異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

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 その結果──

「パウロア氏、よろしくお願いします!」
「しまうっ」
「あ、はい」

 ギルドマスターとメサヤさんがめっちゃ落ち込んでいる。
 まぁギルドマスターのほうは予想通りな感じの字だったけど、まさかのメサヤさんも似たり寄ったりとは。
 しかしパウロア氏の文字は美しかった。すっげー綺麗。

 錐のような道具で、パウロア氏が俺たちの名前を彫りこんでくれる。
 その間にメサヤさんが飲み物を入れてくれた。
 香からすると紅茶かな。

「二人のおかげで、被害が広がらなくてよかったわ。ありがとう」
「あぁ、別に。たまたま十二階に下りただけだから。そのタイミングであのパーティーが転移してきて、まぁ……それで」
「まぁそれでってぐらい、軽い気持ちで人を助けるのね、あなた。それはとてもステキなことだと思います。その気持ち、大事にしてくださいね」

 軽い気持ちで?
 ……気持ち……そんなこと、考えたこともなかったな。
 
 でもきっと……あの人もそうだったんだろう。

 ──長生きしろよ、坊主。

「だがな、あんま無茶はすんなよ。エルヴァンが間に合ったから良かったものの、遅れていたら二人とも命はなかったかもしれないんだ」
「は、はぁ…‥」
「モンハウは見つけたらすぐにギルドに報告。で、討伐隊を結成する。スタンピードと違ってその階層より下に潜れるパーティーが二、三あればなんとかなるからよ」
「でも今回は人為的に作られたモンハウで、しかも転移装置の場所でしたから……リヴァ君の判断はあながち間違ってはいないんでしょうね」
「まぁ……だな。実際あの日、十二階層から戻って来てねえパーティーが二つあったからな」

 帰ってない……冒険者。

「死人が……」
「階層にある転移装置はな、ありゃな冒険者カードに反応するんだ。それで誰が通過したか分かるようになってる」
「それ以外にもギルドに申告して潜る冒険者もいますので、それで分かるのです。モンハウ鎮圧後、念のために十二階層に高ランク冒険者を向かわせて全員に上がって来るよう伝えて貰いました」
「それで戻ってこなかったパーティーが……」

 ギルドマスターが頷く。

 俺たちが十二階に到着する前にやられたパーティーがいたのか……。
 もっと早く俺たちが──いや、全部を救える訳じゃない。
 全部を救えるなんて思うな。そんなのはただの傲慢だ。

「リヴァ。リヴァは、わたし、たすえてくえたよ」
「セシリア」

 落ち込んでるような顔でもしてたのかな。セシリアが心配そうに顔を覗かせた。

 別に好んで人助けするつもりなんてない。
 ただ……

 ただそこに助けを求める奴がいるなら──

 俺はあの人のように……

 助けたいと、ただそう思うだけだ。

「よし、出来ました」

 パウロア氏が錐を置いて、俺たちにカードを返す。
 出来上がったカードには、名前だけじゃなくカッコいい装飾まで彫ってくれていた。

「ふう、ちょっと気合いれてみました」
「サイコー!」
「あ、いいなぁ。俺様のカードにもぉ」
「あなたもう冒険者辞めてるでしょ」

 セシリアも受け取ったカードを、にまにまと見つめていた。

「これでお前さんたちは冒険者だ」
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
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