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「出ていいぞ。三日以内に戻ってくるように。いいな」
「あ、あぁ」
階段を上り切った先は建物の室内だった。検問みたいなところだ。
この先に地上がある。
「リヴァ、いこー」
「お、おぅ。い、行こう」
緊張する。
ただ地上に出るだけだってのに、こんなに緊張するなんて。
そもそも前世では俺、別に地下で暮らしていた訳でも引き籠りだった訳でもないのに。
すぅー……はぁー……。
「よ、よし」
開かれた扉から一歩、外へと出た。
「まぶしっ」
「だいじょーう?」
セシリアの声は聞こえるが、視界が真っ白で何も見えない。
「ギウオあっちみたい」
「ど、どっちだ?」
「あっち」
手を引かれる。
少しずつ景色がぼんやりと見え始めた。
石造りの建物が立ち並ぶ風景。その奥に見えるのは青い空だ。
「あぁ、今日は晴れてるんだなぁ」
「うんっ。いいお天気なの」
通りには大勢が行きかいし、両脇には屋台が立ち並ぶ。
客引きの声、奥様方の井戸端会議。
前世ではごく当たり前に聞いていた雑多な音が、今世では新鮮で仕方ない。
「ふぅ、やっと目が慣れてきた。さて、ギルドに向かうか」
「うん、はいっ」
「ぁ!? ギルドからの依頼でございますね。お疲れ様でした。確かに依頼主からの品、受け取らせていただきます」
青い屋根の大きい建物が、冒険者ギルドの地上支部だった。
中の作りは下と変わらない。
受付ロビーのカウンターに手紙を出すと、職員の人がそれを見てすぐに理解したようだった。
依頼主からの品──と仰々しい表現だけど、それギルドマスターからの手紙だし。
特に中身を確認することもなく、職員の女性は銀貨を二枚、カウンター台に乗せた。
「今回の依頼の報酬です。御受取ください」
「え、たった手紙一枚持って来ただけなのに?」
「はい。正式な依頼ですので。あ、それと、もしよろしかったら──」
ここで女性は大きく息を吸い込んだ。
「モンハウ鎮圧をしてくださったお二人に、一つ依頼を受けて頂きたいのですが!!」
「はひっ。え、なんでそんな大声で?」
突然職員の女性が大きな声で叫んだ。
これはまさか……さっきと同じ展開?
「あの二人か!?」
「お、可愛い子だなぁ」
「あの年齢でモンハウを潰したとなると、将来が期待出来るな」
「おい君たち、クランはもう決まっているのか?」
「おいおい、クラン勧誘は登録後三カ月禁止だぞ。分かってんのか」
「おっとそうだった」
……なんなんだ。
クランってのは分かる。ゲーム用語でいうギルドみたいなものだ。
この世界でギルドっていうと冒険者ギルドで、冒険者の固定グループっていう意味だとクランになる。
クランにもランク分けがされてあって、高いクランでないと受けられない依頼もあるとかなんとか。
神父はクランについては何も言っていなかった。所属していたのかしていなかったのかも。
「君、魔術師系かい?」
「ひうっ。リヴァ──」
突然、セシリアが小さく悲鳴を上げた。
男が彼女の手を取って引き寄せようとしている。
青い鎧を着た、金髪碧眼のすかした野郎だ。
「おい」
「私はAランククラン『紅の旅団』のスティアン・フォーゲスト。美しいお嬢さん。我々のクランであれば、君を安全な方法で冒険者ランクを上げさせてやれるだろう。その恰好を見れば分かる。きっと今まで危険な目にあっただろう。だが私のクランに来れば、もうそんな目に会わなくて済む」
こいつ、俺の事を完全に無視してやがるな。
「やっ」
一言そう言うと、セシリアは俺の背中に隠れた。
その時、青鎧野郎が舌打ちしたのをしっかりこの耳で聞いたぞ。
「悪いがこいつは俺の大事なパートナーだ。俺抜きで勝手に話を勧めようとしないでくれるか。あと俺はテメーみたいな男は嫌いなんで、頼まれたってテメーのクランに入るつもりはねえ」
「なに? では貴様は彼女が私のクランに入りたがっているのに、それを邪魔するというのか」
おいおい、なに言ってんだこいつ。
どこをどう見たらセシリアがテメーのクランに入りたがっているように見えるっていうんだ。
脳みそがおめでたい奴なのか。
「あ、あぁ」
階段を上り切った先は建物の室内だった。検問みたいなところだ。
この先に地上がある。
「リヴァ、いこー」
「お、おぅ。い、行こう」
緊張する。
ただ地上に出るだけだってのに、こんなに緊張するなんて。
そもそも前世では俺、別に地下で暮らしていた訳でも引き籠りだった訳でもないのに。
すぅー……はぁー……。
「よ、よし」
開かれた扉から一歩、外へと出た。
「まぶしっ」
「だいじょーう?」
セシリアの声は聞こえるが、視界が真っ白で何も見えない。
「ギウオあっちみたい」
「ど、どっちだ?」
「あっち」
手を引かれる。
少しずつ景色がぼんやりと見え始めた。
石造りの建物が立ち並ぶ風景。その奥に見えるのは青い空だ。
「あぁ、今日は晴れてるんだなぁ」
「うんっ。いいお天気なの」
通りには大勢が行きかいし、両脇には屋台が立ち並ぶ。
客引きの声、奥様方の井戸端会議。
前世ではごく当たり前に聞いていた雑多な音が、今世では新鮮で仕方ない。
「ふぅ、やっと目が慣れてきた。さて、ギルドに向かうか」
「うん、はいっ」
「ぁ!? ギルドからの依頼でございますね。お疲れ様でした。確かに依頼主からの品、受け取らせていただきます」
青い屋根の大きい建物が、冒険者ギルドの地上支部だった。
中の作りは下と変わらない。
受付ロビーのカウンターに手紙を出すと、職員の人がそれを見てすぐに理解したようだった。
依頼主からの品──と仰々しい表現だけど、それギルドマスターからの手紙だし。
特に中身を確認することもなく、職員の女性は銀貨を二枚、カウンター台に乗せた。
「今回の依頼の報酬です。御受取ください」
「え、たった手紙一枚持って来ただけなのに?」
「はい。正式な依頼ですので。あ、それと、もしよろしかったら──」
ここで女性は大きく息を吸い込んだ。
「モンハウ鎮圧をしてくださったお二人に、一つ依頼を受けて頂きたいのですが!!」
「はひっ。え、なんでそんな大声で?」
突然職員の女性が大きな声で叫んだ。
これはまさか……さっきと同じ展開?
「あの二人か!?」
「お、可愛い子だなぁ」
「あの年齢でモンハウを潰したとなると、将来が期待出来るな」
「おい君たち、クランはもう決まっているのか?」
「おいおい、クラン勧誘は登録後三カ月禁止だぞ。分かってんのか」
「おっとそうだった」
……なんなんだ。
クランってのは分かる。ゲーム用語でいうギルドみたいなものだ。
この世界でギルドっていうと冒険者ギルドで、冒険者の固定グループっていう意味だとクランになる。
クランにもランク分けがされてあって、高いクランでないと受けられない依頼もあるとかなんとか。
神父はクランについては何も言っていなかった。所属していたのかしていなかったのかも。
「君、魔術師系かい?」
「ひうっ。リヴァ──」
突然、セシリアが小さく悲鳴を上げた。
男が彼女の手を取って引き寄せようとしている。
青い鎧を着た、金髪碧眼のすかした野郎だ。
「おい」
「私はAランククラン『紅の旅団』のスティアン・フォーゲスト。美しいお嬢さん。我々のクランであれば、君を安全な方法で冒険者ランクを上げさせてやれるだろう。その恰好を見れば分かる。きっと今まで危険な目にあっただろう。だが私のクランに来れば、もうそんな目に会わなくて済む」
こいつ、俺の事を完全に無視してやがるな。
「やっ」
一言そう言うと、セシリアは俺の背中に隠れた。
その時、青鎧野郎が舌打ちしたのをしっかりこの耳で聞いたぞ。
「悪いがこいつは俺の大事なパートナーだ。俺抜きで勝手に話を勧めようとしないでくれるか。あと俺はテメーみたいな男は嫌いなんで、頼まれたってテメーのクランに入るつもりはねえ」
「なに? では貴様は彼女が私のクランに入りたがっているのに、それを邪魔するというのか」
おいおい、なに言ってんだこいつ。
どこをどう見たらセシリアがテメーのクランに入りたがっているように見えるっていうんだ。
脳みそがおめでたい奴なのか。
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