異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔

文字の大きさ
上 下
23 / 31

23:擬人化

しおりを挟む

「……レティシア様。リオネル殿下の所へ行かなくて宜しいのですか?」


 ゼーベック侯爵は先程の照れ隠しか一つ咳払いをしてからそう言った。


「えっ!? いえでも、……人の目がありますから……」

 レティシアが恥ずかしげにそう言うと、ゼーベック侯爵は呆れたように言った。

「何を仰いますか。先程はこの大広間のたくさんの人々の目の前でリオネル殿下への愛を宣言しておいて。……今更でございますよ」


 ……ッ! そうだわ……。私ったらさっきこの場でリオネル様をお慕いしてる愛してるって……!!


 今更ながらその事に気付き、真っ赤になるレティシアをゼーベック侯爵は眩しいものを見るように目を細めた。


 ……約20年前。少年だったゼーベック侯爵が憧れた従姉妹のヴァイオレット皇女。激動の時代に飲み込まれ次期皇帝にと指名されながらもそれを揉み消され国を追われた、帝国にとっては特別な意味を持つ『ヴォールのアメジスト』の瞳を持った美しい悲劇の皇女。

 まだ学園にも通っていない年齢だったゼーベック侯爵には、大人たちの間でどんな思惑があって彼女を巻き込んでいったのかは当時は知る由もなかった。……からくも皇女の娘であるレティシアが現れた事で全てを知る事になった。
 ……少年時代の淡い初恋の相手でもあった皇女殿下に、自分はこれで少しは顔向けが出来るだろうか?

 ……ゼーベック侯爵は、レティシアのヴァイオレット皇女と同じ深く美しい紫の瞳を愛しげに見詰めてそう思った。


「……大丈夫です。皆様にもお2人の愛は伝わっておりますよ。……そして、祝福しております」


 ゼーベック侯爵のその言葉を聞き、レティシアは恐る恐る前方を見る。


 すると大広間中の人々の温かい目と、自分に向かって足速に歩いてくるリオネル王子の少し紅潮した顔が見えた。


 ……ええ!? リオネル様ったら、今この大広間のみんなの生温かい目があるこの場で、こちらに来てしまうのですか!? これ以上皆に見られながらなんて、恥ずかし過ぎるのですけど……!


 思わず逃げようかと思ったレティシアの前に、父クライスラー公爵が現れ優しく微笑みその手を取った。


「お父様……! 今日は本当にありがとうございました。でもあの、今ここでは恥ずかし過ぎるのでリオネル様とは後で別室でゆっくりお話をしようと思うのですが……」


 ……良かった、お父様に何とかこの場は助けていただけるわ! ……そう、レティシアは思ったのだが。


「レティシア。今、すごくいい流れで来てるよね? ここはやはり皆の前で2人が愛と喜びを分かち合う姿を見せないと。……ね?」


 父は最後すごくいい笑顔で言った。


「お父様……! ええ!? ちょっ……っ! 今ここで? ええ……、私を裏切るのですか……!」


 レティシアは半分涙目で父に訴えたが、そのとても良い笑顔でそのままスルーされた。


「……レティシア」


 父を見たまま混乱しているレティシアのところにリオネル王子がやって来た。
 レティシアがそっと声のする方を見ると、リオネル王子は少し困ったように微笑んでいた。


「……レティシア。……本当は、嫌だった? さっきは私に気を遣ってくれたのかい?」


 リオネル王子は悲しそうに言った。

 レティシアは、そんなはずがない! と即否定する。

「違いますッ! 私は……ただ、皆の前で恥ずかしくて……。リオネル様と一緒にいると周りが見えなくなって、ただ貴方しか見えなくなって……。何かとんでもなく恥ずかしい事を言ってしまわないか、心配なだけなのです」


 その答えを聞き、リオネル王子はホッとした。

 そんな2人を見て、クライスラー公爵は握っていたレティシアの手をそっとリオネル王子に渡した。


「リオネル殿下。……レティシアを、頼みます。私の大切な……大切な愛する娘を」


 リオネル王子とクライスラー公爵は目をしっかりと合わせてお互いを見た。……そしてリオネルが頷き公爵は安心したかのように微笑んだ。
 リオネルは受け取ったレティシアの手をキュッと握る。するとレティシアの顔がまた赤くなった。


「お任せください。私は生涯彼女を愛し守り続けると誓います」

 リオネル王子は力強く答えた。
 クライスラー公爵はその答えに満足そうな笑顔を浮かべた。……少し、寂しげな表情も醸し出しながら。


「お父様。……ありがとうございます。リオネル様。私も貴方を愛し守り抜くとお誓いいたします」

 レティシアがそう父とリオネル王子に言うと、リオネルはレティシアの手を取ったまま真剣な顔でこちらを向きしゃがみ込む。
 その雰囲気に、人々はまた2人に注目した。


「レティシア クライスラー公爵令嬢。……私リオネル ランゴーニュは生涯貴女を愛する事を誓います。どうか私と結婚してください」

 リオネル王子は改めてプロポーズをした。

 レティシアは一瞬人前なのに! と思ったが、先程父が言ったようにここまでくればもう皆にこの話の結末を見せた方がいいのだ、皆を安心させ認めさせる為なのだと気持ちを切り替える。
 ……今更だしね。

「リオネル ランゴーニュ王太子殿下。私レティシア クライスラーも貴方を生涯愛する事を誓います。……お話を、お受けいたします」


 ワッ……!!


 大広間中が喜びに湧き、人々は盛り上がった。

 リオネル王子は嬉しそうに立ち上がり、2人は数秒見つめ合った後リオネル王子はレティシアの腰辺りを軽く手を添えるように抱いて寄り添い、2人は少し照れながらも皆の祝福を受けた。



 ……色んな事があったけれど……、私はリオネル様が好き。
 ここは乙女ゲームの世界だけど同じじゃない。私達はここでそれぞれに精一杯生きてきた。そして出逢った大切な人たち。……私はこれからも、この大切な人達と共に生きていく。

 レティシアは今までの事を思い返しながら、周りを見た。

 そこにはレティシアや実の両親を見守り続けてくれたコベール子爵が瞳を潤ませて見つめてくれていた。レティシアは子爵に微笑みかける。子爵も微笑み嬉しそうに頷いてくれた。

 そして帝国での父クライスラー公爵。レティシアの母をただ1人の女性として愛し、その娘である自分をも本当の娘のように愛し守ってくれた。公爵も微笑み頷いてくれた。


 レティシアは2人の父の愛を受け、そのまま愛しい人リオネルを見詰めた。
 

「リオネル様。……末永く、宜しくお願いいたします。…………大好きです」

 レティシアがこの想いを伝えたくてポソリと囁くと、リオネルはこれ以上はないほどに破顔した。


「レティシア。こちらこそよろしく。…………私も愛してる」


 その破壊力のある言葉と笑顔に、自分から仕掛けておきながらどうしたら良いのか分からず真っ赤になるレティシア。


 そしてそんな初々しい将来の国王夫妻を大広間にいる人々は大いに祝ったのだった。


 


 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。

マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。 空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。 しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。 すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。 緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。 小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

祖母の家の倉庫が異世界に通じているので異世界間貿易を行うことにしました。

rijisei
ファンタジー
偶然祖母の倉庫の奥に異世界へと通じるドアを見つけてしまった、祖母は他界しており、詳しい事情を教えてくれる人は居ない、自分の目と足で調べていくしかない、中々信じられない機会を無駄にしない為に異世界と現代を行き来奔走しながら、お互いの世界で必要なものを融通し合い、貿易生活をしていく、ご都合主義は当たり前、後付け設定も当たり前、よくある設定ではありますが、軽いです、更新はなるべく頑張ります。1話短めです、2000文字程度にしております、誤字は多めで初投稿で読みにくい部分も多々あるかと思いますがご容赦ください、更新は1日1話はします、多ければ5話ぐらいさくさくとしていきます、そんな興味をそそるようなタイトルを付けてはいないので期待せずに読んでいただけたらと思います、暗い話はないです、時間の無駄になってしまったらご勘弁を

処理中です...