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16:猫人
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五人全員を二階へと運び、俺たちが使っているマットに寝かせた。
この世界の獣人族は、人間に動物の耳と尻尾が生えた姿──ではなく、人間サイズの動物が二足歩行になった姿が正解だ。
とはいえ、小柄な種族もいれば大柄な種族もいる。
倒れていたのは猫の姿をした獣人で、大人でも身長は一五〇センチあるかどうかという大きさだ。
そして五人の内四人は、明らかに子供だった。一番小さい子なんて、身長は一メートルもないだろう。
よくこんな小さな子が山登りを出来たもんだ。
「この子たちの母親かな、それともただ一緒にいただけの大人なのか。とにかくこの人の体が一番冷えきっている。ゴン、この人を暖めてやってくれないか? お前の毛なら暖かいだろう」
『ンメェー』
五人の中で唯一大人の獣人女性の横に、ゴンがぴったりと寄り添った。
薄い長そでの服とマフラーだけのこの女性は、自分の衣服を子供たちに着させていたようだ。
たぶん一番衰弱が激しいのもこの人だろう。
「う……んん」
「目が覚めたか!?」
四人の子供の中で一番背の高い、サビ猫模様の子が目を覚ましたようだ。
この子も自分の衣服を小さな子に貸していたんだろうな。薄着で、決して高山を歩く恰好ではない。
それでもあの女性よりは幾分マシだ。
「大丈夫かい? えぇっと……あ、お腹は空いてないかな?」
「ここ、は……」
「ここは砦だ。まぁ元というべきだけど。他の子たちも無事だよ。ただ元気とは言えない」
「か、母さんはっ」
母さん……あの女性はやっぱり母親なのか。
じゃあ五人は家族かな。
「お母さんは体が冷え切っている。君もだ。とにかく暖かくして、栄養のある物を食べないとな」
「た、たべも……の……。オ、オレはいいですっ。弟や妹たちに」
「心配しなくても、全員がお腹いっぱいになるだけの量はある。何日食べてないんだ?」
「え……と、十日。で、でも水と、少しの草は食べてたんだ」
食用の草か。でもあれでお腹を満たすには、相当な量を食べなければならないだろう。
全員、空腹の限界を超えていたはずだ。
「どのみち、何日もまともに食べてないなら、いきなり固形物を大量には食べさせられない。胃が受け付けないだろうからね」
「オニオンスープでき……目を覚ましたのね。よかったわ。じゃあお鍋を持って来るわね」
「セリス、俺が行くよ。鍋は流石に重いだろ」
「ありがとうディオン。じゃあ私はお皿とスプーンを、あるだけ持って上がるわ」
猫獣人の少年に休んでいるよう伝えて、セリスと二人で厨房へと向かった。
俺は鍋を運び、ストーブの上に置いたらもう一度一階へ。
井戸で水を汲み、別の鍋に入れてから二階へ。
部屋に入ると、少年の他に別の子が目を覚ましてセリスにスープを飲ませて貰っていた。
「よく噛んで食べるんだぞ。ほら、水分もしっかり摂って」
「あ、ありがとう……ございま……す」
水の入ったコップを受け取ると、少年は涙をぽろぽろと零しながらお礼を言った。
その声で目を覚ましたのか、残りの二人の子供たちが目を覚ます。
「ロ、ロ兄ちゃ……」
「クーク! 兄ちゃんここにいるぞ。みんないるぞ」
「みんな、みんな良かった。ファンファも、もう大丈夫だからね」
「リリ姉ちゃん。お母さん、は?」
四人の子供たちは目を覚ましたが、母親はまだ眠っている。
心配になって傍に寄ると、その顔は穏やかになっていた。
それが逆に不安になる。
子供たちに悟られないよう、そっと顔を近づけると──
「すぅー……すぅー……」
と寝息が聞こえて、ほっと胸を撫でおろした。
「大丈夫、眠っているだけだよ。今はゆっくり休ませて上げよう。ゴン、頼むな」
『ンメェ』
分かっているのか、ゴンは小さな声で返事をした。
「え!? そ、それってクラッシュゴード!?」
「しっ。お母さんが起きてしまうよ。大丈夫だ。ゴンは俺とテイミングの契約をしているから、決して人を襲ったりしないから」
「テイミング……お兄さんはテイマーさん、ですか?」
「成り行きでテイミングが成功しただけで、テイマーではないんだ。それよりロロ、くんでいいのかな?」
尋ねると、少年はゆっくり頷いた。
「オレはロロ、十三歳です。それから妹のリリ、その下の妹ファンファ、一番末子のクークです」
リリちゃんは茶トラ模様で十一歳。ファンファちゃんは真っ白な毛並みで九歳。末っ子のクーク君はアメリカンショートヘアに似た毛並みで、まだ六歳だという。
四人は久々に暖かいスープを飲んだといって大喜びだったが、お椀いっぱい飲んだところでやっぱりお腹が膨れてしまったようだ。
気持ちとしてはもっと食べたいようだけど、胃が受け付けない。
「少しずつ食べられる量を増やそうね。今は無理して食べると、吐き戻すかもしれないし」
「は、吐くのもったいニャい。明日、明日もこえ、食べれる?」
「クークッ。この人たちは貴重な食料を分けてくれたんだぞっ。甘えるんじゃないっ」
「ロロ、大丈夫だって。食糧は十分にある──というか、地下で栽培しているんだ」
「え、栽培……ですか?」
元気になったら畑を見せてやると約束すると、ロロは少し安心してクークに小さな声で謝っていた。
いいお兄ちゃんだ。
こんな状況だってのに、どん欲にならず謙虚な姿勢を崩そうとしない。
「ロロ、君たちは……北の大地からやって来たのかい?」
「はい……オレたち、北の大地から逃げてきたんです」
五人が山に登ることになった経緯を、ロロが話してくれることになった。
***********************************************
ね、猫人ですが、胃袋は動物仕様ではないので
た、玉葱大丈夫です><
この世界の獣人族は、人間に動物の耳と尻尾が生えた姿──ではなく、人間サイズの動物が二足歩行になった姿が正解だ。
とはいえ、小柄な種族もいれば大柄な種族もいる。
倒れていたのは猫の姿をした獣人で、大人でも身長は一五〇センチあるかどうかという大きさだ。
そして五人の内四人は、明らかに子供だった。一番小さい子なんて、身長は一メートルもないだろう。
よくこんな小さな子が山登りを出来たもんだ。
「この子たちの母親かな、それともただ一緒にいただけの大人なのか。とにかくこの人の体が一番冷えきっている。ゴン、この人を暖めてやってくれないか? お前の毛なら暖かいだろう」
『ンメェー』
五人の中で唯一大人の獣人女性の横に、ゴンがぴったりと寄り添った。
薄い長そでの服とマフラーだけのこの女性は、自分の衣服を子供たちに着させていたようだ。
たぶん一番衰弱が激しいのもこの人だろう。
「う……んん」
「目が覚めたか!?」
四人の子供の中で一番背の高い、サビ猫模様の子が目を覚ましたようだ。
この子も自分の衣服を小さな子に貸していたんだろうな。薄着で、決して高山を歩く恰好ではない。
それでもあの女性よりは幾分マシだ。
「大丈夫かい? えぇっと……あ、お腹は空いてないかな?」
「ここ、は……」
「ここは砦だ。まぁ元というべきだけど。他の子たちも無事だよ。ただ元気とは言えない」
「か、母さんはっ」
母さん……あの女性はやっぱり母親なのか。
じゃあ五人は家族かな。
「お母さんは体が冷え切っている。君もだ。とにかく暖かくして、栄養のある物を食べないとな」
「た、たべも……の……。オ、オレはいいですっ。弟や妹たちに」
「心配しなくても、全員がお腹いっぱいになるだけの量はある。何日食べてないんだ?」
「え……と、十日。で、でも水と、少しの草は食べてたんだ」
食用の草か。でもあれでお腹を満たすには、相当な量を食べなければならないだろう。
全員、空腹の限界を超えていたはずだ。
「どのみち、何日もまともに食べてないなら、いきなり固形物を大量には食べさせられない。胃が受け付けないだろうからね」
「オニオンスープでき……目を覚ましたのね。よかったわ。じゃあお鍋を持って来るわね」
「セリス、俺が行くよ。鍋は流石に重いだろ」
「ありがとうディオン。じゃあ私はお皿とスプーンを、あるだけ持って上がるわ」
猫獣人の少年に休んでいるよう伝えて、セリスと二人で厨房へと向かった。
俺は鍋を運び、ストーブの上に置いたらもう一度一階へ。
井戸で水を汲み、別の鍋に入れてから二階へ。
部屋に入ると、少年の他に別の子が目を覚ましてセリスにスープを飲ませて貰っていた。
「よく噛んで食べるんだぞ。ほら、水分もしっかり摂って」
「あ、ありがとう……ございま……す」
水の入ったコップを受け取ると、少年は涙をぽろぽろと零しながらお礼を言った。
その声で目を覚ましたのか、残りの二人の子供たちが目を覚ます。
「ロ、ロ兄ちゃ……」
「クーク! 兄ちゃんここにいるぞ。みんないるぞ」
「みんな、みんな良かった。ファンファも、もう大丈夫だからね」
「リリ姉ちゃん。お母さん、は?」
四人の子供たちは目を覚ましたが、母親はまだ眠っている。
心配になって傍に寄ると、その顔は穏やかになっていた。
それが逆に不安になる。
子供たちに悟られないよう、そっと顔を近づけると──
「すぅー……すぅー……」
と寝息が聞こえて、ほっと胸を撫でおろした。
「大丈夫、眠っているだけだよ。今はゆっくり休ませて上げよう。ゴン、頼むな」
『ンメェ』
分かっているのか、ゴンは小さな声で返事をした。
「え!? そ、それってクラッシュゴード!?」
「しっ。お母さんが起きてしまうよ。大丈夫だ。ゴンは俺とテイミングの契約をしているから、決して人を襲ったりしないから」
「テイミング……お兄さんはテイマーさん、ですか?」
「成り行きでテイミングが成功しただけで、テイマーではないんだ。それよりロロ、くんでいいのかな?」
尋ねると、少年はゆっくり頷いた。
「オレはロロ、十三歳です。それから妹のリリ、その下の妹ファンファ、一番末子のクークです」
リリちゃんは茶トラ模様で十一歳。ファンファちゃんは真っ白な毛並みで九歳。末っ子のクーク君はアメリカンショートヘアに似た毛並みで、まだ六歳だという。
四人は久々に暖かいスープを飲んだといって大喜びだったが、お椀いっぱい飲んだところでやっぱりお腹が膨れてしまったようだ。
気持ちとしてはもっと食べたいようだけど、胃が受け付けない。
「少しずつ食べられる量を増やそうね。今は無理して食べると、吐き戻すかもしれないし」
「は、吐くのもったいニャい。明日、明日もこえ、食べれる?」
「クークッ。この人たちは貴重な食料を分けてくれたんだぞっ。甘えるんじゃないっ」
「ロロ、大丈夫だって。食糧は十分にある──というか、地下で栽培しているんだ」
「え、栽培……ですか?」
元気になったら畑を見せてやると約束すると、ロロは少し安心してクークに小さな声で謝っていた。
いいお兄ちゃんだ。
こんな状況だってのに、どん欲にならず謙虚な姿勢を崩そうとしない。
「ロロ、君たちは……北の大地からやって来たのかい?」
「はい……オレたち、北の大地から逃げてきたんです」
五人が山に登ることになった経緯を、ロロが話してくれることになった。
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