ロロは万能だな。俺みたいにスキルをいくつでもセット出来る訳じゃないのに」
「なんでも出来ないと、生きていけませんから」

 苦しい環境で生きてきたからこそ、自然となんでも出来るようになるのか。
 俺はステータスボードをちょいちょいっと弄って楽してスキルを獲得。
 ロロとは大違いだ。

 楽してスキルをセット出来るんだから、その分この力をフル活用して、彼らが安心して冬を越せるように頑張ろう。
 それは俺のためでもあるんだし。





「さ、流石に大きすぎて寄るまでに終わりそうにないな」
「そ、そうですね。暗いのもあって、なかなか捗らない」

 そうなんだよ。外はもう真っ暗で、だからって蝋燭をたくさん使う訳にはいかない。
 明るくし過ぎれば、モンスターが寄ってくるかもしれないし。

 とはいえ、大きなスリーホーンを砦の中で解体するのは大変だ。
 大部屋かリビングなら入るけど、そこを血まみれにするのはなぁ……なんのホラー映画だよっていう。

「アイテムボックスに入れるにしても、明日の朝まで入れっぱなしは出来ないし」
「八時間でしたっけ?」
「そうなんだ。とはいえ、このまま外に置いていたら当然……」
「モンスターが来ますよね」

 やっぱりアイテムボックスに入れるか。
 そんで夜中に一度起きて、リカバリーしよう。

「ロロ、続きは明日にしよう。夜中に一度起きてリカバリーしなおすよ」
「分かりました。じゃあここは水を流して血のニオイを少しでも薄めましょう」
「あ、それなら大丈夫よ」

 砦の中で夕食の準備をしていたセリスがやって来た。
 火の精霊サラマンダーで血を蒸発させ、それでもニオイの取れない部分はノームが地中に沈めてくれる──ようにお願いするんだとか。

 ならそっちは任せて……
 一度ステータスをリカバリーして、アイテムボックスを再獲得。
 スリーホーンと、三匹の兎──ジャイアントラビットの毛皮と余っている肉もアイテムボックスへと入れた。

「マジックアイテムの方のアイテムボックスは、その中の時間が止まっていて、食料とか腐らないって昔父さんに教えてもらいましたが。ディオンさんのスキルはどうなんでしょう?」
「効果は同じようだ。鑑定で調べたからね。インベントリ内の時間は止まるし、中で破損することは決してないって。違うのは、スキルのアイテムボックスは入れられる数に制限があるってことかな」

 スキルレベル1では四〇種類。次のレベルに必要な消費ポイントのことを考えると、レベル1で十分かなと思う。
 面倒ではあるけど、食料はアイテムボックスに常に入れ、数時間ごとにリカバリーしてはまたアイテムボックスを獲得しなおすのがいいかもしれない。
 そうすれば日持ちさせることを考えなくても済むし。

 出来ればスキルを固定したいけど……必要ポイント190は厳しいなぁ。
 空間魔法系ならなんでもいいようだけど、清掃が一番必要ポイント少ないんだよね。

 スキルポイントが効率よく稼げるといいんだけど、ポイントは誕生日ごとに+2、ジョブレベルが上がると+10ってだけだし。
 ジョブレベルで貰えるポイントも、そのジョブごとに違うからなぁ。
 冒険者とかは+5ぐらいだってじいちゃんが言っていた。
 それを考えると、領主は多い方だろう。

 でもその領主のレベルがなぁ……領民が増えることで上がるなら、正直絶望的に近いぞ。
 これからもこの調子で人が増えるならどんどん上がるだろうけど、それは考えにくい。
 もうじき雪は降り始めれば、山越えして南へ逃れようとする人も減るだろう。
 いやむしろいないんじゃないかな。

 それに、今回五人増えたのに、レベルは二つしか上がっていない。
 人数=レベルではないということだ。

 どうやってジョブを上げればいいのかなぁ。

「さん──ディオンさん」
「え、あっ。ごめん、考え事してた」
「いえ、オレの方こそ邪魔してすみません。でも、お願いしたいことがあって」
「ん? 俺に出来ることならなんでも言ってくれ」
「あ、出来ることとかじゃなく、その……スリーホーンの脂を貰えたらなと思って」

 脂?

「石鹸を作りたいんです」
「おぉ! 石鹸かっ。うん、いいね。そういや俺も、ここに来てから体を拭くぐらいしかやってないな」
「オレたちなんて、里を出てから一度も……あ、臭いですよね? すみませんっ」

 大丈夫!
 たぶん俺も臭ってるはずだし、臭い者同士気づかないから。

 でも衛生面を考えると、石鹸は大事だよな。

「脂だけで作れないだろ? 他に植物の灰とかあったような」
「それは森に行けば手に入るわ。私も北で暮らしていた時、お金を節約するために石鹸を自作していたから、どの植物が石鹸向けなのか分かるわ」
「そっか。じゃあ明日は午前中のうちに解体作業を終わらせて、お昼から急いで森に行こう」

 石鹸が完成したら、次に欲しくなるのは風呂だよなぁ。
 どこかに作れないかな。
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