異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

文字の大きさ
上 下
33 / 110

17-1

しおりを挟む
「魔法陣からの転移か!? ──止まれっ」

 咄嗟に声がでた。

「セシリア!」
「あぅ……えいっ」

 風を圧縮して槍のようにして投げる魔法。敵一体に有効なそれを、セシリアは何本も出現させた。

 地下十二階にある魔法陣を使ってここまで戻ってきた人がこの中にいる。
 範囲魔法を使えば巻き込むのは確実で、だから彼女は単体魔法を使ったのだろう。
 俺もハンマー二刀流で手近な奴から片付けていった。

 一時停止が切れれば即スキル使用。
 それを五回繰り返したところで、転移してきた人を発見。
 時間いっぱい。もう一度一時停止したら、転移してきた人たち《・・・》の腕を引っ張った。
 人数は四人──

 二人人を引っ張ったところで時間切れ──再び一時停止。

「うっ……」

 これまでの疲れもあって、目頭に痛みが走る。

「あんたら動けるなら仲間を担いで階段まで上がってくれ!!」
「え、あ……わ、分かった!」
「なんで階段下フロアにモンハウなんてっ」

 叫んだところで状況は変わらない。
 残り二人は彼らが引っ張り上げ、なんとか全員救出完了。
 といっても四人とも負傷をしている。

「聖職者は……いないか?」
「いない……けどポーションがあるから、これでなんとか」
「けどこの状況、ヤバいんじゃない? だってモンハウの真っただ中に転送装置があるんだもの」
「十二階から帰ろうってパーティーも、入口から転移装置で十二階に来るパーティーも……全員あの中だよな」

 この状況は確かにマズい。
 俺の一時停止で出てきた人たちを救出することは出来る。だけどそれは、このモンハウを潰すまでずっとここで居続けなきゃならないっていう意味でもあった。
 いや。目が痛み始めているし、そう何度も連続で使うのは無理だ。

「セシリア。まだ魔法は使えそうか?」
「はいっ」

 こいつ、結構タフだよなぁ。

「今なら誰もいねえ。範囲魔法ぶっぱなせ!」
「おぉー!!」

 声には出さず、セシリアは魔法の詠唱に入った。
 こっちはさりげなく視界に彼女を入れておく。万が一、魔法陣から誰かが出て来たとしても、セシリアごと動きを止めるためにだ。

 幸い魔法陣から人が出てくることなく、セシリアの魔法が完成。
 三日月型の風の刃がいくつも弧を描いて飛ぶと、階段下に群がったモンスターを一網打尽にした。

「すげ……」

 素直にそう思った。
 一緒にいた冒険者も同じことを思ったのだろう。魔術師っぽい男は口をぽかんと開けて、信じられないといった顔を向けている。
 
「中級の精霊魔法の中でも、必要な魔力量の高いやつだぞさっきの。あの子まだ未成年だろ?」

 そう言われて、俺も未成年ですなんて考えてしまった。
 十五で成人って、やっぱ馴染めないよな。

「ふぅー」

 さすがに疲れたのか、セシリアは階段に腰を下ろして振り返る。

「お疲れ。残りは俺が片付けておくよ」
「いば、がんばえぇ」
「おう」

 残りは十匹ほど。一時停止を一度だけ使って、十秒以内に倒せたのは四匹。
 はぁ……セシリアに比べると俺、弱いなぁ。

 もう一度一時停止して追加で四匹倒し、残りはスキル無しでなんとか倒し終えた。
 階段下にはドロップアイテムがどっさりある。
 パーティー救出までに何十匹か倒していたし、下手するとここに五十匹ぐらいいたのかもな。
 とりあえず全部拾って背負い袋に入れた。

 さすがに今のでかなり目が痛くなった。少し眩暈もするし、ちょっと休もう。セシリアも魔力が切れかかってるようだしな。

「大丈夫か、お前ら」

 気遣って声を掛けてきた冒険者に、ちょっと魔力切れだと説明。
 休んでから上に戻ると話すと、彼らは一足先に地上《・・》へ戻ると言う。

 地上か……羨ましいぜ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花
ファンタジー
 15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。  どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。  そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。  しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。 「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」  だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。  受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。  アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。 2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

俺の畑は魔境じゃありませんので~Fランクスキル「手加減」を使ったら最強二人が押しかけてきた~

うみ
ファンタジー
「俺は畑を耕したいだけなんだ!」  冒険者稼業でお金をためて、いざ憧れの一軒家で畑を耕そうとしたらとんでもないことになった。  あれやこれやあって、最強の二人が俺の家に住み着くことになってしまったんだよ。  見た目こそ愛らしい少女と凛とした女の子なんだけど……人って強けりゃいいってもんじゃないんだ。    雑草を抜くのを手伝うといった魔族の少女は、 「いくよー。開け地獄の門。アルティメット・フレア」  と土地ごと灼熱の大地に変えようとしやがる。  一方で、女騎士も似たようなもんだ。 「オーバードライブマジック。全ての闇よ滅せ。ホーリースラッシュ」  こっちはこっちで何もかもを消滅させ更地に変えようとするし!    使えないと思っていたFランクスキル「手加減」で彼女達の力を相殺できるからいいものの……一歩間違えれば俺の農地(予定)は人外魔境になってしまう。  もう一度言う、俺は最強やら名誉なんかには一切興味がない。    ただ、畑を耕し、収穫したいだけなんだ!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...