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「解体? 助けて貰ったんだ、それぐらいお安い御用だ」
「有難い。じゃあ解体後の肉と、あとレア個体じゃない奴の毛皮は持って行って貰ってもいい」
「「は?」」
それじゃあ遺体を全部出すか。
いや、一度に出すと邪魔かな?
先にキックバードを空間収納袋から取り出して地面に並べた。
レア八体、ノーマルが五体ある。
「お、お前さんらはレア素材目当てで狩りに来たのか」
「そうなんだ。迷宮都市から来たんだけど、あっちじゃ狩場を独占する奴らが出たってんで市場でレア素材が枯渇し始めているらしい。それで依頼を受けたんだ」
「な、なるほど。狙っている獲物は他にも?」
「あぁ。ルガーウルフのレアを探してんだけど、なかなか見つけらなくって。あ、そうだ。ルガーウルフのレア個体とノーマルは、どこで見分けるか知ってるか?」
獣人たちは頷き、ノーマルは背中から尻尾までに黒い毛が生え、レアは青い毛だという。
やっぱり……俺たちが狩ったのはノーマルか。
「し、しかし……本当に貰ってよいのか? この肉を」
「あぁ。俺たちは二人だし、一頭分で何週間……ヘタしたら二、三カ月持つだろ」
キックバードはダチョウに似たモンスターだ。実物のダチョウはテレビでしか見たことないけど、キックバードは確実にそれよりデカい。卵……産むんだろうか。凄いサイズだろうな。
そんなキックバード一頭分の肉で、俺とセシリア何か月分の肉になるだろうか。
かれこれ十日ほどキックバードの肉を食っている。結構美味い。
ただ……
「ずっとこいつ食うのかって思うと、ちょっとな」
「そりゃ毎日同じものばかりではそうなるだろうな。同じ肉でも味付けを変えたり、調理方法を変えれば違うだろうが」
「面倒だから塩振って焼いただけだ」
「美味い食事は、それだけで心を満たすことが出来る。心が満たされれば体も頭もよく動くようになる。大事なことだぞ」
それは……分かっているつもりだ。
ただ俺にとっては「食えるものを食うことが大事」であって、味なんて二の次だった。
そもそも地下三階の町で美味い物なんて手に入らないからな。
野菜はしおれて痩せ細っているし、肉なんてモンスターからドロップするのを知るまでは週に一欠片の干し肉を口にできるかどうか。
そんな暮らしだったから、食えればなんでもいい。肉ならなおのこと。
しかしいざ好きなだけ食えるようになると、人ってのは直ぐに舌が肥えるもんだ。
「我らが簡単な調理法を、いくつか教えてやろう。東のあの森で採れる香草を使った調理もある。まぁ根本的に解決するには、肉の種類を変えることだな」
「ごもっともで」
キックバードを捌く彼らの作業を手伝いながら、同時にやりかたも学ぶ。
セシリアもここまで上手くは出来ないと、彼女自身、俺と同じように彼らから学んだ。
三日もすれば彼らの体力も戻り、集落へ戻る時が来た。
とはいえ、怪我は完治した訳じゃない。
そこで俺とセシリアが彼らの集落まで送っていくことに。
「じゃあ位置を上書きするか」
「うん、はい。──よし!」
セシリアが最初に位置を記憶させた場所から電気くんの近くに、転移玉の位置情報を上書きする。
玉はまだ二つあるので、移動先で野宿するときにそこの位置を記憶。朝は転移の指輪でここに戻って来て体力を頂いたら野宿場所に転移──ってやれば、毎日欠かさずステータス強奪も出来る。
テントを畳んで移動を開始。
すると電気くんが顔を上げてこちらをじっと見つめてきた。
「なんだ、寂しいのか電気くん。──なーんて、そんな訳ないか」
ひらひらと手を振ると、電気くんは興味無さそうに目を閉じて眠りはじめた。
「ウィザーラビットだ。魔法を使ってくるから、気を付けろ」
「兎のくせに、魔法だと!」
魔力はあるけど魔法が使えない俺に謝れ!
内心そんなことを思いながら、兎にハンマーを振り下ろす。
山道を進めばモンスターと遭遇するのも当たり前。
兎と呼ぶには大きな、体長一メートルを超すソレと対峙している。
魔法を使うってのに、反射神経もいい。普通魔法使いなら筋力体力敏捷が低いって相場が決まってるだろ?
「とぅ!」
あ、ここにも敏捷が高い魔術師がいたよ。
セシリアは兎を足蹴にし、ぽーんっと跳ねたところを魔法で仕留めている。
エグい戦い方だ。
ウィザーラビットを三匹ほど仕留めると、残りは慌てて森の奥へと逃げて行った。
「こいつらの肉も上手いぞ」
「毛皮は少し硬いが、暖を取るためなら十分だ」
「じゃあ袋に入れて持って行くか」
こうして襲ってくるモンスター全部を返り討ちにし、空間収納袋に入れて彼らの集落へと向かった。
「お前さんのおかげで、戻ったら冬支度に専念出来る」
「そうだな。これなら今年はもう狩りに行かなくてもいいだろう」
「ん? そうなのか?」
「あぁ。我らは獲物を仕留めたらその都度、里へと戻っていた。獲物を担いだまま移動は出来ぬからな」
行きも帰りも、こうしてモンスターに襲われることを考えれば、大荷物を抱えて移動するわけにはいかない。
そのせいで、大物を狩っても全部は持ち帰れないそうだ。
だが今回は俺の空間収納袋を使って、狩った物は全部そっくりそのまま持って帰れる。
キックバードは十体分、ルガーウルフもクセはあるが食えるという。他にもウィザーラビットにボア、道すがら集めた茸や木の実と大量だ。
「里に到着したら、塩漬け、味噌漬けにした肉と交換してやろう。美味いぞ」
「味噌!? え、味噌なんてあるのか!?」
「おぉ、お主は味噌を知っているのか? 人間はあれを腐った糞だと言って、毛嫌いするのだがな」
……腐った糞。いやまぁ、色的にはそう見えるのかも?
でもなんか不安だ。ちゃんと大豆で作った味噌なんだろうな?
だがその不安は里に付いたら解消された。
完全に俺の知る味噌と同じものだ。
セシリアも知らないといい、どうやら獣人族のみが作る調味料の一つらしい。
「味噌の美味さを知っている人間とは。お前はいい人間だな!」
「味噌の美味さを知っているなんて、獣人族はいい種族だな!」
俺は里長とガッツリ腕を組み、そして味噌をゲットした。
「有難い。じゃあ解体後の肉と、あとレア個体じゃない奴の毛皮は持って行って貰ってもいい」
「「は?」」
それじゃあ遺体を全部出すか。
いや、一度に出すと邪魔かな?
先にキックバードを空間収納袋から取り出して地面に並べた。
レア八体、ノーマルが五体ある。
「お、お前さんらはレア素材目当てで狩りに来たのか」
「そうなんだ。迷宮都市から来たんだけど、あっちじゃ狩場を独占する奴らが出たってんで市場でレア素材が枯渇し始めているらしい。それで依頼を受けたんだ」
「な、なるほど。狙っている獲物は他にも?」
「あぁ。ルガーウルフのレアを探してんだけど、なかなか見つけらなくって。あ、そうだ。ルガーウルフのレア個体とノーマルは、どこで見分けるか知ってるか?」
獣人たちは頷き、ノーマルは背中から尻尾までに黒い毛が生え、レアは青い毛だという。
やっぱり……俺たちが狩ったのはノーマルか。
「し、しかし……本当に貰ってよいのか? この肉を」
「あぁ。俺たちは二人だし、一頭分で何週間……ヘタしたら二、三カ月持つだろ」
キックバードはダチョウに似たモンスターだ。実物のダチョウはテレビでしか見たことないけど、キックバードは確実にそれよりデカい。卵……産むんだろうか。凄いサイズだろうな。
そんなキックバード一頭分の肉で、俺とセシリア何か月分の肉になるだろうか。
かれこれ十日ほどキックバードの肉を食っている。結構美味い。
ただ……
「ずっとこいつ食うのかって思うと、ちょっとな」
「そりゃ毎日同じものばかりではそうなるだろうな。同じ肉でも味付けを変えたり、調理方法を変えれば違うだろうが」
「面倒だから塩振って焼いただけだ」
「美味い食事は、それだけで心を満たすことが出来る。心が満たされれば体も頭もよく動くようになる。大事なことだぞ」
それは……分かっているつもりだ。
ただ俺にとっては「食えるものを食うことが大事」であって、味なんて二の次だった。
そもそも地下三階の町で美味い物なんて手に入らないからな。
野菜はしおれて痩せ細っているし、肉なんてモンスターからドロップするのを知るまでは週に一欠片の干し肉を口にできるかどうか。
そんな暮らしだったから、食えればなんでもいい。肉ならなおのこと。
しかしいざ好きなだけ食えるようになると、人ってのは直ぐに舌が肥えるもんだ。
「我らが簡単な調理法を、いくつか教えてやろう。東のあの森で採れる香草を使った調理もある。まぁ根本的に解決するには、肉の種類を変えることだな」
「ごもっともで」
キックバードを捌く彼らの作業を手伝いながら、同時にやりかたも学ぶ。
セシリアもここまで上手くは出来ないと、彼女自身、俺と同じように彼らから学んだ。
三日もすれば彼らの体力も戻り、集落へ戻る時が来た。
とはいえ、怪我は完治した訳じゃない。
そこで俺とセシリアが彼らの集落まで送っていくことに。
「じゃあ位置を上書きするか」
「うん、はい。──よし!」
セシリアが最初に位置を記憶させた場所から電気くんの近くに、転移玉の位置情報を上書きする。
玉はまだ二つあるので、移動先で野宿するときにそこの位置を記憶。朝は転移の指輪でここに戻って来て体力を頂いたら野宿場所に転移──ってやれば、毎日欠かさずステータス強奪も出来る。
テントを畳んで移動を開始。
すると電気くんが顔を上げてこちらをじっと見つめてきた。
「なんだ、寂しいのか電気くん。──なーんて、そんな訳ないか」
ひらひらと手を振ると、電気くんは興味無さそうに目を閉じて眠りはじめた。
「ウィザーラビットだ。魔法を使ってくるから、気を付けろ」
「兎のくせに、魔法だと!」
魔力はあるけど魔法が使えない俺に謝れ!
内心そんなことを思いながら、兎にハンマーを振り下ろす。
山道を進めばモンスターと遭遇するのも当たり前。
兎と呼ぶには大きな、体長一メートルを超すソレと対峙している。
魔法を使うってのに、反射神経もいい。普通魔法使いなら筋力体力敏捷が低いって相場が決まってるだろ?
「とぅ!」
あ、ここにも敏捷が高い魔術師がいたよ。
セシリアは兎を足蹴にし、ぽーんっと跳ねたところを魔法で仕留めている。
エグい戦い方だ。
ウィザーラビットを三匹ほど仕留めると、残りは慌てて森の奥へと逃げて行った。
「こいつらの肉も上手いぞ」
「毛皮は少し硬いが、暖を取るためなら十分だ」
「じゃあ袋に入れて持って行くか」
こうして襲ってくるモンスター全部を返り討ちにし、空間収納袋に入れて彼らの集落へと向かった。
「お前さんのおかげで、戻ったら冬支度に専念出来る」
「そうだな。これなら今年はもう狩りに行かなくてもいいだろう」
「ん? そうなのか?」
「あぁ。我らは獲物を仕留めたらその都度、里へと戻っていた。獲物を担いだまま移動は出来ぬからな」
行きも帰りも、こうしてモンスターに襲われることを考えれば、大荷物を抱えて移動するわけにはいかない。
そのせいで、大物を狩っても全部は持ち帰れないそうだ。
だが今回は俺の空間収納袋を使って、狩った物は全部そっくりそのまま持って帰れる。
キックバードは十体分、ルガーウルフもクセはあるが食えるという。他にもウィザーラビットにボア、道すがら集めた茸や木の実と大量だ。
「里に到着したら、塩漬け、味噌漬けにした肉と交換してやろう。美味いぞ」
「味噌!? え、味噌なんてあるのか!?」
「おぉ、お主は味噌を知っているのか? 人間はあれを腐った糞だと言って、毛嫌いするのだがな」
……腐った糞。いやまぁ、色的にはそう見えるのかも?
でもなんか不安だ。ちゃんと大豆で作った味噌なんだろうな?
だがその不安は里に付いたら解消された。
完全に俺の知る味噌と同じものだ。
セシリアも知らないといい、どうやら獣人族のみが作る調味料の一つらしい。
「味噌の美味さを知っている人間とは。お前はいい人間だな!」
「味噌の美味さを知っているなんて、獣人族はいい種族だな!」
俺は里長とガッツリ腕を組み、そして味噌をゲットした。
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