異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔

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4:砂漠でキャンプ飯

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「ふははははははは。我の思った通りだわい」
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁーっ!」

 今俺は、魚に噛みつかれていた。
 ここは砂漠で、水の一滴すらない場所だ。
 でも魚が泳いでいる。
 何を言っているのか俺にも分からない。

「痛くないのだろう。叫ぶ必要なんぞどこにある」
「っんの野郎!」

 バインッ──と、無敵テントで魚を殴り飛ばす。
 吹っ飛んだ魚は砂丘にぶつかり、ビチビチと二度三度跳ねてから動かなくなった。

「モ、モンスターか?」
「当たり前だ。主の世界には砂の中を泳ぐ魚でもいたのか?」
「いないよ!!」

 体長一メートルをゆうに超える魚には、ギザギザの鋭い歯が生えている。
 あれでガッチリホールドされたけど、俺の体には傷一つない。
 でもまた服が破れた。
 ドラゴンに噛みつかれた時にも破れたのに。

「お、また来たぞ」
「またあぁー!?」
「あれは身がうまいぞ」
「よし、任せろ」

 がぜん殺《や》る気がでた。
 全部で十五尾ゲット。
 問題はこのクソでかい魚をどうやって捌くかだ。

 三枚下ろしなら出来る。まぁ上手くはないけど。
 でもこのサイズだと、キャンプ用に持って来たナイフじゃ無理だ。
 それにこいつ、顔がめちゃくちゃグロテスクなんだけど、本当に食べられるのか?

 ドラゴン基準で食べられても、人間基準じゃ無理、なんてことも……。

 あぁそうだ。こんな時こそ鑑定魔法だよな!

「か、鑑定……? おっ」

 唱えてみたけど、正解だったようだ。
 可視化されたゲーム画面みたいなのが出て来て、そこに情報が書かれている。
 ほぉ、ほほぉ。本当に食べられるんだな。
 砂漠で暮らす者にとって、貴重なたんぱく源にもなる美味な魚モンスターって書いてある。

「あ、お前のことも鑑定しようっと」
「む?」


【古竜種:エンシェント・ホープドラゴン】
 数千年を生きるドラゴン。無属性銀竜である。
 額の鱗には「希望を叶える」加護があると言われている。
 実証はされたことがない。食用には向かない。
 

 ホープドラゴン……なんか思ったより可愛い名前だな。
 最後の一行はなんなんだよ。

「知識神の加護か」
「あぁ。今までそれどころじゃなかったし、使ったのは初めてなんだ」
「勿体ないのぉ。鑑定魔法は特殊で、どんなに修行を積もうと習得できるものではないからな」
「そ、そうなんだ……使えること、あまり知られない方がいいんだろうか」
「当然だ。ふむ、やはり我がいて正解であろう?」

 そう言って俺の肩に乗った・・・・・ドラゴンが笑う。

 巨大なドラゴンなんて連れて行けるか!
 と言ったらこいつ、まさか小さくなりやがった。
 だったら最初から小さくなれよと思ったが、そんなことすれば寝起きのこいつを襲った奴に喰われてしまうだろうと突っ込まれた。
 ごもっともで。

「さぁ、何をぐずぐずしておる。喰うぞ!」
「いや、食べるといったって、捌かなきゃだろ。でも大きすぎて、俺の手持ちのナイフじゃ捌けそうにないんだよ」
「はぁー、人間とは難儀な生き物だな。ほれ──」

 ドラゴンがその体を少しだけ大きくし、爪先でさっきの魚──サンドキラーフィッシュの腹を割った。
 おおぉぉ、綺麗に切れてるじゃないか。
 三枚おろしではないが、そもそも半身でも俺にとっては多い。

 ふふふ。じゃあさっそく調理しますか。

 ホットサンドメーカーを取り出し、それに入るサイズに半身を切り取る。
 味付けはシンプルに塩と胡椒。あとはチーズを乗せてみよう。
 バーナーで焼いたら蓋を開け、ここに醤油を垂らす。

 じゅわぁーっっといい音。

「む、むむ。なんだその香ばしいニオイは」
「日本人が世界に誇る調味料、醤油さ」
「しょうゆだと? 我も食したい! 食したいぞ!!」

 ちょっとデカいサイズでぐいぐいすり寄って来る。
 痛い、鱗痛いから。

 不思議なことに、攻撃されても一切傷みがないのにこういうのは傷む。
 神様、どうなってんですか?
 でもまぁ、鱗ですり下ろされても肌は一切傷ついてないんだけどさ。

「あーっ、分かったから小さく、小さくなれ! そのサイズだとアレ全部捌かなきゃならなくなるだろっ」
「よし、任せておけ。ほれ、小さくなったぞ。早く、今すぐはよ、しょうゆ!」

 醤油だけ飲ませてやろうか。

 ほどよく焦げ目のついたサンドフィッシュを、アルミホイルの上に置く。
 ドラゴンがそれにダイブするように食いついた。

「うまい!! うまいぞしょうゆ! 我、あれ全部しょうゆにして欲しい」
「冗談だろ! 魚焼くのだって大変なんだぞっ」
「焼くだけなら我が出来る。これでの」

 と言って口からぼっと火を出した。
 おぉ、ドラゴンブレスだ。

 焼くのをそれでやるって言うなら──

「じゃあ魚を全部三枚おろしにしてくれ」
「任せよ!」

 早い。しゅぱぱぱぱっと魚が三枚おろしにされていく。
 砂が付くと勿体ないし、アルミホイルの上に並べていくか。
 
 水で砂を流してアルミホイルの上に置く。そして塩胡椒を振りかけた。

「弱火でな」
「うむ」

 こつがいるようで、最初の何尾かが丸焦げになった。
 一度成功するとそこからは大丈夫だ。
 ちょっと焼けたら醤油を垂らして、更にかるーーくブレス。

「うぉ、うおおぉぉぉぉ。うまいぞおぉぉーっ!」
「そりゃよかった。あ、ところでさ。なんで俺に養ってくれなんて言うんだ?」
「む? 我、言わなかったか?」

 ひとっことも言ってませーん!
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