17 / 31
17:カートが伸びた
しおりを挟む
「明日は町に戻って、この尻尾の売却しないとなぁ」
「もう何頭分かは乗せられそうだけど」
「あぁ、そうだな。でもその何頭かは、帰り道に遭遇するだろ」
荷物を全部出せば、カートも余裕が出来るんだけどな。
でも中に入っている物は、全部キャンプに必要なものだ。
だいいち、出した荷物を預ける場所もないしな。
明日は素材を売却したら、午後から違う方角に向かうことにした。
サンドハウンド飽きた。
そんな話をしたってのにだ。
朝、目を覚ましてテントを出ると──
「えぇぇー……」
「ど、どうしてこんなことに?」
テントの周りには、十数頭のサンドハウンドが転がっていた。
「あれかの。キャンプ飯の匂いに釣られて集まった雑魚どもが、テントに喰らいついたとかそんなんじゃないか?」
「噛みついて、ダメージ喰らって自滅したのかこいつら」
「昨日はステーキ丼、だったものね。そりゃあいい匂いしてたでしょうよ」
ステーキ食いたさに、何度も噛みつきトライしたのか。
こいつらが集まって来ていたことすら気づかなかったな。テントには防音効果まであるのか。
しかしまぁ、聖なる光の神様の加護もえげつないなぁ。
噛みつきに来ただけで死ぬんだもんなぁ。
合掌。南無ぅ。
「尻尾、全部は乗らないかもな」
「勿体ないわね。私、何本か背負うわ」
「リュックに一本ぐらいなら入るか──」
「我嫌じゃ! 蛇なんぞと一緒に入りとぉない!!」
我がままドラゴンめぇ。
もう少し大容量のカートを買えばよかったなぁ。
いや、これより大きいサイズたって、極端に大きい訳じゃないしな。
そもそもモンスターの素材を運ぶ用途として設計されてないし。
カートを元のサイズに戻し、とりあえず転がっているサンドハイエナの解体を開始した。
銀次郎がキャンプ飯と連呼するけどスルー。
「サンドハイエナをブレスで炙って食えばいいじゃん」
「主、我を何だと思っておる!」
「ドラゴン」
「そう! 我はドラゴンだ!! よし、炙るか。醤油と、あとチーズを所望する」
こいつ。ほんと最近、にわかグルメになってきたなぁ。
ちょっとだけ体を大きくすると、サンドハイエナを爪で捌いていく。
魔晶石と尻尾を俺の方に投げると、腹を割って三枚おろし状態に。
うっぷ。内臓グロロォ。
「醤油!」
「はいはい」
「チーズぱらぱら!」
「はい、ぱらぱらっと」
「ブレェェーッス!」
なんで掛け声掛けてからブレスってんの?
ゴォォっと肉が焼ける匂いがして、しかも醤油チーズだ。ちょっと、いいニオイ。
サンドハウンドを鑑定した時、肉はやや硬いとあった。ってことは、食べられない訳ではないということ。
焼きあがったサンドハウンドに、銀次郎がかぶりつく。
「うむ。うむうむ」
「どうよ?」
「むー……マズくはないが、美味くもないな」
可もなく不可もなくか。微妙だな。
「タック。ゴミ袋って、どこだっけ?」
「あ、もしかしてカートの底にあるかも。ちょっと待って」
蛇尻尾をそのままカートに積み込むのは、他の荷物に血が付いたりしそうで嫌だからゴミ袋に入れている。
そのゴミ袋は~っと、あった。やっぱり底だ。
カートの縁を掴んで手を突っ込む。
「取れそう? 少し荷物下ろそうか?」
「いや、だいじょう──ぶっ」
アイラがカートに触れた時だった。
突然、カートが……
「伸びたああぁぁー!?」
「広がった!?」
俺とアイラ、驚いてパっと手を離す。
カートが少し多くなったかも?
試しに縁を引っ張ってみる……けど、広がらない。
「もしかしてこっち?」
アイラが、さっき自分が触っていた縁を掴んで引いた。
でも広がらない。
あ、もしかして。
「同時」
「あ、なるほどね。じゃあ……」
「「せーの」」
で引っ張ってみると、広がった!
おぉ、おおぉ。
カートの縁二カ所を同時に押し広げると、サイズが拡張されるのか!
途中で拡張が止まったが、縦三メートル強、横二メートル弱まで広がった。
「ほぉ。これなら素材をもっと積み込めるではないか」
「こんな隠し機能あるんなら、教えてくれればよかったのに」
「でも後になって知るのって、それはそれで楽しそうじゃない。ね、もしかしてテントの方も?」
テント、広がるのかな?
アイラと顔を見合わせ、俺たちはウキウキしながらテントを引っ張ってみた。
するとだ──
「これは……想定外の結果だな」
「ま、まぁこれはこれでありじゃない?」
テントは大きくなった。総合的に見て大きくなった。
でもまさか、横にまったく同じテントが増えて、2ルームテントになるとは思わなかった。
二つのテントは本体を覆うフライトシートで繋がっているようだ。
テントの入り口は元々二カ所ある。奥のファスナーを開けると、すぐ目の前に隣のテントへ入る出入口のパネルがあった。
「あ、こ、これで二部屋だし、アイラと俺で一部屋ずつ使えるな」
「あ、そう、ね。う、うん。広々使えるわね」
ま、まぁ、今さらでもあるんだけど。
最初の頃は恥ずかしくてなかなか寝付けなかったけど、最近は隣に彼女がいても気にならなくなった。
それでも二部屋になるのはいいことだ。
お互い着替える時はどちらかが外に出て待っていたが、その必要もなくなる。
着替え……あ、そうだ!
「アイラ。やっぱ一度町に戻ろう。カートが大きくなったから、素材をたくさん積めるようになったが、キャンプグッズが血まみれになるのは嫌だし。他にも欲しいものが出来たんだ」
異世界キャンプは快適だが、唯一、そうでない部分がある。
それを解決出来るかもしれない。
「もう何頭分かは乗せられそうだけど」
「あぁ、そうだな。でもその何頭かは、帰り道に遭遇するだろ」
荷物を全部出せば、カートも余裕が出来るんだけどな。
でも中に入っている物は、全部キャンプに必要なものだ。
だいいち、出した荷物を預ける場所もないしな。
明日は素材を売却したら、午後から違う方角に向かうことにした。
サンドハウンド飽きた。
そんな話をしたってのにだ。
朝、目を覚ましてテントを出ると──
「えぇぇー……」
「ど、どうしてこんなことに?」
テントの周りには、十数頭のサンドハウンドが転がっていた。
「あれかの。キャンプ飯の匂いに釣られて集まった雑魚どもが、テントに喰らいついたとかそんなんじゃないか?」
「噛みついて、ダメージ喰らって自滅したのかこいつら」
「昨日はステーキ丼、だったものね。そりゃあいい匂いしてたでしょうよ」
ステーキ食いたさに、何度も噛みつきトライしたのか。
こいつらが集まって来ていたことすら気づかなかったな。テントには防音効果まであるのか。
しかしまぁ、聖なる光の神様の加護もえげつないなぁ。
噛みつきに来ただけで死ぬんだもんなぁ。
合掌。南無ぅ。
「尻尾、全部は乗らないかもな」
「勿体ないわね。私、何本か背負うわ」
「リュックに一本ぐらいなら入るか──」
「我嫌じゃ! 蛇なんぞと一緒に入りとぉない!!」
我がままドラゴンめぇ。
もう少し大容量のカートを買えばよかったなぁ。
いや、これより大きいサイズたって、極端に大きい訳じゃないしな。
そもそもモンスターの素材を運ぶ用途として設計されてないし。
カートを元のサイズに戻し、とりあえず転がっているサンドハイエナの解体を開始した。
銀次郎がキャンプ飯と連呼するけどスルー。
「サンドハイエナをブレスで炙って食えばいいじゃん」
「主、我を何だと思っておる!」
「ドラゴン」
「そう! 我はドラゴンだ!! よし、炙るか。醤油と、あとチーズを所望する」
こいつ。ほんと最近、にわかグルメになってきたなぁ。
ちょっとだけ体を大きくすると、サンドハイエナを爪で捌いていく。
魔晶石と尻尾を俺の方に投げると、腹を割って三枚おろし状態に。
うっぷ。内臓グロロォ。
「醤油!」
「はいはい」
「チーズぱらぱら!」
「はい、ぱらぱらっと」
「ブレェェーッス!」
なんで掛け声掛けてからブレスってんの?
ゴォォっと肉が焼ける匂いがして、しかも醤油チーズだ。ちょっと、いいニオイ。
サンドハウンドを鑑定した時、肉はやや硬いとあった。ってことは、食べられない訳ではないということ。
焼きあがったサンドハウンドに、銀次郎がかぶりつく。
「うむ。うむうむ」
「どうよ?」
「むー……マズくはないが、美味くもないな」
可もなく不可もなくか。微妙だな。
「タック。ゴミ袋って、どこだっけ?」
「あ、もしかしてカートの底にあるかも。ちょっと待って」
蛇尻尾をそのままカートに積み込むのは、他の荷物に血が付いたりしそうで嫌だからゴミ袋に入れている。
そのゴミ袋は~っと、あった。やっぱり底だ。
カートの縁を掴んで手を突っ込む。
「取れそう? 少し荷物下ろそうか?」
「いや、だいじょう──ぶっ」
アイラがカートに触れた時だった。
突然、カートが……
「伸びたああぁぁー!?」
「広がった!?」
俺とアイラ、驚いてパっと手を離す。
カートが少し多くなったかも?
試しに縁を引っ張ってみる……けど、広がらない。
「もしかしてこっち?」
アイラが、さっき自分が触っていた縁を掴んで引いた。
でも広がらない。
あ、もしかして。
「同時」
「あ、なるほどね。じゃあ……」
「「せーの」」
で引っ張ってみると、広がった!
おぉ、おおぉ。
カートの縁二カ所を同時に押し広げると、サイズが拡張されるのか!
途中で拡張が止まったが、縦三メートル強、横二メートル弱まで広がった。
「ほぉ。これなら素材をもっと積み込めるではないか」
「こんな隠し機能あるんなら、教えてくれればよかったのに」
「でも後になって知るのって、それはそれで楽しそうじゃない。ね、もしかしてテントの方も?」
テント、広がるのかな?
アイラと顔を見合わせ、俺たちはウキウキしながらテントを引っ張ってみた。
するとだ──
「これは……想定外の結果だな」
「ま、まぁこれはこれでありじゃない?」
テントは大きくなった。総合的に見て大きくなった。
でもまさか、横にまったく同じテントが増えて、2ルームテントになるとは思わなかった。
二つのテントは本体を覆うフライトシートで繋がっているようだ。
テントの入り口は元々二カ所ある。奥のファスナーを開けると、すぐ目の前に隣のテントへ入る出入口のパネルがあった。
「あ、こ、これで二部屋だし、アイラと俺で一部屋ずつ使えるな」
「あ、そう、ね。う、うん。広々使えるわね」
ま、まぁ、今さらでもあるんだけど。
最初の頃は恥ずかしくてなかなか寝付けなかったけど、最近は隣に彼女がいても気にならなくなった。
それでも二部屋になるのはいいことだ。
お互い着替える時はどちらかが外に出て待っていたが、その必要もなくなる。
着替え……あ、そうだ!
「アイラ。やっぱ一度町に戻ろう。カートが大きくなったから、素材をたくさん積めるようになったが、キャンプグッズが血まみれになるのは嫌だし。他にも欲しいものが出来たんだ」
異世界キャンプは快適だが、唯一、そうでない部分がある。
それを解決出来るかもしれない。
115
お気に入りに追加
1,041
あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。
マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。
空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。
しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。
すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。
緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。
小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
祖母の家の倉庫が異世界に通じているので異世界間貿易を行うことにしました。
rijisei
ファンタジー
偶然祖母の倉庫の奥に異世界へと通じるドアを見つけてしまった、祖母は他界しており、詳しい事情を教えてくれる人は居ない、自分の目と足で調べていくしかない、中々信じられない機会を無駄にしない為に異世界と現代を行き来奔走しながら、お互いの世界で必要なものを融通し合い、貿易生活をしていく、ご都合主義は当たり前、後付け設定も当たり前、よくある設定ではありますが、軽いです、更新はなるべく頑張ります。1話短めです、2000文字程度にしております、誤字は多めで初投稿で読みにくい部分も多々あるかと思いますがご容赦ください、更新は1日1話はします、多ければ5話ぐらいさくさくとしていきます、そんな興味をそそるようなタイトルを付けてはいないので期待せずに読んでいただけたらと思います、暗い話はないです、時間の無駄になってしまったらご勘弁を

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる