上 下
18 / 32

18:あれとそれとこれと

しおりを挟む
 お母さんの名前はナナさん。
 スープを飲んだら落ち着いたのか、また眠った。
 それは子供たちも同じで、下の二人は母親に寄り添って安心して眠った。

 子供たちが眠ってから、俺は一階へ。
 マットは二つしか用意していないし、二階の副隊長部屋で全員が寝泊るするには狭い。
 とはいえ、一階の大部屋はストーブが錆びていて穴も開いてるし、使えるのは三階の隊長部屋だ。
 大部屋のマットで比較的綺麗な物を引っ張り出して、壁に立てかけておく。
 
 猫人族は小柄だし、マットを横向きにして使えば二人寝ても十分な広さがある。
 ってことは、マット三つは欲しいってことだ。
 三階の隊長部屋のマットはセミダブルぐらいあるし、あれも使おう。

 食事も今使っている机じゃ狭くなる。二階と三階に分かれれば平気だけど、別々の部屋で食事というのもなんか変だし。
 かといって食堂はストーブも壊れてて使えないから寒いしなぁ。
 いっそ厨房を片付けてそこで食事も出来るようにするとか?

 案外出来なくもない広さはある。
 食堂のテーブルは四人用が二つ並んだタイプだから、一つを移動させてカウンターにくっつければいい。
 あとは椅子を置けば、立派な食事用テーブルっぽくなるだろう。
 じゃあさっそく掃除をしますかね。

 セリスがある程度掃除はしてくれているけど、隅々まではやっていない。
 必要最小限のスペースだけだ。

 えぇっと……
 生活系魔法で便利なのがあったよな。

『空間掃除』
 指定した空間の埃を取り除く魔法だ。
 レベルによって指定できる空間の広さが変わって、確かレベル1だと五〇センチ四方だったような。
 たったそれだけだと、この広いリビングの掃除に何時間かかることやら。
 それに俺の魔力は低いし、何度も魔法を掛けていられない。

 となると、スキルレベルを上げてっと──獲得するのにポイントを5消費、そこから1レベル毎に5消費。
 とりあえず20にしてみると、1レベル毎に10センチ増えるようで、240センチになった。

「"空間掃除"」

 魔法を使うと俺の視界に青白いマス目のような物が浮かぶ。
 これで範囲を指定しろってことか。

 スマホの画面をタップするような感じで触れると、その範囲がふわぁーっと白い光で包まれた。

「お、綺麗になったな。よし、もう少しっと」

 あと意外なほど、魔力の消費量は少なかった。
 六回ほど魔法を使うと、ひとまず厨房は綺麗になった。

「最初からこの魔法で砦を掃除すればよかったな」

 さて、お次はテーブルと椅子のチェックだ。
 食堂に行き、音を立てないように……って難しいな。
 荷物運びのスキルを使うと、こう……音を立てないように効率よく物を運んだりとかもできるかな?
 まぁどうせリカバリーすればいいことだし、取るだけ取ってみるか。

 こっちは獲得も次のレベルに必要なポイントも1。
 レベル10でいいかと思ったけど、重い物を効率よく運ぶ──しか出ない。
 念のため鑑定スキル1だけ取ったけど、鑑定レベルを上げれば詳細が増えるかなぁ。
 けど鑑定はコストがかかるんだよ。

 ま、荷物運び20にしてみるか。

 すると鑑定画面が変わる。
 静かにそっと、素早く物を運べるようになる──という一文が追加された。

「ヨシッ」

 人が座ると壊れそうな椅子と、大丈夫な椅子を分けていく。
 まぁダメな方が多いよね、うん。
 
「添木でもすればいいんだけど、薪で丈夫そうなの探さなきゃな」

 まぁその辺りは明るくなってからだ。
 
 埃はなくなった。椅子やテーブルのチェックも済んだ。
 あとは……

 床に転がっているいろんな物を片付けなきゃな。
 空間清掃は、箒で掃く、雑巾がけをする──この二つを実行するだけだからなぁ。

 えぇっと、片付け関係のスキルは……『整理整頓』でいいのかな。
 パパっとやって俺も寝よう。

「スキルレベル30ぐらい上げてみるかな」

 スキルをセットすると、『ピコン』という音が頭の中で響いた。
 今度はなんだ?
 さっきロロたちがここで暮らすことが決まった時の音は、領民が増えたからだ。
 それは確認済みで、領民が増えたことで領主レベルも上がっている。

 でも今は領民が増えたタイミングじゃない。
 なんだ?

 そう思ってステータスボードをよく見ると、獲得可能スキル一覧にnewマークがついている物が。

「うへぇ……あったのかよ、このスキル」

 そこには確かに【アイテムボックス(new)】という文字があった。
 鑑定してみると、このスキル、前提条件があったほうだ。
 それによると、空間系魔法、荷物運び、整理整頓の三つのスキルレベルが、20以上であること──とある。

 そ、掃除を楽にするために取ったスキルが、こんな結果になるとは。

 いや、でもこの三つのスキルを20で固定すると、スキルポイントどれだけ減ってしまうんだ?
 荷物持ちと整理整頓は消費1ずつだから、合計40。空間清掃が1レベル毎に5消費なのでレベル20だと100。
 そして……アイテムボックスは獲得するのに消費ポイント50!?
 全部で190じゃん。

 テイミングスキルのように、リカバリーできないようにさせると、190も失ってしまう。

 うぅん……。
 いや、何も常時セットする必要もないか。
 食料調達や物資調達のために出かけて、荷物を運ぶときだけセットして、砦に戻って来たら荷物を出してリカバリーすればいい。
 残りポイント100ちょっとあれば、移動時に必要な戦闘スキルもセット出来る。

 うん!
 万能アイテムボックス、ゲットしたぜ!

 アイテムボックスって、どんなかな?
 ついでだし、ちょっとセットしてみよう。

 アイテムボックス、レベル1……ん?
 これってレベル5がマックスなのか。
 レベル2に上げるのにもポイント50必要なのか……これ、コストパフォーマンス的にどうなんだろう。

 まぁいいや。1だけセットっと。

 するとステータスボードに新しく『インベントリ』というタブが追加された。
 そこをタップすると、横6マス、縦5マスのウィンドウが開く。
 スクロールは可能。合計すると横6×縦10だ。六〇種類のアイテムを入れられるって訳だな。

 多いような少ないような。
 これは頻繁にアイテム整理必須だな。
 ま、どうせリカバリーの時には全部アイテムを出さなきゃいけないんだ。
 数時間の間に集められるアイテムの種類なんて、そう多くないだろう。

 あとは……。

「このスキルを使うと、流石にセリスも不審がるだろうなぁ。いっそスキルのことを話すべきか」

 ほんと、どうしよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない

カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。 一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。 そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。 ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!! その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。 自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。 彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう? ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。 (R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします) どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり) チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。 今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。 ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。 力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。 5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます! 5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)> 5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります! 5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

処理中です...