異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

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「バーロン! 逃げるぞっ」
「ふざけるな! ここまで来ておめおめと逃げ帰れるかっ」
「馬鹿野郎! お前の我がままのせいでここまで到着する間に四人死んで、ここでも二人やられたんだぞっ」

 な、なんだ?
 言い争う声が聞こえるものの、視界は真っ白なままだ。

「封印の外に出れば奴は追って来ないっ。とにかくここは逃げるんだっ」
「そうだ。クランに連絡をして、応援を要請しよう」
「くっ。絶対に奴を倒さなきゃならないんだ。迷宮都市最強のクラン、紅の旅団の名を知らしめるために!」

 紅の旅団だと?
 じゃあ電気くんの討伐に来たのは、あのクランなのか?
 だったらなおの事、なんとしても邪魔してやりたい。

 だが声しか聞こえなくて、肝心の奴らの顔は分かりゃしない。
 すると今度はその声がどんどん小さくなった。
 
 完全に聞こえなくなると視界が色づき始める。

「リヴァ、今のは電気くんの記憶みたい」
「電気くんの? 紅の旅団とか言ってたよな、あいつら」
「電気くんを襲った人たちなのかも」

 そんなものを俺たちに見せてどうしたいんだ、電気くんは。

「あの様子だと援軍を連れてまた戻って来そうだな」
「うん。電気くんを逃がして上げられればいいのに」
「逃がす……か」

 封印石を壊すか動かすかすれば、封印は解除されるだろう。そうしたら電気くんも自由の身になるはず。
 愛着の沸いた電気くんが倒されるのは、正直いい気がしない。

「お前、もっと山の奥の方に逃げられるか?」

 そう尋ねると、意外なことに電気くんは頷いた。
 あまりにも素直過ぎて、逆に疑いたくなる。

「やっぱりダメだ。もし電気くんが山の奥じゃなく、獣人族の集落に向かったら大変なことになる。恩のある人たちだ。そんなことは絶対させたくない」
「うん、そうだね。でも電気くんもかわいそう」

 紅の旅団の奴らを、なんとかして追い返せればな。

 電気くんのステータスを奪ったのは俺だけど、これを戻せるといいんだけど。
 でもそんな方法分からないし、いっそ共闘?
 
 そんなことを考えていた時だ。

「うお!?」

 突然なにかに足を取られ、その場に倒れ込む。
 そしてズサァーッと引きずられた。

「リヴァ!?」
「な、なんだ?」

 引きずられた先は電気くんの目の前。
 そして俺の足に括りつけられていたのはロープ。

 電気くんに肉を投げ入れてやるために使っていたロープだ。
 そのロープが、何故か封印石の外にあって、先端を電気くんの大きな指が掴んでいた。
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