84 / 110
48
しおりを挟む
『そらアレだ』
電気くんに案内され、俺にはよく分からない場所にある遺跡にやってきた。
よく分からないのは、直接案内されたのがセシリアで、彼女が転移用に記憶石に位置情報を上書きしてきたからだ。
その間、三日かかっている。あの山から彼女の翼で三日だ。かなりの距離だろうな。
まるで巨大な要塞のような遺跡だ。
どっかの山奥にあって、周りは険しい断崖絶壁だ。
セシリア曰く、人の足で来るのは無理っぽそう──とのことだった。
その遺跡の地下に、大きな獣がいた。
「なんで襲って来ない?」
『我は主らを襲わなかっただろう?』
「でもそれは封印石があったからだろ。もしかして封印石があるのか?」
『古代獣は封印石とセットなのだよ』
「って、アレも古代獣なのか!?」
古代獣ってのは、そんなにほいほいといるもんなのかよ。
ん? まてよ。古代獣ってお宝を守ってんだよな?
ここは遺跡だ。
奴がいるのは地下の通路をあちこちうろうろした先にあった部屋。学校の体育館を二つ並べたぐらいの広さがある。
古代獣はお宝を守っているってことは、この部屋のどこかにお宝が!
『欲をかけば死ぬぞ。奴の体力は丸々あるのだから、我の時のようにはいかないだろう』
「う……と、とりあえず魔力の強奪をすりゃいいんだろ。本当は筋力が欲しいんだけどなぁ」
『それは魔力を奪ったあとでもよかろう』
まぁそうだけど。
それからは遺跡と狩場を往復する暮らしが続いた。
遺跡の地下には直接転移することが出来ないので、転移用の位置情報は入口を記憶。
ステータス強奪が出来た後は帰還の指輪で地下街へ。そしてまた転移の指輪で狩場に移動ってのが暫く続いた。
そして今回の依頼を完了すると、遂に地上での居住権を買える金が溜まった。
「リヴァ、よかったね」
「あぁ。お前のおかげだ。何年も突き合せちまったが、実は問題があるんだよ」
「問題?」
セシリアは俺と一緒に冒険者の登録をしてしまった。
迎えが来て、地下から地上に出てしまったんだ。このカードが身分証にもなっているし、地下の住民として登録されていれば厄介なことになる。
実際、依頼を受けるときに強制転移の魔法を掛けられている。その魔法は時限式で、依頼期間を過ぎると強制発動するものだ。
セシリアにも同じ魔法を掛けられているし……。
「んー、私はあの穴から外に出ればいいんじゃない?」
「そんな単純な方法で上手くいくのかよ」
「出れるぞ」
教会に戻って生臭坊主に相談すると、なんともアッサリした言葉が返って来た。
だが次に奴の口から出た言葉に、思わずお茶を吹き零すことになる。
「結婚すりゃいいのさ」
「ぶふぅーっ! げほっげほっ」
「け、けけ、け、ケコン!? え、あの、え、だ、誰と誰? あ、え?」
き、気管、気管に入った!
「二人とも落ち着け。居住権を金で買う場合はな、家族をひとりだけ連れていけんだよ」
「な、なんだ。そういうことか。だったら兄妹とかでもいいじゃん」
「あ? 似てねえし、そもそもお前ら冒険者ギルドで兄妹だって紹介したか?」
「だ、だからって!?」
俺とセシリアが結婚!?
「いやなら暫くして離婚すりゃいい。すぐはダメだ。それ目的で結婚したと思われるからな」
「思われるんじゃなく、そ、それ目的だろ!?」
「そんな恥ずかしがるなって。な、セシリアちゃんもいいだろ?」
「へうっ。あ、えと、あの、あ……」
あたふたするセシリアの肩の上に、すぅっとデンが姿を現す。
『心拍数が上昇しておるぞ。なにゆえだ?』
デン猫が彼女の顔を覗き込むが、まったく聞こえちゃいねえ。
「おい、リヴァ。この猫は……なんだ」
あー、神父にはまだ見せてなかったな。
『我は雷獣ヴァーライルトール・デンぞ』
「雷獣……おいリヴァアァァ! なんで大精霊がいるんだっ。なんでこんな猫ちゃんなんだ!?」
「あ、精霊って分かんのか。まぁかくかくしかじかって訳でよ──」
電気くんがいた山のことや封印されていたこと、それから襲われたことを生臭坊主に説明した。
そして今更ながら思った。
「おい、デン。なんであの時俺の足をロープに引っ掛けて襲ったんだよ」
『我はあの封印内に足を踏み入れた者しか襲わぬ』
「いや、それは分かってるけど」
『我が自由の身になるためには、肉体的な死を迎える必要があったのだ。そして主らと契約するためには、主らに勝って貰わねばならぬのだからな」
長いことあの封印石のあった場所に閉じ込められ、しかも精霊なのに肉体を持たされてうんざりしていた。
だが依り代てある古代獣の影響で、あの場所に入った者を襲わずにはいられない。
そして残念なことに、デンを倒せるような奴がこれまで現れなかった──という訳だ。
俺のステータス強奪を受けた時、「お、これはもしかしてもしかするかも?」と期待したそうな。
『そのうえ、主は我に語り掛け、食を与えてくれた。もう二度と味わえぬが、あれはなかなかよいものであったぞ』
「二度とって、もう食えないってことか?」
『主よ。我の体が透き通って見えるだろう? そういうことだ』
あぁ、体がないから仕方ないのか。
食べる喜びを知らないってのは、ちょっとかわいそうではあるな。
「お前らも地上でなかなか面白いことやってんだなぁ。で、どうすんだ」
ニヤりと神父が笑う。
「結婚すんなら、俺が祝福を与えてやんぞ?」
神父のくせしやがって……
偽装結婚勧めるとか、神様に怒られねえのかよ!!
電気くんに案内され、俺にはよく分からない場所にある遺跡にやってきた。
よく分からないのは、直接案内されたのがセシリアで、彼女が転移用に記憶石に位置情報を上書きしてきたからだ。
その間、三日かかっている。あの山から彼女の翼で三日だ。かなりの距離だろうな。
まるで巨大な要塞のような遺跡だ。
どっかの山奥にあって、周りは険しい断崖絶壁だ。
セシリア曰く、人の足で来るのは無理っぽそう──とのことだった。
その遺跡の地下に、大きな獣がいた。
「なんで襲って来ない?」
『我は主らを襲わなかっただろう?』
「でもそれは封印石があったからだろ。もしかして封印石があるのか?」
『古代獣は封印石とセットなのだよ』
「って、アレも古代獣なのか!?」
古代獣ってのは、そんなにほいほいといるもんなのかよ。
ん? まてよ。古代獣ってお宝を守ってんだよな?
ここは遺跡だ。
奴がいるのは地下の通路をあちこちうろうろした先にあった部屋。学校の体育館を二つ並べたぐらいの広さがある。
古代獣はお宝を守っているってことは、この部屋のどこかにお宝が!
『欲をかけば死ぬぞ。奴の体力は丸々あるのだから、我の時のようにはいかないだろう』
「う……と、とりあえず魔力の強奪をすりゃいいんだろ。本当は筋力が欲しいんだけどなぁ」
『それは魔力を奪ったあとでもよかろう』
まぁそうだけど。
それからは遺跡と狩場を往復する暮らしが続いた。
遺跡の地下には直接転移することが出来ないので、転移用の位置情報は入口を記憶。
ステータス強奪が出来た後は帰還の指輪で地下街へ。そしてまた転移の指輪で狩場に移動ってのが暫く続いた。
そして今回の依頼を完了すると、遂に地上での居住権を買える金が溜まった。
「リヴァ、よかったね」
「あぁ。お前のおかげだ。何年も突き合せちまったが、実は問題があるんだよ」
「問題?」
セシリアは俺と一緒に冒険者の登録をしてしまった。
迎えが来て、地下から地上に出てしまったんだ。このカードが身分証にもなっているし、地下の住民として登録されていれば厄介なことになる。
実際、依頼を受けるときに強制転移の魔法を掛けられている。その魔法は時限式で、依頼期間を過ぎると強制発動するものだ。
セシリアにも同じ魔法を掛けられているし……。
「んー、私はあの穴から外に出ればいいんじゃない?」
「そんな単純な方法で上手くいくのかよ」
「出れるぞ」
教会に戻って生臭坊主に相談すると、なんともアッサリした言葉が返って来た。
だが次に奴の口から出た言葉に、思わずお茶を吹き零すことになる。
「結婚すりゃいいのさ」
「ぶふぅーっ! げほっげほっ」
「け、けけ、け、ケコン!? え、あの、え、だ、誰と誰? あ、え?」
き、気管、気管に入った!
「二人とも落ち着け。居住権を金で買う場合はな、家族をひとりだけ連れていけんだよ」
「な、なんだ。そういうことか。だったら兄妹とかでもいいじゃん」
「あ? 似てねえし、そもそもお前ら冒険者ギルドで兄妹だって紹介したか?」
「だ、だからって!?」
俺とセシリアが結婚!?
「いやなら暫くして離婚すりゃいい。すぐはダメだ。それ目的で結婚したと思われるからな」
「思われるんじゃなく、そ、それ目的だろ!?」
「そんな恥ずかしがるなって。な、セシリアちゃんもいいだろ?」
「へうっ。あ、えと、あの、あ……」
あたふたするセシリアの肩の上に、すぅっとデンが姿を現す。
『心拍数が上昇しておるぞ。なにゆえだ?』
デン猫が彼女の顔を覗き込むが、まったく聞こえちゃいねえ。
「おい、リヴァ。この猫は……なんだ」
あー、神父にはまだ見せてなかったな。
『我は雷獣ヴァーライルトール・デンぞ』
「雷獣……おいリヴァアァァ! なんで大精霊がいるんだっ。なんでこんな猫ちゃんなんだ!?」
「あ、精霊って分かんのか。まぁかくかくしかじかって訳でよ──」
電気くんがいた山のことや封印されていたこと、それから襲われたことを生臭坊主に説明した。
そして今更ながら思った。
「おい、デン。なんであの時俺の足をロープに引っ掛けて襲ったんだよ」
『我はあの封印内に足を踏み入れた者しか襲わぬ』
「いや、それは分かってるけど」
『我が自由の身になるためには、肉体的な死を迎える必要があったのだ。そして主らと契約するためには、主らに勝って貰わねばならぬのだからな」
長いことあの封印石のあった場所に閉じ込められ、しかも精霊なのに肉体を持たされてうんざりしていた。
だが依り代てある古代獣の影響で、あの場所に入った者を襲わずにはいられない。
そして残念なことに、デンを倒せるような奴がこれまで現れなかった──という訳だ。
俺のステータス強奪を受けた時、「お、これはもしかしてもしかするかも?」と期待したそうな。
『そのうえ、主は我に語り掛け、食を与えてくれた。もう二度と味わえぬが、あれはなかなかよいものであったぞ』
「二度とって、もう食えないってことか?」
『主よ。我の体が透き通って見えるだろう? そういうことだ』
あぁ、体がないから仕方ないのか。
食べる喜びを知らないってのは、ちょっとかわいそうではあるな。
「お前らも地上でなかなか面白いことやってんだなぁ。で、どうすんだ」
ニヤりと神父が笑う。
「結婚すんなら、俺が祝福を与えてやんぞ?」
神父のくせしやがって……
偽装結婚勧めるとか、神様に怒られねえのかよ!!
26
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる