21 / 97
21:こいつら成仏してくれるんだろうか
しおりを挟む
案の定、アンデッドが魔法の武具を装備することは出来なかった。
いや、できたとしても、命がけだろうな。うん。
「ねぇ、レイジくん。思うんだけど、アンデッドに魔法の武具は無理なんじゃない?」
「うん。俺もそう言ったんだけど……おい、本当にアンデッドでも装備できる武具ってあるのか?」
頭上のアブソディラスは辺りをきょろきょろし、それらしい物を探しているようだ。
『あるある。じゃがその為にはやらねばならぬことがあるぞい』
「やらなければならないこと?」
『んむ。武具に呪いを付与することじゃ』
きょろきょろするのを止めたアブソディラスは、ドヤ顔でそう言った。
呪いを……付与?
「呪いを付与した程度で装備できるようになるのかしら」
と、アンデッドに通訳してもらったソディアが言う。
『ただの呪いではない。死霊使いであり、こ奴らの主人であるミタマが付与することが大事なのじゃ』
「じゃあ、死霊使い専用の呪い魔法なのか?」
『んむ。なかなか難しい魔法じゃぞ。アンデッドが触れられるように、闇の力を付与せねばならぬが、実際に呪いを付けてはいかんのじゃ』
呪いの魔法なのに呪うなって……面倒くさい制約だなぁ。
まずはその呪文というのを教えて貰う。
そして呪文と共にイメージしなければならないのだとか。どういう呪いにするのかを。
でも実際に呪いを掛けてはいけない。
あくまで武具の性質を、闇属性にするだけだ。
『しかもじゃ。時間制限付きじゃと、その都度掛けなおさねばならなくなる。じゃから永続的な効果になるよう調整せねばならぬぞ。さもなくば――』
歩いている途中で効果が切れ、気づいたらアンデッド浄化……なんてことになるぞと脅す。
俺にではなくアンデッドたちに向かって。
『ひぃぃぃ』
『ゆ、勇者様ぁぁぁぁっ』
あぁ、また影に潜っちゃったよ。
静かになったところで作業を開始しますかね。
「とりあえずテスト掛けするけど、価値の低いもので試したいな」
「あら、どうして?」
「いや、普通に呪いが付与されたら、その武具が使えなくなるだろ?」
「解除すればいいじゃない」
あ、なるほど。
じゃあやるか。
「"常闇に住まう亡者のひと欠けら。血塗られし紅の闇を纏わせ、その呪いを与えん――混沌闇付"はいっ」
なんてこっ恥ずかしい呪文だよ。
この世界は厨二病で溢れかえっているのか。
頭を抱えながら唱えた呪文だったが、適当に選んだ片手剣は無反応。
『うぅん。何故恥ずかしがるのじゃ? ちゃんとイメージせねば、呪えるものも呪えなくなるぞい』
「呪いの魔法ですもの。詠唱中は恥ずかしがるんじゃなくって、誰かを呪うつもりで唱えないとダメよ」
なんでこの二人は似たような反応を示すんだろうか。
誰かを呪うつもりと言われてもなぁ。
『主よ。これまで起こった嫌なことを思い出してみよ。そして復讐を誓うような、そんな気持ちで詠唱するのじゃ』
「嫌なこと……ねぇ」
嫌なこと……あぁ、あれは五歳ぐらいだったか。
辛うじて記憶に残ってるものだけど、思えば初めて怖いと思ったな。
幼稚園の送迎バスが来て、ドアが開いた瞬間……。
――僕も一緒に行くよ。
そう言って同じ年頃の男の子が出て来た。
ただし、顔の半分が吹っ飛んでいたけどな。
もうそのリアルな姿が、当時の、いや今の俺でもかなりのものだ。
そのまま憑りつかれ、気絶し、ひいばあちゃん宅に担ぎ込まれたっていう。
たぶん、人生初の憑りつかれはこの時だな。
そりゃあもう、ひいばあちゃんは心配したもんさ。
だから簡単除霊方法も教えてくれたんだが、当時はまだうまく唱えられなくって、なんどもひいばあちゃん宅に駆け込んだな。
まったく。俺は何もやってないのに、なんで憑りつくんだよ!
人様に憑りつく暇があったら、成仏しやがれってんだ!
『よし、今じゃ!』
「お、おう! "常闇に住まう亡者のひと欠けら。血塗られし紅の闇を纏わせ、その呪いを与えん――混沌闇付"はいっ!」
呪文の完成と共に、今度は片手剣に紅色の光が宿る――と思ったら、純白の光に変わった?
な、なんかこれ……神々しくも見えるんだけど。
『ミ、ミタマよ……どうして呪いの呪文でそうなってしまうんじゃ?』
「え? な、何かマズいことに?」
「レイジくん……何故呪いの呪文でこんなことになるの?」
同じツッコミを上から横から貰い、更に足元からはアンデッドの悲鳴が漏れ出している。
いったいこの付与魔法がどうしたっていうんだ?
「レイジくん。その剣。聖属性が付与されているわよ」
「……え?」
聖、属性?
『あぁぁぁっ。やっぱり勇者様は、わしらを強制成仏させる気なんじゃぁ~っ』
『酷いっす! 惨いっす!』
『酷い……アタシとのことは遊びだったのね!』
『カラカラカラ』
自分の影にこの剣を突き立てたら、こいつら成仏してくれるんだろうか?
いや、できたとしても、命がけだろうな。うん。
「ねぇ、レイジくん。思うんだけど、アンデッドに魔法の武具は無理なんじゃない?」
「うん。俺もそう言ったんだけど……おい、本当にアンデッドでも装備できる武具ってあるのか?」
頭上のアブソディラスは辺りをきょろきょろし、それらしい物を探しているようだ。
『あるある。じゃがその為にはやらねばならぬことがあるぞい』
「やらなければならないこと?」
『んむ。武具に呪いを付与することじゃ』
きょろきょろするのを止めたアブソディラスは、ドヤ顔でそう言った。
呪いを……付与?
「呪いを付与した程度で装備できるようになるのかしら」
と、アンデッドに通訳してもらったソディアが言う。
『ただの呪いではない。死霊使いであり、こ奴らの主人であるミタマが付与することが大事なのじゃ』
「じゃあ、死霊使い専用の呪い魔法なのか?」
『んむ。なかなか難しい魔法じゃぞ。アンデッドが触れられるように、闇の力を付与せねばならぬが、実際に呪いを付けてはいかんのじゃ』
呪いの魔法なのに呪うなって……面倒くさい制約だなぁ。
まずはその呪文というのを教えて貰う。
そして呪文と共にイメージしなければならないのだとか。どういう呪いにするのかを。
でも実際に呪いを掛けてはいけない。
あくまで武具の性質を、闇属性にするだけだ。
『しかもじゃ。時間制限付きじゃと、その都度掛けなおさねばならなくなる。じゃから永続的な効果になるよう調整せねばならぬぞ。さもなくば――』
歩いている途中で効果が切れ、気づいたらアンデッド浄化……なんてことになるぞと脅す。
俺にではなくアンデッドたちに向かって。
『ひぃぃぃ』
『ゆ、勇者様ぁぁぁぁっ』
あぁ、また影に潜っちゃったよ。
静かになったところで作業を開始しますかね。
「とりあえずテスト掛けするけど、価値の低いもので試したいな」
「あら、どうして?」
「いや、普通に呪いが付与されたら、その武具が使えなくなるだろ?」
「解除すればいいじゃない」
あ、なるほど。
じゃあやるか。
「"常闇に住まう亡者のひと欠けら。血塗られし紅の闇を纏わせ、その呪いを与えん――混沌闇付"はいっ」
なんてこっ恥ずかしい呪文だよ。
この世界は厨二病で溢れかえっているのか。
頭を抱えながら唱えた呪文だったが、適当に選んだ片手剣は無反応。
『うぅん。何故恥ずかしがるのじゃ? ちゃんとイメージせねば、呪えるものも呪えなくなるぞい』
「呪いの魔法ですもの。詠唱中は恥ずかしがるんじゃなくって、誰かを呪うつもりで唱えないとダメよ」
なんでこの二人は似たような反応を示すんだろうか。
誰かを呪うつもりと言われてもなぁ。
『主よ。これまで起こった嫌なことを思い出してみよ。そして復讐を誓うような、そんな気持ちで詠唱するのじゃ』
「嫌なこと……ねぇ」
嫌なこと……あぁ、あれは五歳ぐらいだったか。
辛うじて記憶に残ってるものだけど、思えば初めて怖いと思ったな。
幼稚園の送迎バスが来て、ドアが開いた瞬間……。
――僕も一緒に行くよ。
そう言って同じ年頃の男の子が出て来た。
ただし、顔の半分が吹っ飛んでいたけどな。
もうそのリアルな姿が、当時の、いや今の俺でもかなりのものだ。
そのまま憑りつかれ、気絶し、ひいばあちゃん宅に担ぎ込まれたっていう。
たぶん、人生初の憑りつかれはこの時だな。
そりゃあもう、ひいばあちゃんは心配したもんさ。
だから簡単除霊方法も教えてくれたんだが、当時はまだうまく唱えられなくって、なんどもひいばあちゃん宅に駆け込んだな。
まったく。俺は何もやってないのに、なんで憑りつくんだよ!
人様に憑りつく暇があったら、成仏しやがれってんだ!
『よし、今じゃ!』
「お、おう! "常闇に住まう亡者のひと欠けら。血塗られし紅の闇を纏わせ、その呪いを与えん――混沌闇付"はいっ!」
呪文の完成と共に、今度は片手剣に紅色の光が宿る――と思ったら、純白の光に変わった?
な、なんかこれ……神々しくも見えるんだけど。
『ミ、ミタマよ……どうして呪いの呪文でそうなってしまうんじゃ?』
「え? な、何かマズいことに?」
「レイジくん……何故呪いの呪文でこんなことになるの?」
同じツッコミを上から横から貰い、更に足元からはアンデッドの悲鳴が漏れ出している。
いったいこの付与魔法がどうしたっていうんだ?
「レイジくん。その剣。聖属性が付与されているわよ」
「……え?」
聖、属性?
『あぁぁぁっ。やっぱり勇者様は、わしらを強制成仏させる気なんじゃぁ~っ』
『酷いっす! 惨いっす!』
『酷い……アタシとのことは遊びだったのね!』
『カラカラカラ』
自分の影にこの剣を突き立てたら、こいつら成仏してくれるんだろうか?
0
お気に入りに追加
679
あなたにおすすめの小説
巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。
蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。
此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。
召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。
だって俺、一応女だもの。
勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので…
ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの?
って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!!
ついでに、恋愛フラグも要りません!!!
性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。
──────────
突発的に書きたくなって書いた産物。
会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。
他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。
4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。
4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。
4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。
21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!
【完結】 魔王討伐のために勇者召喚されたんだが、チートスキル【未来予知】は戦闘向きではない件〜城から追放されて始まる異世界生活〜
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
町中高校二年B組の生徒十人は勇者召喚の対象者として、異世界に転移させられた。
生徒たちはそれぞれに異なるスキルを有した状態になり、召喚の儀を行った王様に魔王討伐を懇願される。
しかし、そこで魔王の襲撃を受けて生徒たちは散り散りになる。
生徒の一人、吉永海斗は危機的状況を予測する魔眼で難を逃れるが、魔王を倒すに値しないスキルと見なされて城から放り出される。
右も左も分からない状況でギルドを頼るものの、門前払いになって途方に暮れる。
そんな彼がたどり着いたのは、深紅の旅団と呼ばれる多種族の集まりだった。
旅団の創設にはある目的があり、やがて海斗は協力するか否かを迫られる。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる