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三カ月が過ぎ、俺は十五歳に。セシリアはその前に十四歳になったらしい。
「冬はあまり雪が降らないって言ってたが、なら夏は暑いんじゃないか?」
「はいっ」
「めちゃくちゃ暑い? 熱中症とかどうなんだ?」
「んんー……すおい」
ジェスチャーを見る限り「少し」と言いたいのだろう。
そんなに暑くないってことか。
夏になって、流石にセシリアの服も衣替えされるだろう──と思ったがしない。
寒い時に纏っていた毛皮がないだけだ。
「お前さ、着替えとか持ってねえのか?」
「はいっ」
「そこは元気に答えるなよ」
「うぐぅ……う、ぐぅ、ぐしゃい?」
臭いか臭くないか、ここでそれを素直に言ってもいいものだろうか。
だが臭い──というのとは少し違うかもしれない。
同じ服をずっと着ているようだが、たぶん洗濯はしてるんだろうな。
どちらかと言うと、洗濯のし過ぎでよれよれになっているのが気になるんだよ。
「……いつも地上の食い物を持って来てくれるお礼に、お前の服を買ってやるよ」
「ふえっ。い、いい。いいっ」
「よくない。だいたいサイズがもう合ってねえじゃん。お前だって身長伸びてるだろ」
「うぅ……」
ここじゃいい服なんて買えないが、今着ているものよりはマシだろう。
それに丈のあった物を着せたい。
「金の事を気にするなら、ちょっと手伝ってくれないか? クリスタルイーターから遂に魔力の強奪が出来なくなったんだ。それで十二階に進もうかと思ってな。十一階を突破するの、手伝ってくれ」
「おぉー、はい!」
十階より下の転移装置を使うと金がかかる。だからずっと十階で狩りをしていたんだが、魔石の相場が安いことを知って遠慮なく、装置の動力に使うようにしている。
それに薬草がなかなかいい値段で売れるので、魔石を消費してもお釣りがでるぐらいだ。
「今までの階層だと、通路を進んでは行き止まりかどうか確かめて、引き返したり別の道行ったりでなんだかんだ進むのに何日もかかっていたんだよ」
階層には、その階の転移装置に戻る魔法陣があちこちにある。
もちろん、階段下の魔法陣からそこに移動も可能だ。
それがあるおかげで、数日かけて階層を突破することができるのだ。
それが無ければ、何日もダンジョンに滞在して突破するしかないからな。
「まぁステータス強奪で上限に達するまで二カ月ぐらい掛かっていたから、それもあったんだけどな」
今回は魔力以外のステータスは強奪していない。
十二階に進んでからそこで──でもいいやと思って。
「よし、それじゃあ行くぜ」
「はいっ」
「ここは道なんてのはない。このだだ広い空間のどこかに階段がある。その『どこか』も神父に聞いて把握済みだ」
「おぉ」
階段を下りて通路を出たら、そのまま右手側に真っ直ぐ進む。
するといつも入っていた洞窟とは違う入口があるので、その中に入って進んだ先の出口を真っ直ぐ──
「こんな所に魔法陣があるのか」
洞窟の出口に魔法陣発見。
ダンジョンに入ってそろそろ二時間ぐらいか。
「今日はここまでにするか。おかげで早くここまでこれたよ。あとは俺ひとりで攻略すうよ」
「え!? や、ぁ、へーいっ。うぅ、へーい」
「平気だって? でももう遅いぞ」
「あ、あいた! あいたもっ」
明日もって……そりゃあ有難いけどさ。
「んー、じゃあもう少し進むか」
「はいっ」
元気に返事をしたセシリアが、弾むように魔法陣を踏んで洞窟の外へ。
俺も同じように魔法陣を踏んで後を追い、まっすぐ草原を進んだ。
ただただ広い草原を、ひたすら真っ直ぐ歩くだけ。
目印になるものをしっかり決めて進まなきゃ、真っ直ぐ歩いているのかも分からなくなる。
「んー、だいたい一時間ぐらい歩いたら、次の洞窟の入口が見えるって言ってたんだが……真っ直ぐ歩けているのかなぁ」
「んんー……みう」
「あん?」
なんて言った?
そう聞き返す前に、セシリアは翼を広げて空に──
「お、おい! 誰かに見つかったらどうすんだよっ」
「へーい。みえないあぁ」
「見えない? あ──そうか」
ここは自分を中心に、半径五十メートル以内に入らなきゃモンスターも人の姿も見えない。
一気に上昇したセシリアの姿は、直ぐに見えなくなった。
上に対してもこの仕様は同じらしい。
しかし洞窟の入口は見えるのか?
それも半径五十メートル以内とかいう縛りが……はないか。
実際最初の洞窟とか、百メートル以上離れてても見えていたんだし。
空を見上げて一分ほどでセシリアの姿が突然空中に現れた。
一応周りを確認しているようだ。
誰もいないのを確認すると、一気に舞い降りてきた。
「あっち」
「洞窟の入口、あったのか?」
「はいっ。あ──」
「おっと、モンスターだな」
姿を現したモンスターを二人で倒し、セシリアが見つけた洞窟の入口へと向かった。
その入口の魔法陣を踏んで、今日の探索は終わり。
「冬はあまり雪が降らないって言ってたが、なら夏は暑いんじゃないか?」
「はいっ」
「めちゃくちゃ暑い? 熱中症とかどうなんだ?」
「んんー……すおい」
ジェスチャーを見る限り「少し」と言いたいのだろう。
そんなに暑くないってことか。
夏になって、流石にセシリアの服も衣替えされるだろう──と思ったがしない。
寒い時に纏っていた毛皮がないだけだ。
「お前さ、着替えとか持ってねえのか?」
「はいっ」
「そこは元気に答えるなよ」
「うぐぅ……う、ぐぅ、ぐしゃい?」
臭いか臭くないか、ここでそれを素直に言ってもいいものだろうか。
だが臭い──というのとは少し違うかもしれない。
同じ服をずっと着ているようだが、たぶん洗濯はしてるんだろうな。
どちらかと言うと、洗濯のし過ぎでよれよれになっているのが気になるんだよ。
「……いつも地上の食い物を持って来てくれるお礼に、お前の服を買ってやるよ」
「ふえっ。い、いい。いいっ」
「よくない。だいたいサイズがもう合ってねえじゃん。お前だって身長伸びてるだろ」
「うぅ……」
ここじゃいい服なんて買えないが、今着ているものよりはマシだろう。
それに丈のあった物を着せたい。
「金の事を気にするなら、ちょっと手伝ってくれないか? クリスタルイーターから遂に魔力の強奪が出来なくなったんだ。それで十二階に進もうかと思ってな。十一階を突破するの、手伝ってくれ」
「おぉー、はい!」
十階より下の転移装置を使うと金がかかる。だからずっと十階で狩りをしていたんだが、魔石の相場が安いことを知って遠慮なく、装置の動力に使うようにしている。
それに薬草がなかなかいい値段で売れるので、魔石を消費してもお釣りがでるぐらいだ。
「今までの階層だと、通路を進んでは行き止まりかどうか確かめて、引き返したり別の道行ったりでなんだかんだ進むのに何日もかかっていたんだよ」
階層には、その階の転移装置に戻る魔法陣があちこちにある。
もちろん、階段下の魔法陣からそこに移動も可能だ。
それがあるおかげで、数日かけて階層を突破することができるのだ。
それが無ければ、何日もダンジョンに滞在して突破するしかないからな。
「まぁステータス強奪で上限に達するまで二カ月ぐらい掛かっていたから、それもあったんだけどな」
今回は魔力以外のステータスは強奪していない。
十二階に進んでからそこで──でもいいやと思って。
「よし、それじゃあ行くぜ」
「はいっ」
「ここは道なんてのはない。このだだ広い空間のどこかに階段がある。その『どこか』も神父に聞いて把握済みだ」
「おぉ」
階段を下りて通路を出たら、そのまま右手側に真っ直ぐ進む。
するといつも入っていた洞窟とは違う入口があるので、その中に入って進んだ先の出口を真っ直ぐ──
「こんな所に魔法陣があるのか」
洞窟の出口に魔法陣発見。
ダンジョンに入ってそろそろ二時間ぐらいか。
「今日はここまでにするか。おかげで早くここまでこれたよ。あとは俺ひとりで攻略すうよ」
「え!? や、ぁ、へーいっ。うぅ、へーい」
「平気だって? でももう遅いぞ」
「あ、あいた! あいたもっ」
明日もって……そりゃあ有難いけどさ。
「んー、じゃあもう少し進むか」
「はいっ」
元気に返事をしたセシリアが、弾むように魔法陣を踏んで洞窟の外へ。
俺も同じように魔法陣を踏んで後を追い、まっすぐ草原を進んだ。
ただただ広い草原を、ひたすら真っ直ぐ歩くだけ。
目印になるものをしっかり決めて進まなきゃ、真っ直ぐ歩いているのかも分からなくなる。
「んー、だいたい一時間ぐらい歩いたら、次の洞窟の入口が見えるって言ってたんだが……真っ直ぐ歩けているのかなぁ」
「んんー……みう」
「あん?」
なんて言った?
そう聞き返す前に、セシリアは翼を広げて空に──
「お、おい! 誰かに見つかったらどうすんだよっ」
「へーい。みえないあぁ」
「見えない? あ──そうか」
ここは自分を中心に、半径五十メートル以内に入らなきゃモンスターも人の姿も見えない。
一気に上昇したセシリアの姿は、直ぐに見えなくなった。
上に対してもこの仕様は同じらしい。
しかし洞窟の入口は見えるのか?
それも半径五十メートル以内とかいう縛りが……はないか。
実際最初の洞窟とか、百メートル以上離れてても見えていたんだし。
空を見上げて一分ほどでセシリアの姿が突然空中に現れた。
一応周りを確認しているようだ。
誰もいないのを確認すると、一気に舞い降りてきた。
「あっち」
「洞窟の入口、あったのか?」
「はいっ。あ──」
「おっと、モンスターだな」
姿を現したモンスターを二人で倒し、セシリアが見つけた洞窟の入口へと向かった。
その入口の魔法陣を踏んで、今日の探索は終わり。
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