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15:半地下の畑

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「見て! これって人参じゃない?」
「こっちは玉葱だぞ! 凄い……百年もの間、ずっと自生していたんだ」
「他にもないかしら?」

 キャベツと人参、それから玉葱。他にもないかと奥の畑部屋も確認してみたけど、残念ながら他にはなにもなかった。
 
「でも野菜らしい野菜が手に入った。これで冬も一安心だ」
「そうね、十分だわ。今はノームに任せて、増やすことを考えた方がいいかもね」
「あぁ、そうしよう」

 今はまだ森に行けばキノコや食べられる草も手に入る。それも雪が降り積もれば手に入らなくなる。
 ここの野菜を食べるのはそうなってからだ。

 セリスが奥の畑部屋に行って暫くすると、モルモットが二足歩行でそこそこやってきてキャベツを囲って踊り出す。
 ……楽しそうだ。放っておこう。

「じゃあ私たちは魚の続きね」
「そうだね。今日中に終わらせよう」





 遅くまでかかって魚を三枚おろしから塩漬けまで終わらせ、夕食後はリカバリーをしたらマットにダイブ。
 あぁ、木材があったらベッドを作り直したいなぁ。
 でもさすがに薪を使う訳にはいかないし、そもそも短くて利用すら出来ない。
 森で木を伐採するにしても、ここまで運ぶのは大変だ。

 ほんと、アイテムボックスが欲しいよ。
 獲得可能スキルには『収納』はないけれど『収納上手』ならある。
 試しにセットしてみたけど、なんというか……棚のどこにどれを置けばスッキル収まるか、そういうのが感覚的に分かる……という微妙なスキルだった。
 他にも『荷物持ち』というスキルも、もしかしてと思ったけれど、これもその名の通りな効果。
 何かを運ぶときにこのスキルがあれば、重たい物でも運べるようになるっていう効果だった。
 元の筋力数値にも影響するようで、それが低いといくら荷物持ちスキルを持っていてもたいしたものは運べないようだ。

 やっぱりダンジョン産のアイテムボックス以外は存在しないのかなぁ。
 いっそ領主ポイントでダンジョンを設置して、そこでゲットを狙ってみるとか?

 いやいや、必要ポイントまで遠すぎるじゃん。
 ダンジョン生成に必要なポイント、十万だったんだぞ。
 むりむり。

 今、ここの領民はセリスと、あとゴンもカウントされててひとりと一匹だ。
 週1で好感度と幸運度がポイントに加算されるけど、貰えるポイントが三桁になるのすら難しい状況だ。
 これ、両人が増えたらここも増えるのかなぁ?

 ま、それすら無理な話だけどね。

 さ、寝よう。
 明日も明後日も、食料集めに頑張らなきゃならないんだから。

 ストーブに薪を追加して、それから蝋燭の火を消してシーツに包まった。
 シーツだけじゃかなり冷え込む。ストーブの火を絶やせない。
 毛皮が取れる十分なサイズの獲物も仕留められるといい……な……。

『メェッ!』
「うわっ!? ゴ、ゴン、なんだよいきなり。せっかく眠れそうだったのに」
『メェ、メェェッ』

 来いと言っているのか、袖を咥えてぐいぐい引っ張ろうとしている。

「ん……どうしたの?」
「セリス。起こしてごめんよ。なんかゴンが……」
『メェーッ』

 まだ来いと引っ張ってる。下に何かあるのか?

「下に行けって言ってるみたいなんだけどさ」
「下に? まさか、モンスター!?」
「え?」

 モンスターがこの砦に!?

「しっ。音を拾うから、静かにしてて」

 そう言うとセリスは少しだけ尖った耳をそばだてた。

 息をのみ、俺も必死に聞き耳を立てるが……何も聞こえない。
 モンスターなのか?

「大変!? ディオン、誰かが助けを求めてるわ!」
「た、助けを!? え、じゃあ人なのか?」
「人語を話すモンスターでなければねっ」

 セリスがコートを手に部屋を出る。
 俺も慌てて剣と燭台を手に後を追った。

 砦の外は真っ暗で、夜の冷え込みは厳しい。
 それに風も意外に強い。

 その風に紛れて、男の──いや、男の子の声が聞こえてきた。

「誰か……誰もいないニャか? 誰も……」

 弱弱しい声は、そこで途切れてしまった。

「表の方だっ」

 建物をぐるっと半周すると、表の門の前で倒れている人影が見えた。

 人──というか獣人族だ!
 しかも五人!?
 だけどほとんど子供だ。

「おい、大丈夫か?」
「こんな小さな子たちが……ディオン、早く中に運びましょう。このままじゃ凍え死んじゃうわ」

 セリスと同じく、北の大地からやって来たのだろうか?
 こんな小さな子たちが……こんな険しい山道を……。

 せっかくここまでたどり着いたんだ、絶対に助けるからな。

「セリスッ、五人をひとまず厨房まで運ぼう。その先は俺が背負ってひとりずつ二階に運ぶから。その間に君はストーブに薪を追加して部屋を暖めてくれ」
「分かったわ」
「あ、それから──畑から玉葱を一つ掘り起こしてオニオンスープを」
「そうね。目が覚めた子から、少しでも栄養を摂って貰わなきゃ」

 抱え上げた獣人の子は凄く軽かった。
 子供なんて抱えたことはないけど、きっともっと重いはずだ。

 頑張れ、頑張れ。
 絶対に死ぬな!
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