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30:神様が増えた
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女神様が俺のテントの中に……。
いや違う。
女神様の後ろに他の神様もいる!!
「あ、あの」
「ふふ、大丈夫ですよ。他の方はぐっすりお休みですから」
「え、銀次郎も?」
「ぎんじろー? えっと、テントの外で薪を咥えたまま眠っているホープドラゴンですか? 随分と面白いお友達が出来ましたね」
寝てる……女神様に眠らせられたのか?
と思ってテントの外に出てみると、鼻提灯作ってぐっすりだ。
これはきっと、素で寝ているな。
テントの外には男の神様が三人、それと森では見なかった少女がひとり立っていた。
少女以外はみんなにこにこ顔で、ぜんざいを持っている。
「久しぶりだな、神楽拓海よ」
「元気にしていたか? 体は鍛えているか?」
「脳みそまで筋肉にせぬようにな」
「あ、はい。ははは」
いつの間にか俺の名前を……。ま、神様だしな。
「それで拓海さん。これ」
「あ、はい女神様。これは──」
ひとまず器がいるな。
町で買い足した分を合わせても、お椀は四つしかない。しかも銀次郎用はお椀というより大盛用丼だ。
ひとりはクッカーにするかな。あとメスティンも使おう。
「私はこちらの器で頂きます。ぜひ、器に合う量をお願いいたしますね」
豊穣の女神様が、銀次郎専用の特大丼を手に取った。
そ、その器に合う量……ぜんざい五袋分ぐらいあるんだけどな。
「ずるいぞマリー。俺様だってその器がいい!」
「イヤです。早い者勝ちですもの」
「神楽よ。我はこの器でおかわりを用意してくれるだろうか?」
「おぉ、さすが知恵の神オルロエタス。よし、俺様もおかわりを頼む」
おかわりって……食べる前から言うの?
はぁ、これは忙しくなるぞ。
おかわりのたびにお湯ぽちゃしていたら面倒くさい。
だからこの前みたいに鍋にぜんざいの中身を入れて、くつくつと温めた。
「はふっはふっ。んもほぉー……伸びるなこれは」
「この白いのはなんでしょう?」
「あ、それは餅です。喉に詰まらせると危ないから、よく噛んでくださいね」
「「分かった」」
嬉しそうに頷く五人の神様たち。
ただひとり、新顔の少女は手にしたぜんざいを不思議等に見ていた。
「ラスリンさん。大丈夫ですよ。さぁ召し上がって」
「あ、あの。その子は?」
もしかして神様の世話役をしている見習い神官とか?
「まぁ! 私たちってば、ラスリンさんをご紹介していませんでしたね」
「そうであったな。すまぬ、神楽拓海。この者、幼子の姿をしているが、これでも神だ」
「幸運の女神ラスリンちゃんだよなー」
「デュ、デュアンさん。ラスリンちゃんは止めてください。恥ずかしいです」
「め、女神様!?」
こんな子供まで神様とは。
見た目は関係ないか。
「は、はじめまして。私、ラスリンと言います。あの、幸運の女神、やらせて頂いています」
「え、やらせて貰ってる? 神様って立候補制とか、そういうものなんですか?」
「へ!? あ、ぃぇ、ぁ……」
「ラスリンさんはこういう性格の方、なんですよ」
豊穣の女神様が笑みを浮かべて、ラスリンさまの頭を撫でる。
撫でられて頬を染めるが、ラスリンさまは嬉しそうだ。
「ラスリンさま。どうぞ、召し上がってください」
「は、はい。いただきます」
ふぅー、ふぅーと二度息を吹きかけ、それからそっと口を付けた。
「あつっ」
「え、まだ熱いですか?」
お椀についでからもう結構経ってんだけどなぁ。
幸運の女神様は猫舌か。
今度は念入りにふーふーしてから、ようやく一口くちに含んだ。
「ぁ……おいしぃ」
「でしょう?」
「はい、マリーティアさん。とっても甘くて、ほっとする優しいお味です」
そう言って笑うラスリンさまは、少し大人びて見えた。
「おかわり!」
「あ、はい」
「我も頼もう」
「私もだ」
「あぁ、私もおかわりしたくなってきました。待っててください。今これを食べてしまいますから」
いや、豊穣の女神様……みんなに合わせなくなっていいのに。
おかわりをよそっていると、小さな手が伸びて来た。
幸運の女神ラスリンさまだ。
恥じらうような素振りでお椀を差し出している。
よそってやると、また恥じらうようにしてお椀を受け取った。
念入りにふーふーしている姿は、さっきと違って子供っぽい。
結局、神様たちはひとり当たり七袋分のぜんざいを平らげた。
最後に全員、緑茶をすすって──
「「ごちそうさまでした」」
「はい、お粗末さまでした」
ぜんざいパーティーはお開きとなった。
「じ、じゃあ……私からも、その……加護、お渡ししますね」
「え、幸運の女神様から!?」
「はい。先ほど仰っていた、お風呂のこと……頑張らせて頂きます」
いや違う。
女神様の後ろに他の神様もいる!!
「あ、あの」
「ふふ、大丈夫ですよ。他の方はぐっすりお休みですから」
「え、銀次郎も?」
「ぎんじろー? えっと、テントの外で薪を咥えたまま眠っているホープドラゴンですか? 随分と面白いお友達が出来ましたね」
寝てる……女神様に眠らせられたのか?
と思ってテントの外に出てみると、鼻提灯作ってぐっすりだ。
これはきっと、素で寝ているな。
テントの外には男の神様が三人、それと森では見なかった少女がひとり立っていた。
少女以外はみんなにこにこ顔で、ぜんざいを持っている。
「久しぶりだな、神楽拓海よ」
「元気にしていたか? 体は鍛えているか?」
「脳みそまで筋肉にせぬようにな」
「あ、はい。ははは」
いつの間にか俺の名前を……。ま、神様だしな。
「それで拓海さん。これ」
「あ、はい女神様。これは──」
ひとまず器がいるな。
町で買い足した分を合わせても、お椀は四つしかない。しかも銀次郎用はお椀というより大盛用丼だ。
ひとりはクッカーにするかな。あとメスティンも使おう。
「私はこちらの器で頂きます。ぜひ、器に合う量をお願いいたしますね」
豊穣の女神様が、銀次郎専用の特大丼を手に取った。
そ、その器に合う量……ぜんざい五袋分ぐらいあるんだけどな。
「ずるいぞマリー。俺様だってその器がいい!」
「イヤです。早い者勝ちですもの」
「神楽よ。我はこの器でおかわりを用意してくれるだろうか?」
「おぉ、さすが知恵の神オルロエタス。よし、俺様もおかわりを頼む」
おかわりって……食べる前から言うの?
はぁ、これは忙しくなるぞ。
おかわりのたびにお湯ぽちゃしていたら面倒くさい。
だからこの前みたいに鍋にぜんざいの中身を入れて、くつくつと温めた。
「はふっはふっ。んもほぉー……伸びるなこれは」
「この白いのはなんでしょう?」
「あ、それは餅です。喉に詰まらせると危ないから、よく噛んでくださいね」
「「分かった」」
嬉しそうに頷く五人の神様たち。
ただひとり、新顔の少女は手にしたぜんざいを不思議等に見ていた。
「ラスリンさん。大丈夫ですよ。さぁ召し上がって」
「あ、あの。その子は?」
もしかして神様の世話役をしている見習い神官とか?
「まぁ! 私たちってば、ラスリンさんをご紹介していませんでしたね」
「そうであったな。すまぬ、神楽拓海。この者、幼子の姿をしているが、これでも神だ」
「幸運の女神ラスリンちゃんだよなー」
「デュ、デュアンさん。ラスリンちゃんは止めてください。恥ずかしいです」
「め、女神様!?」
こんな子供まで神様とは。
見た目は関係ないか。
「は、はじめまして。私、ラスリンと言います。あの、幸運の女神、やらせて頂いています」
「え、やらせて貰ってる? 神様って立候補制とか、そういうものなんですか?」
「へ!? あ、ぃぇ、ぁ……」
「ラスリンさんはこういう性格の方、なんですよ」
豊穣の女神様が笑みを浮かべて、ラスリンさまの頭を撫でる。
撫でられて頬を染めるが、ラスリンさまは嬉しそうだ。
「ラスリンさま。どうぞ、召し上がってください」
「は、はい。いただきます」
ふぅー、ふぅーと二度息を吹きかけ、それからそっと口を付けた。
「あつっ」
「え、まだ熱いですか?」
お椀についでからもう結構経ってんだけどなぁ。
幸運の女神様は猫舌か。
今度は念入りにふーふーしてから、ようやく一口くちに含んだ。
「ぁ……おいしぃ」
「でしょう?」
「はい、マリーティアさん。とっても甘くて、ほっとする優しいお味です」
そう言って笑うラスリンさまは、少し大人びて見えた。
「おかわり!」
「あ、はい」
「我も頼もう」
「私もだ」
「あぁ、私もおかわりしたくなってきました。待っててください。今これを食べてしまいますから」
いや、豊穣の女神様……みんなに合わせなくなっていいのに。
おかわりをよそっていると、小さな手が伸びて来た。
幸運の女神ラスリンさまだ。
恥じらうような素振りでお椀を差し出している。
よそってやると、また恥じらうようにしてお椀を受け取った。
念入りにふーふーしている姿は、さっきと違って子供っぽい。
結局、神様たちはひとり当たり七袋分のぜんざいを平らげた。
最後に全員、緑茶をすすって──
「「ごちそうさまでした」」
「はい、お粗末さまでした」
ぜんざいパーティーはお開きとなった。
「じ、じゃあ……私からも、その……加護、お渡ししますね」
「え、幸運の女神様から!?」
「はい。先ほど仰っていた、お風呂のこと……頑張らせて頂きます」
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