76 / 110
41
しおりを挟む
体力900超えは伊達じゃない。
体力ステータスは、どれだけタフかって数値だ。だから体力が高くても皮膚が硬くなって、防御力が上がるなんてことはない。
だが「耐える」ことに関しては筋力同様に、こっちのステータスも関係がある。
「はっ、心配するな。舐めた口が利けねえように、少し痛い目に会わせてやるだけだ」
「そっちのお嬢さんには優しくしてやるから、安心したまえ!」
「大手クランなんつっても、下半身直結野郎はいるもんだな」
「なんだと!」
突き出された拳を真正面から額で受ける。ぐっと下半身で踏ん張り、前に押し出すように体重をかけた。
「のあっ!?」
「おいおい、殴りに来た奴が吹っ飛ぶのかよ。どんだけ非力なんだ」
殴られた額は特に痛みを感じることもない。
体力が高くても、剣で斬られれば当然肉も切れる。槍で突けば突き刺さりもする。
だが打撃攻撃に対しては強い。
まぁ斬ったり突いたりも、ステータスの低い人に比べれば傷は浅くなるらしいけどな。
奴らが剣を抜いて来たら一時停止すればいい。
いや、しなくても倒せるかな。
「クソガキ! 何をしやがった!!」
「殴りかかって来たから踏ん張っただけだろ。吹っ飛んだのはお前らが非力だっただけさ」
こういう場合、向こうは筋力、俺は体力のステータスで勝負になる。
単純に奴の筋力が俺の体力より低かっただけだ。まぁ吹っ飛んだのを、俺の体力数値の二、三割ぐらいか。俺自身の筋力もそんなもんだし、あまり人の事は言えないけどな。
「もういいか?」
「て、てめぇっ。紅の旅団に歯向かったらどうなるか、分かっているんだろうな!」
「くれない……どっかで聞いたな。まぁ俺には関係ない。だいたいさ、そういうセリフって悪党が口にするもんだぜ」
「ぎっ──きっさまぁ!!」
頭に血が上ったのか、遂に剣を引き抜いて走って来た。
馬鹿正直に真正面から突っ込んでくるから、タイミングを合わせてハンマーをしたから上に振り上げる。
さっきの奴とこいつ、果たしてどっちの筋力が上か。
それでもペアを組んでいるんだ、俺の体力に勝る数字じゃないだろう。
その答えは直ぐに出た。
奴は剣を握ったまま宙に舞った。
「自分の獲物を手放さないってのは、戦士の鑑だな」
そのまま地面に落下した男は、白目をむいて気絶。
「リヴァ、どうするこの人?」
「おい突《つつ》くな、馬鹿が移るぞ」
「ひぇっ」
冗談だって。真に受けて必死な顔しなくていいなら。
こいつらはこのまま放っておこう。
幸か不幸かここは地下街だ。一階とはいえ、上に比べりゃ治安は悪い。
しかも人目に付かない路地裏ときている。こいつらみたいに悪い奴らが大好きな場所だ。
二人ともいい装備をしている。
目を覚ました時どのくらい装備が残ってるかな?
「それは災難だったな」
二階に下りてライガルさんに無事戻ってきたことを報告。ついでにさっきの出来事も話した。
「大手クランってあんなもんなんですか?」
「まともなクランだってあるさ。ただどの町でも大なり小なり、自分達の利益を優先するクランはある。特に貴族の御曹司なんてのがリーダーをやってるクランだと、その傾向にあるな」
「まさか紅の旅団ってのも……」
俺の言葉にライガルさんが頷く。
「侯爵家の次男坊がリーダーで、三男坊も一緒だ。父親はこの町の領主とも懇意の間柄って噂だ」
「だから好き勝手やってるのか」
「まぁ狩場の独占は、元々禁止されていないから文句も言えんのだろう」
じゃあ他のダンジョン都市ならどうなのかっていうと、まともな大手クランが諫める役目になっていると。
この町ではその「大手クラン」がまともじゃなかった。それだけだ。
「あまり関わるな」
「そう言われても、向こうから絡んでくるからなぁ」
「いっそどこかの町の大手クランに紹介して貰ったらどうだ? 別にこの町に拠点を築くクランに入らなきゃならない訳じゃない。そもそも紅の旅団だって、本来は王都に拠点を置くクランだからな」
「へぇ、そうだったのか。でも紹介と言われても、伝手なんてどこにもねえしなぁ」
今の話かただと、ライガルさんは紹介出来るクランがある訳でもなさそうだし。
まさかセシリア──じゃないよな。
「お前の保護者だ。エルヴァン司祭。彼ならSランククランにも伝手があるだろう」
「は? あの生臭が!?」
「あの人自身はクラン未所属だが、Sランクの冒険者だったんだぞ?」
……は?
冒険者はランク付けされている。ランク=強さではないが、当然貧弱な奴が高いランクには慣れない訳で。
七段階あるランクで一番低いのがFランク。一番高いのがSランクだ。
あの生臭坊主が最上級のSだって!?
「なんでそんな凄い冒険者が生臭なんて……」
「あー……これは噂なんだけどな……十六年前まで彼は聖王国ヴェルファスタンで、王室お抱えの冒険者パーティーの一員だったんだが……なんでも王女に手を出したとか出していないとかで」
「なまぐさあぁぁぁぁっ」
「ふえっ!? ど、どうしたのリヴァ?」
「あ、いいんだ。オムライス食っててくれ」
「うん、はいっ。リヴァも食べないと、冷たくなるよ」
一国の王女に手を出して、パーティーと国と、両方から追放されたってオチなのか。
流石生臭だぜ。
体力ステータスは、どれだけタフかって数値だ。だから体力が高くても皮膚が硬くなって、防御力が上がるなんてことはない。
だが「耐える」ことに関しては筋力同様に、こっちのステータスも関係がある。
「はっ、心配するな。舐めた口が利けねえように、少し痛い目に会わせてやるだけだ」
「そっちのお嬢さんには優しくしてやるから、安心したまえ!」
「大手クランなんつっても、下半身直結野郎はいるもんだな」
「なんだと!」
突き出された拳を真正面から額で受ける。ぐっと下半身で踏ん張り、前に押し出すように体重をかけた。
「のあっ!?」
「おいおい、殴りに来た奴が吹っ飛ぶのかよ。どんだけ非力なんだ」
殴られた額は特に痛みを感じることもない。
体力が高くても、剣で斬られれば当然肉も切れる。槍で突けば突き刺さりもする。
だが打撃攻撃に対しては強い。
まぁ斬ったり突いたりも、ステータスの低い人に比べれば傷は浅くなるらしいけどな。
奴らが剣を抜いて来たら一時停止すればいい。
いや、しなくても倒せるかな。
「クソガキ! 何をしやがった!!」
「殴りかかって来たから踏ん張っただけだろ。吹っ飛んだのはお前らが非力だっただけさ」
こういう場合、向こうは筋力、俺は体力のステータスで勝負になる。
単純に奴の筋力が俺の体力より低かっただけだ。まぁ吹っ飛んだのを、俺の体力数値の二、三割ぐらいか。俺自身の筋力もそんなもんだし、あまり人の事は言えないけどな。
「もういいか?」
「て、てめぇっ。紅の旅団に歯向かったらどうなるか、分かっているんだろうな!」
「くれない……どっかで聞いたな。まぁ俺には関係ない。だいたいさ、そういうセリフって悪党が口にするもんだぜ」
「ぎっ──きっさまぁ!!」
頭に血が上ったのか、遂に剣を引き抜いて走って来た。
馬鹿正直に真正面から突っ込んでくるから、タイミングを合わせてハンマーをしたから上に振り上げる。
さっきの奴とこいつ、果たしてどっちの筋力が上か。
それでもペアを組んでいるんだ、俺の体力に勝る数字じゃないだろう。
その答えは直ぐに出た。
奴は剣を握ったまま宙に舞った。
「自分の獲物を手放さないってのは、戦士の鑑だな」
そのまま地面に落下した男は、白目をむいて気絶。
「リヴァ、どうするこの人?」
「おい突《つつ》くな、馬鹿が移るぞ」
「ひぇっ」
冗談だって。真に受けて必死な顔しなくていいなら。
こいつらはこのまま放っておこう。
幸か不幸かここは地下街だ。一階とはいえ、上に比べりゃ治安は悪い。
しかも人目に付かない路地裏ときている。こいつらみたいに悪い奴らが大好きな場所だ。
二人ともいい装備をしている。
目を覚ました時どのくらい装備が残ってるかな?
「それは災難だったな」
二階に下りてライガルさんに無事戻ってきたことを報告。ついでにさっきの出来事も話した。
「大手クランってあんなもんなんですか?」
「まともなクランだってあるさ。ただどの町でも大なり小なり、自分達の利益を優先するクランはある。特に貴族の御曹司なんてのがリーダーをやってるクランだと、その傾向にあるな」
「まさか紅の旅団ってのも……」
俺の言葉にライガルさんが頷く。
「侯爵家の次男坊がリーダーで、三男坊も一緒だ。父親はこの町の領主とも懇意の間柄って噂だ」
「だから好き勝手やってるのか」
「まぁ狩場の独占は、元々禁止されていないから文句も言えんのだろう」
じゃあ他のダンジョン都市ならどうなのかっていうと、まともな大手クランが諫める役目になっていると。
この町ではその「大手クラン」がまともじゃなかった。それだけだ。
「あまり関わるな」
「そう言われても、向こうから絡んでくるからなぁ」
「いっそどこかの町の大手クランに紹介して貰ったらどうだ? 別にこの町に拠点を築くクランに入らなきゃならない訳じゃない。そもそも紅の旅団だって、本来は王都に拠点を置くクランだからな」
「へぇ、そうだったのか。でも紹介と言われても、伝手なんてどこにもねえしなぁ」
今の話かただと、ライガルさんは紹介出来るクランがある訳でもなさそうだし。
まさかセシリア──じゃないよな。
「お前の保護者だ。エルヴァン司祭。彼ならSランククランにも伝手があるだろう」
「は? あの生臭が!?」
「あの人自身はクラン未所属だが、Sランクの冒険者だったんだぞ?」
……は?
冒険者はランク付けされている。ランク=強さではないが、当然貧弱な奴が高いランクには慣れない訳で。
七段階あるランクで一番低いのがFランク。一番高いのがSランクだ。
あの生臭坊主が最上級のSだって!?
「なんでそんな凄い冒険者が生臭なんて……」
「あー……これは噂なんだけどな……十六年前まで彼は聖王国ヴェルファスタンで、王室お抱えの冒険者パーティーの一員だったんだが……なんでも王女に手を出したとか出していないとかで」
「なまぐさあぁぁぁぁっ」
「ふえっ!? ど、どうしたのリヴァ?」
「あ、いいんだ。オムライス食っててくれ」
「うん、はいっ。リヴァも食べないと、冷たくなるよ」
一国の王女に手を出して、パーティーと国と、両方から追放されたってオチなのか。
流石生臭だぜ。
25
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

俺の畑は魔境じゃありませんので~Fランクスキル「手加減」を使ったら最強二人が押しかけてきた~
うみ
ファンタジー
「俺は畑を耕したいだけなんだ!」
冒険者稼業でお金をためて、いざ憧れの一軒家で畑を耕そうとしたらとんでもないことになった。
あれやこれやあって、最強の二人が俺の家に住み着くことになってしまったんだよ。
見た目こそ愛らしい少女と凛とした女の子なんだけど……人って強けりゃいいってもんじゃないんだ。
雑草を抜くのを手伝うといった魔族の少女は、
「いくよー。開け地獄の門。アルティメット・フレア」
と土地ごと灼熱の大地に変えようとしやがる。
一方で、女騎士も似たようなもんだ。
「オーバードライブマジック。全ての闇よ滅せ。ホーリースラッシュ」
こっちはこっちで何もかもを消滅させ更地に変えようとするし!
使えないと思っていたFランクスキル「手加減」で彼女達の力を相殺できるからいいものの……一歩間違えれば俺の農地(予定)は人外魔境になってしまう。
もう一度言う、俺は最強やら名誉なんかには一切興味がない。
ただ、畑を耕し、収穫したいだけなんだ!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す
名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる