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22話
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「"無"!」
冒険者側の攻撃が始まった──と、俺以外の全員が察知し、それから暫くしてムカデが姿を現した。
働き蟻ならぬ働きムカデたちは、突然の襲撃に驚いて逃げ惑うそうだ。
「とにかく潰すのじゃ!」
ドワーフたちは柄の長い斧やメイスのようなものを振り回し、ギチギチと鳴くアントンムカデを次々と屠っていった。
俺の出番は今のところなさそう。
だからって見ているだけじゃない。スキルの練習も兼ねて、しっかり戦闘には参加する。
ただ俺のスキルって、僅かなフレンドリーファイア──つまり味方にちょっとでも触るとヤバいことになる。
「天井に張り付いてるのは任せてくれ!」
ムカデだけあって、壁や天井もカサカサ張り付いてやってくる。
ドワーフが低身長というのは、この世界でも常識だった。だから天井から襲ってくる奴らにはてこずっている。
黒い球体の『無』を投げ、効果時間ギリギリまで飛ばしまくる。
意識した方向に飛んでくれるが、指先をくいくいと操るように動かすと集中しやすいことが分かった。
「あんちゃんのそれ……すげーな」
「触れただけで穴を空けられんのか」
「それが転移で授かったスキルってやつかい?」
「えぇ、そうなんです」
異世界人の召喚を良く知るドワーフたちは、説明しなくてもすぐに納得したようだ。
まだ連続使用が出来ないので、四発撃ったらルナとネフィに任せてちょっと休憩。
座るだけでも回復は早く、十五分ほど休憩したら二人と交替した。
ドワーフも仲間同士、同じように交替で休憩をしている。
「これ、全滅させるまで続くのかな」
「女王アントンムカデをやっちまえば、あとは穴を塞いでそのまんまにしててもいいんだがな」
「女王以外のアントンムカデの寿命は長くねぇ。まぁ半年から一年ってとこだな」
女王を倒してしまえば卵を産む奴がいなくなる。残りは寿命で死ぬのを待てばいい。
とはいっても、その女王が巣穴の奥の方にいるんだろうしなぁ。
「さて、そいじゃあわしらは女王の所に行くかの」
「え? 行くって……どうやって?」
そう尋ねると、ドワーフたちはにぃーっと笑った。
その手にはいつの間にかツルハシと、それからスコップが握られていた。
掘るのかよ……。
「あ、スキルレベルがいつの間にか上がってた」
「あら、よかったじゃない」
「おめでたですぅー」
「お、おめでたなの」
妊娠じゃねーって。
気づかない間にレベル4になってた。連続して使用できる回数が増えたからってのもあるんだろうな。
効果時間は19秒まで伸びたか。これ、レベル1上がるごとに+3秒されていくみたいだ。
ドワーフが穴を掘っている間、俺たちがアントンムカデの撃退役になった。
働きムカデが出てくるようになったな。
「俺がスキルで穴を掘った方が早い気がするけど、どうなんだろう?」
「は? あんちゃんのそれ、穴掘りもできるのか?」
「穴掘りっていうか……土を消滅させるっていうか」
とにかく見せた方が早いな。
ドワーフを掻き分け、彼らが掘っていた部分に、薄い円形の『無』を押し当てる。
レベル4になって結構大きくなったそれは、薄く伸ばすと結構な大きさになった。しゃがんだ状態で壁にぐーっと押し当てればそのまま進めるほどだ。
「おいおい、なんじゃそりゃ」
「掘った土はどうした?」
「いや、消えていってんだ。かーっ、便利だねぇ」
「だが鉱石まで消し去ってんな……もったいねぇ」
まぁそこは仕方ないじゃん。
サクっと終わらせて町に行きたいんだし。
なんて思っていると、突然「ドチャ」という音が聞こえた。
『グギギギギギィィィッ』
「は?」
目の前にはグロテスクなものが。
こう……内臓ーとか、筋肉ーとか、うげぇーっ。
「カケル、女王アントンムカデですぅ!」
「まだ生きてるわよっ」
「じょ、女王!?」
見上げると、鎌首をもたげた巨大ムカデがいた。
どうやら壁にもたれかかっていた所を、俺が貫通させてしまったようだ。
デカい……5メートルはあるんじゃないか?
その巨体の真ん中辺りが一部欠損しているのは俺のせいだな。
『ギリリリリィッ』
「"無"」
ブレード状にした『無』で、目の前の胴を真っ二つにする。
『ギョエエエェェェッ』
そのままブレードを投げて、頭部も真っ二つにした。
これで死ぬよな?
うげ、真っ二つにしてるのに、下半身がカサカサ動いてる。
き、きめぇ。
「あの、あれってまだ生きてるってこと?」
振り向いて尋ねると、口をあんぐり開けたドワーフ一行が立っていた。
冒険者側の攻撃が始まった──と、俺以外の全員が察知し、それから暫くしてムカデが姿を現した。
働き蟻ならぬ働きムカデたちは、突然の襲撃に驚いて逃げ惑うそうだ。
「とにかく潰すのじゃ!」
ドワーフたちは柄の長い斧やメイスのようなものを振り回し、ギチギチと鳴くアントンムカデを次々と屠っていった。
俺の出番は今のところなさそう。
だからって見ているだけじゃない。スキルの練習も兼ねて、しっかり戦闘には参加する。
ただ俺のスキルって、僅かなフレンドリーファイア──つまり味方にちょっとでも触るとヤバいことになる。
「天井に張り付いてるのは任せてくれ!」
ムカデだけあって、壁や天井もカサカサ張り付いてやってくる。
ドワーフが低身長というのは、この世界でも常識だった。だから天井から襲ってくる奴らにはてこずっている。
黒い球体の『無』を投げ、効果時間ギリギリまで飛ばしまくる。
意識した方向に飛んでくれるが、指先をくいくいと操るように動かすと集中しやすいことが分かった。
「あんちゃんのそれ……すげーな」
「触れただけで穴を空けられんのか」
「それが転移で授かったスキルってやつかい?」
「えぇ、そうなんです」
異世界人の召喚を良く知るドワーフたちは、説明しなくてもすぐに納得したようだ。
まだ連続使用が出来ないので、四発撃ったらルナとネフィに任せてちょっと休憩。
座るだけでも回復は早く、十五分ほど休憩したら二人と交替した。
ドワーフも仲間同士、同じように交替で休憩をしている。
「これ、全滅させるまで続くのかな」
「女王アントンムカデをやっちまえば、あとは穴を塞いでそのまんまにしててもいいんだがな」
「女王以外のアントンムカデの寿命は長くねぇ。まぁ半年から一年ってとこだな」
女王を倒してしまえば卵を産む奴がいなくなる。残りは寿命で死ぬのを待てばいい。
とはいっても、その女王が巣穴の奥の方にいるんだろうしなぁ。
「さて、そいじゃあわしらは女王の所に行くかの」
「え? 行くって……どうやって?」
そう尋ねると、ドワーフたちはにぃーっと笑った。
その手にはいつの間にかツルハシと、それからスコップが握られていた。
掘るのかよ……。
「あ、スキルレベルがいつの間にか上がってた」
「あら、よかったじゃない」
「おめでたですぅー」
「お、おめでたなの」
妊娠じゃねーって。
気づかない間にレベル4になってた。連続して使用できる回数が増えたからってのもあるんだろうな。
効果時間は19秒まで伸びたか。これ、レベル1上がるごとに+3秒されていくみたいだ。
ドワーフが穴を掘っている間、俺たちがアントンムカデの撃退役になった。
働きムカデが出てくるようになったな。
「俺がスキルで穴を掘った方が早い気がするけど、どうなんだろう?」
「は? あんちゃんのそれ、穴掘りもできるのか?」
「穴掘りっていうか……土を消滅させるっていうか」
とにかく見せた方が早いな。
ドワーフを掻き分け、彼らが掘っていた部分に、薄い円形の『無』を押し当てる。
レベル4になって結構大きくなったそれは、薄く伸ばすと結構な大きさになった。しゃがんだ状態で壁にぐーっと押し当てればそのまま進めるほどだ。
「おいおい、なんじゃそりゃ」
「掘った土はどうした?」
「いや、消えていってんだ。かーっ、便利だねぇ」
「だが鉱石まで消し去ってんな……もったいねぇ」
まぁそこは仕方ないじゃん。
サクっと終わらせて町に行きたいんだし。
なんて思っていると、突然「ドチャ」という音が聞こえた。
『グギギギギギィィィッ』
「は?」
目の前にはグロテスクなものが。
こう……内臓ーとか、筋肉ーとか、うげぇーっ。
「カケル、女王アントンムカデですぅ!」
「まだ生きてるわよっ」
「じょ、女王!?」
見上げると、鎌首をもたげた巨大ムカデがいた。
どうやら壁にもたれかかっていた所を、俺が貫通させてしまったようだ。
デカい……5メートルはあるんじゃないか?
その巨体の真ん中辺りが一部欠損しているのは俺のせいだな。
『ギリリリリィッ』
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『ギョエエエェェェッ』
そのままブレードを投げて、頭部も真っ二つにした。
これで死ぬよな?
うげ、真っ二つにしてるのに、下半身がカサカサ動いてる。
き、きめぇ。
「あの、あれってまだ生きてるってこと?」
振り向いて尋ねると、口をあんぐり開けたドワーフ一行が立っていた。
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