異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔

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24話

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 なんてこった……。
 まさかこの世界の野菜の多くが、木に実るとは……。

「カケルが持って来た野菜と、見た目は同じなのにね」
「味も違うのですかねぇ?」
「ど、どうだろう……」

 商店の一角にある店で、野菜の種、もしくは苗を見に来た俺たち。
 売られている苗木・・には、小さな玉葱が実っていた。
 うそん。

 玉葱人参じゃがいもキャベツにもやし。これは俺が持って来たものがある。
 他のを買えばいいかと思ったが、店員さんの言葉で気が変わった。

「大きく育てば一本の木で玉葱が二百は育つわよ」
「え、本当ですか!?」
「そうよぉ。じゃがいもなんてその倍はつくんだから」

 じゃがいも……どんな風に実るんだろうか。ちょっと見てみたい。

 結局町で買ったのは、もやし以外のほとんど。野菜だけじゃなく、果物もちゃんと用意した。
 
 リュックの中に全部詰め込んで、次に向かったのは雑貨屋だ。
 そこでホットサンドメーカーの売り込みをしておく。
 実演するために店の前で火石を使ってホットサンドを焼いたため、通行人が興味津々な様子で見ていた。
 これもいい宣伝になるだろう。

「ドワーフの職人に量産を頼んでいるから、そのうち届くと思います」
「そりゃあ楽しみだ。冒険者や旅人相手に人気が出るだろ」

 雑貨屋の主人には、日本から持って来たホットサンドメーカーを一つ譲って宣伝して貰うことにした。
 その分、換金する為に坑道で拾ったムカデの触覚やクリスタルを良い値段で買い取って貰った。

「町での用事はこれで終わりだな。お金も出来たし、今日はこの町で宿を取ろう」
「お泊りですか!? わぁ、ルナ初めてですぅ」
「宿ってどんな感じかしら」
「スーモも初めてなの」

 俺と女の子三人とで部屋を分けようとしたが、

「ひ、必要ないわよ」
「一緒じゃないのですか?」
「スーモはカケルと一緒じゃないと、ヤなの」

 そんな女の子のセリフと聞いて、宿のオヤジがにまーっと笑って「じゃあ四人部屋で」と決めてしまった。
 マ、マジか。四人部屋って……。

 そ、そりゃあ一つのテントで一緒だったけど、一応中で仕切られていたし。
 ま、まぁ。一緒の部屋だからって、何かある訳じゃないもんな。
 そ、そうだよ。何もなければいいんだよ。

 で、本当に何もないまま夜が明け、翌朝はエルフの里に向かって出発した。
 帰りもドワーフの大空洞にはお世話になって、移動距離を短縮。

「ふぅ、やっと我が家に到着だな」
「疲れたですぅ」
「長老様に帰って来たことだけ伝えてくるわ」
「スーモ、ツリーハウスにお水あげるの」
「じゃあ手伝うよ」
「ルナもー」

 明日は苗木をどこに植えるか、長老たちと話し合わなきゃな。
 俺の家の近くなら、スーモの力も借りられるだろうが……さすがに木の数が多くて全部は無理だ。
 他のエルフの家周辺でも、同じ効果が得られるのかなぁ。





 エルフの里に戻って来た翌朝は、全員遅くまでぐっすり寝ていた。
 仕方ないよな。ずっと歩きっぱなしだったし。

「おはようぉ、カケルぅ」
「おぅ、おはようネフィ。さすがにお腹が空いて目が覚めたんだろう」
「うっ。そ、そそ、そんなこと──」

 っとここでお約束のように腹の虫がグーっと鳴いた。

「ち、ちがっ。ボクのじゃないっ」
「うん、知ってる。俺のんだから」
「あなただったのね!」

 はははー。だって朝ごはんも食べないでずっと寝てたんだぜ。お腹だって空くだろう。

「ふぇーん。ルナお腹空きましたぁ」
「スーモもぉ」

 少し遅れて起きてきたルナとスーモが揃って空腹を訴える。
 チャチャっと朝ごはんにしますかね。

「あ、長老様のところに行ったとき、朝食にでもってパンを頂いていたの」
「へぇ、俺たちがいない間にも、パン作りを頑張ってたのか」
「小麦が毎日実るから、使わなきゃ勿体ないって仰ってね」

 ま、毎日実っているのか。こりゃあ食料難にはならないな。

 長老から貰ったというパンは、昨日焼いたものらしい。
 魔法で湿気その他を防いでいるってことで、温度以外は焼きたてをキープできているそうだ。
 おかげで表面も硬くなっておらず、しっとりとしたままだ。

「んじゃあエッグサンドにするか」

 町で買って来た卵は百個。たくさん買ったら割引してくれるっていうんで、つい……。
 まぁ孵化させて、鶏を飼育する目的でもあるので問題ない。

 スーモはやっぱり食べないというので、朝採れ新鮮野菜でサラダを。
 俺たち三人はエッグサンドを焼いて──

「「いただきます」」
 
 久々の我が家での食事は、やっぱり落ち着いてていいな。

「お昼から長老の所に行って、苗木をどこに植えるか相談しないとな」
「そうね」
「早く育てたいの?」

 早く育てたい。だけどスーモの負担が重くなってしまう。

「当面はここの野菜と小麦の木で大丈夫だろ」

 俺がそう答えると、スーモは少し考えてから顔を上げた。

「大丈夫なの。他のスーモにもお手伝いしてもらうのっ」 

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