異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔

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26:友人のアドバイス

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「えぇっと、防寒具と鍋、食器。念のための予備の毛布っと」
「食材はどうする?」
「なるべく荷物を多くしたくないし、手持ちの食材でなんとかしよう」
『我は構わぬぞ。ぜんざいの頻度を上げてくれればな』

 お湯ぽちゃで温めるレトルトタイプのぜんざいだから、用意するのが面倒くさいんだよなぁ。
 こんなことならお湯を注ぐだけのカップのやつにすりゃよかった。
 でもレトルトの方が、味が濃くて美味いんだよなぁ。粒もしっかり入ってるし。

「手持ちのと仰っていますけど、そのリュックには銀さましか入っていないのでは?」

 クロエは首を傾げて心配そうに俺たちを見る。
 彼女にはまだカートのことやテントのこと、そして俺のことは話をしていない。
 人前でその話をする訳にも行かないし、さっさと買い物を済ませて宿へと向かった。

「今日は二部屋取ろうか。ベッド三つの部屋なんてないしさ」
「二人部屋とひとり部屋で二部屋取るより、四人部屋の方が安いじゃない」
「そ、そうなんだけどさ」
「あら、わたくしのことでしたらお気になさらないで」
「だって。タック、節約できるところは節約しなきゃ」

 クロエはいいとして、アイラはもう少し年頃の女の子らしく、恥じらいを持つべきだと思うんだけどな。





「はぁ~。お風呂。ふふふぅ~ん、ふふ、お・ふ・ろぉ」

 先に風呂を終えて部屋で待ってると、鼻歌交じりのクロエの声が廊下から聞こえて来た。
 部屋へと戻って来たクロエは、かなりご満悦なようだ。

「はぁ~。たかが温かいお湯に浸かるだけ、と思っていましたが、なぁんて気持ちいいんでしょう」
「風呂が気に入ったようだな」
「えぇ。普段はたま~に水浴びする程度で、温かいお湯に浸かったことはありませんでしたから」

 巨大なドラゴンじゃ、入れるような風呂がないもんなぁ。

「泡で体を洗うなんてのも、初めての体験ですわ」
「最初、石鹸を食べようとしたから慌てたわよ」
「ア、アイラさん、言わないでっ。恥ずかしいですわっ」

 なんか、二人で風呂に入って仲が良くなった……みたいな?
 
「銀さまもお入りなったらよろしいのに」
「ギュイィ」
「ん?」

 あ、そうだった。クロエには言ってなかったな。

「あ、ノゾムさま。さっき食堂で美味しそうなデザートを見つけたんですけど」
「キュッ! イキュイキュ!!」
「タック、ちょっと行ってくるわね」
「うん、じゃあお金、渡しておくよ」

 アイラが銀次郎を連れて部屋を出ていく。その姿をクロエが物欲しそうな顔で見つめた。
 
「それで、銀さまはどうしてお喋りになられませんの?」
「うん。今は小人ドラゴンのフリをしているんだ」
「小人ドラゴン!? ど、どうしてそんな雑魚モンスターのフリなんかっ」
「うん。誰かさんが孵化直後の銀次郎を襲ったりしたから、力が完全に戻ってないんだ」
「ち、力が? それはいったい、どういうことですの」

 どうって、孵化直後は体力魔力が低下してるって……。
 え、知らないのか?

「わ、わたくしは、孵化後の殿方を負かせれば、殿方のハートを掴めるって……」
「教えて貰った、と?」

 クロエはこくりと頷く。

「お友達、ですの。恋愛の先輩でもありますわ」
「え、じゃあ相手を襲って強さを示すことが、ドラゴン流の告白方法だってのは本当のことなのか?」
「……わか……りませんわ。銀さまのあの嫌がりようを見れば、彼女の言ったことが真実だと思うのは……」

 もし、クロエの友人が嘘を教えたとして、なんの得があるんだ?
 考えられるとすると、その友人も実は銀次郎のことを狙っているっていうことぐらいか。
 クロエが嫌われるよう仕向けて、横からNTRるとか。

 けど、銀次郎はそもそも、クロエのことを知らなかったんだ。
 嫌われるように仕向ける必要なんてないだろう?
 じゃあ……なんで?

「と、とにかく、銀次郎がドラゴンだと気づかれる訳にはいかないんだ。体力魔力が下がってる状態だと、人間にだって狩られやすくなるだろ?」
「そ、そうですわね。わたくしたちドラゴンを狩ることが出来れば、それだけで人間には名声と、そして富を得ることが出来ますもの」

 富……ドラゴンの素材か。

「上位ドラゴンの血肉は、不老不死の妙薬だなどと言われていますし」
「そりゃなおのこと、お前たちの正体は隠さなきゃな。でもそれ、嘘なんだろ?」
「当然ですわ。不老不死だなんて神ですらなれないのに、わたくしたちを食べることでなれるのなら、今頃この世界には多くの神が闊歩していますわよ」

 少なくとも四人はその辺をぶらぶら散歩しているみたいだけどな。

「あぁ、でも。不老不死にはなりませんが、古竜種の血を飲めば高い魔力を得られ、肉を喰らえば強靭な体を手に入れられますわよ」

 ……マジか。

「い、いいかクロエ。お前も銀次郎も、人前では絶対にドラゴンだと悟られるな。いいな?」
「わ、分かっていますわよ。銀さまをお守りするためですものね。心得ましてよ」
「お前もだよ。とんでもパワーがあっても、それだけじゃ勝てない相手だってどこかにいるかもしれないんだ。それに──」

 ドラゴンの血肉を食ってパワーアップするのは、何も人間だけじゃないはず。
 強いモンスターにたまたま喰われでもしたら、とんでもない化け物を生み出すかもしれないんだぞ。

 とりあえず、うっかり身バレしましたを避けるために、早めに町を出よう。
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